縄文社会消長分析学習 44
縄文農耕の実態を知るために工藤雄一郎/国立歴史民俗博物館編「ここまでわかった!縄文人の植物利用」(新泉社、2014)収録の小畑弘己「マメを育てた縄文人」を学習しました。
1 圧痕法による縄文時代マメ類栽培の立証
土器付着マメ類を圧痕レプリカ法により調査し、ダイズやアズキの栽培が確認されています。
ダイズと野生種ツルマメ小畑弘己「マメを育てた縄文人」(工藤雄一郎/国立歴史民俗博物館編「ここまでわかった!縄文人の植物利用」(新泉社、2014)収録)から引用
アズキと野生種ヤブツルアズキ小畑弘己「マメを育てた縄文人」(工藤雄一郎/国立歴史民俗博物館編「ここまでわかった!縄文人の植物利用」(新泉社、2014)収録)から引用
ダイズは縄文前期以前から検出され、縄文中期には中部高地で縄文後期後半以降は九州で栽培されている。
日本におけるダイズ栽培の起源と拡散小畑弘己「マメを育てた縄文人」(工藤雄一郎/国立歴史民俗博物館編「ここまでわかった!縄文人の植物利用」(新泉社、2014)収録)から引用
2 マメ類栽培に使われた石器
マメ類は焼畑で栽培され、打製石斧(石鍬)で耕作されていたと考えられる。
石鍬の分布小畑弘己「マメを育てた縄文人」(工藤雄一郎/国立歴史民俗博物館編「ここまでわかった!縄文人の植物利用」(新泉社、2014)収録)から引用
3 中期に大型化するダイズ
中期に大型化するダイズ小畑弘己「マメを育てた縄文人」(工藤雄一郎/国立歴史民俗博物館編「ここまでわかった!縄文人の植物利用」(新泉社、2014)収録)から引用・加筆
前期中頃からダイズやアズキが栽培され、1000年以上経過して中期に大型化したと考えられています。
ダイズ大型化は中国よりも日本における方が早いようです。
4 メモA
ダイズやアズキの大型化は中国におけるよりも早く、その栽培が「縄文中期頃に中国から伝わってきた」ものではないようです。
ダイズはもともとは大陸から伝わってきたものであるようですが、中期頃中部高地でマメ類が盛んに栽培されたという事象は耕作技術「輸入」によるものでないことがわかりました。
自分の問題意識「縄文中期頃、中部高地で地母神殺害再生神話に基づく土偶祭祀が突然発生したのは、その伝播がその時期に大陸から直接あった」とマメ類栽培情報を合わせると、農業技術と土偶祭祀がセットで列島(中部高地)にもたらされたという可能性はほとんどなくなりました。
土偶祭祀が大陸から列島にもたらされたとすると、それは農業技術とは無関係にもたらされたことになります。そして土偶祭祀は原始農業社会特有の神話に基づくものですから不思議です。
5 メモB
良からぬメモです。
6000年前~5000年前に中国や韓国でもマメの栽培が開始されたことがわかってきたとのことです。中国や韓国の情報は炭化種子からのものであり、圧痕法による精度の高いものではないようです。
将来情報が増えれば、マメ類栽培に関して大陸から列島への情報伝播が浮かび上がるかもしれません。土偶祭祀がマメ類栽培に関する高等技術とともに大陸から列島にもたらされたという展開があるかもしれません。
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工藤雄一郎/国立歴史民俗博物館編「ここまでわかった!縄文人の植物利用」(新泉社、2014)
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