縄文土器学習 457
畑と灌漑施設を文様で表現している縄文土器の4例目の検討です。
1 藤内式深鉢形土器(伊那市西箕輪 金鋳場遺跡)
3Dモデル、展示の様子、動画、GigaMesh Software Frameworkによる展開図を示します。
藤内式深鉢形土器(伊那市西箕輪 金鋳場遺跡) 観察記録3Dモデル撮影場所:伊那市創造館
撮影月日:2019.09.12
4面ガラス張りショーケース越しに撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 60 images(Masquerade機能利用)
展示の様子
展示の様子 特殊モード撮影
3Dモデルの動画
GigaMesh Software Frameworkによる展開図
2 文様を構成する記号の解釈
藤内式深鉢形土器(伊那市西箕輪 金鋳場遺跡)の記号の解釈
・灌漑水路網の発達した畑システム(理想郷、桃源郷)をAタイプ畑とBタイプ畑について、それぞれ理想の段階を2段階に分けて示しています。
・A1とB1は最初の理想の段階、A2とB1は水源が増え理想の段階がレベルアップしています。
・畑タイプAとBの文様の違い、つまり畑区画形状の違いは区画蛙蛇畑文土器(藤内遺跡出土藤内期)(武居幸重著「文様解読から見える縄文人の心」(諏訪郷土研究所、2014)、2020.08.21記事「灌漑施設を文様として表現する縄文土器」)と酷似しています。また理想の段階設定の様子も区画蛙蛇畑文土器と同じ発想に基づいていると把握できます。
参考 A系列の畑の理想の段階
2020.08.21記事「灌漑施設を文様として表現する縄文土器」
参考 B系列の畑の理想の段階
2020.08.21記事「灌漑施設を文様として表現する縄文土器」
3 感想
・伊那市創造館で観覧したこの土器の文様について、これまでは4季を表しているのかもしれないなどと空想しましたが、その意味を自信をもって把握することはできませんでした。しかし、今回の武居幸重著「文様解読から見える縄文人の心」(諏訪郷土研究所、2014)をベースとする検討に基づいて、自分なりに確信をもって文様解釈することができました。
・中期中部高地に灌漑施設網を伴う畑システムの理想の姿を夢想する人々が存在していたことは、土器の存在から証明されました。
・灌漑施設と畑が実在していたからこそ、その理想の姿を夢想できることになります。つまり、どれほど原始的で技術レベルの低いものであったかは別にして、灌漑施設と畑の実在もほぼ証明されました。あとは発掘作業において、遺構としての出土を待つばかりです。
・畑には区画模様が異なるAとB2種類あることから、少なくともメイン作物種は2種類存在していたことがわかります。Aは水をあまり必要としない作物、Bは水を大量に必要とする作物です。
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