2020年10月11日日曜日

アリソガイ(373図15)観察

縄文貝製品学習 21 

千葉県教育委員会の許可で閲覧した有吉北貝塚出土縄文中期アリソガイ製ヘラ状貝製品の観察を3Dモデルを活用しながら行っています。この記事では5点目として373図15を観察します。

1 アリソガイ製ヘラ状貝製品(磨貝)(千葉市有吉北貝塚)373図15表面 観察記録3Dモデル

アリソガイ製ヘラ状貝製品(磨貝)(千葉市有吉北貝塚)373図15表面 観察記録3Dモデル

縄文中期、L、殻長118.0㎜、殻高97.5㎜ 

撮影場所:千葉県教育庁森宮分室 

撮影月日:2020.09.18 

許可:千葉県教育委員会許可による撮影・掲載 

ハイパス調整画像

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.008 processing 23 images


撮影の様子


参考 裏面


実測図

有吉北貝塚発掘調査報告書から引用


3Dモデルの動画

2 観察


観察画像メモ

・この貝殻には生物付着痕などあり、道具として使い始めた時の表面は荒れた状態だったようです。

・腹縁部左右端に擦痕が観察され、その部分は顕著な削剥部になっています。

・貝殻の中央部にも広く削剥部が認められます。

・腹縁部は削れて新鮮な断面が観察できます。腹縁部断面を硬いモノに擦りつけていたことが確認できます。腹縁部の後退は表面削剥により進んだのではなく、腹縁部断面が削れて進んだように観察できます。

・表面の削剥されていない場所を中心にして、ミクロな溝の底に茶色物質がこびりついています。貝殻裏側には特に茶色が濃い場所が見られます。

3 感想

・この貝殻も2020.10.08記事「アリソガイを獣皮タンニンなめしに使った可能性」で検討した372図13と同じように茶色色素を含む液体を何度も浴びています。

・獣皮タンニンなめしにおいて、この貝殻を使ってタンニン溶液を獣皮に塗布したのかもしれません。あるいはタンニン溶液でぬれた皮をこの貝殻で擦ったのかもしれません。

・腹縁部断面が削り取られて新鮮な断面を現出しています。断面がギザギザしているので石製品など硬いモノを擦ったようです。

・アリソガイ製ヘラ状貝製品の用途について考えをまとめるのはまだ早いと思いますが、これまで5点観察して、多様な機能が1つの貝殻に備わっていたような印象を受けます。単機能の専門道具というよりも、幾つかの機能を有する専門道具であるように感じます。(腹縁部両端の強い擦り、表面中央部の擦り、腹縁部の硬いモノを対象とした擦り、茶色液体(タンニン溶液?)の塗布)


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