天保の堀割普請で、庄内藩は領民1400人以上を動員して横戸村から柏井村までの区間の掘削に従事しました。このとき庄屋の久松宗作は領民に付き添って普請の現場に出向き、領民の世話をするとともに普請の様子を見聞し、その結果をイラストと絵地図を多量に含む著作物「続保定記」にとりまとめました。
絵地図は木版多色刷りで見開き2ページが1つの画像になっており、全部で17あります。その全てが「天保期の印旛沼堀割普請」(千葉市市史編纂委員会編集、千葉市発行、平成10年3月)にカラー印刷で収録されています。17画像の最初は「印旛沼全図」と表題があり、利根川も書かれています。最後の画像は「海」と表題があり、黒田家元小屋などが描かれています。17画像で利根川から東京湾までの水系を全て描いています。
柏井付近の絵地図画像
絵地図には各藩の受け持ち区域、元小屋、特徴的な地物、地形、化灯場など貴重な情報が記載されています。従って、これら17画像を1つの画像に編集できれば地図としての活用利便性が飛躍的に向上します。そこで、17画像を1枚の巻物にデジタル的に編集することが可能であるかどうか、試みてみました。
デジタル巻物化の作業は次の手順で行いました。
1 書籍のページをスキャンして画像ファイル(jpegファイル)をつくる。
2 ページ画像ファイルから個々の絵地図を一つ一つ切り取りして、絵地図画像ファイル(jpegファイル)をつくる。(印旛沼から東京湾まで17ファイルができる)
3 17ファイルを横に連結して一つの巻物のような絵地図にする。
作業を行う上で、私のスキルレベルでは次の点が課題となりました。
ア 17ファイルを横に連結する簡便な方法があるか。
イ 17ファイルを横に連結して画面上で移動するなど、実用的に使えるか。
ウ ファイル接合の正確性をどの程度確保できるか。(続保定記作成に従事した絵師が、絵地図接合を暗黙の前提として作業しているのかどうか)
作業結果は次の通りです。
1 書籍見開きページをスキャンして5つのjpegファイルを作成しました。
2 フォトショップで5つのファイルを必要数分コピーして、17画像分のファイルを切り取りで作成しました。
3 17画像の連結はWEBでフリーソフトを見つけて利用しました。
私は通常、画像の張り合わせをフォトショップでしていますが、最初に画像を張り合わせる大きさを測ってキャンバスをつくる必要があります。17画像の大きさを調べて、それに見合うキャンバスを作るのは、大変億劫です。そこで、最初からキャンバスを作らないで随時画像を追加できるソフトを探してみました。
そうしたところJointogether
(作者のホームページhttp://homepage3.nifty.com/hirapro/program.htm)
というフリーソフトを見つけ、思い通りの機能がありましたので、使いました。キャンバスの大きさは随時画面上にある窓に数値を入れて変化させることが出来ます。使いやすいソフトです。
このフリーソフトで絵地図4画像分を張り合わせた状況のプリントスクリーン画像(3画面使用で画面一杯に展開)を次に示します。
ディスプレイ3台を利用した場合のプリントスクリーン画像例
結果として幅12551ピクセル、高さ742ピクセルのキャンバスに17画像を張り合わせることができました。一つのjpegファイルにまとめることも出来ました。
1枚に編集した続保定記絵地図デジタル巻物
作成した一つの絵巻物のような絵地図はフリーソフトJointogetherでも、フォトショップでも同じように快適に閲覧できます。
さて、この作業で、絵地図の画像接合がうまく行くか心配したのですが、杞憂に終わりました。17枚の画像のうち東端の印旛沼の画像は他の画像ともともと別の縮尺の絵地図となっているので接合は出来ません。それ以外の絵地図の画像は全て違和感なく接合できました。
1枚の細長い長方形の紙に巻物として絵地図を作り、それを切り取って一枚一枚の冊子用絵地図にするという基本的な考え方に基づいて作業をしたことが確認できました。
同時に、柏井村の庄内藩と鳥取藩の境の出ているページとその西の花島観音の出ているページだけは、半ページほど重複部分(接合部分)があることがわかりました。恐らく庄内藩の管轄部分の絵地図作成とそれ以外の部分の絵地図作成の作業を分けて行ったためであるからだと思います。
今後、作成したデジタル巻物を使って情報の収集分析を効率的に行っていきます。
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