宇那谷川源流域は浸水被害を受けやすいために、排水路流下能力を高めました。しかし、その流出量を下流でさばききれないために宇那谷調整池がつくられました。この報告は前の記事でしました。
宇那谷川源流域が浸水被害を受けやすい理由は、単純に都市化によるということだけでなく、この地域特有の自然地理的特性が関係していますので、それを説明します。
宇那谷源流域は台地であり、東京湾側と印旛沼側の分水界に当たる場所です。本来であれば浸水被害を受けにくい場所であってしかるべきです。しかし、長沼池がかつて存在していていたことからわかるように、水が下流方向に流れないような特殊地形になっています。
次の図は谷津の中の分水界と閉じた凹地等高線の位置をプロットしたものです
宇那谷川源流付近の自然地理特性図
普通の台地では谷津の中に分水界があるということはありません。また閉じた凹地等高線がこのように規則的に見られることもありません。
この図からわかることは、一度出来た源流部地形が、その後の地盤変動により、下流に対する傾斜が無くなってしまった(沈下してしまった)ことです。源流部が低くなるような地盤変動が起こったため、水の行き場がなくなり長沼池がつくられ、あるいは谷津の中に分水界ができたり、浅い谷津は凹地になってしまったと考えられます。
こうした自然地理的特性の存在は、宇那谷川源流域が浸水被害を受けやすい理由の一つとなっており、宇那谷調整池が必要になった背景になっています。
なお、このような開発前地形の把握は、人工改変が進んだ現代の地図情報から得るのは困難です。上記自然地理特性図は旧版1万分の1地形図(大正6年測量)から作成しました。
(2011年5月22日記事「長沼池の成因」参照)
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