西根遺跡出土加曽利B2式土器の観察を行っています。この記事では漆パレット再利用品を観察します。
1 352番土器 漆パレット再利用品
352番土器 漆パレット再利用品 (千葉県教育委員会所蔵)
西根遺跡発掘調査報告書から引用
2 発掘調査報告書における352番土器の記載
「352は粗製深鉢形土器の底部と考えられる破片である。内面に漆が付着しており、漆液容器として使用された遺物である。漆は部分的に濃淡がある。内面の底面中央に器面の剥離が認められる。」
西根遺跡発掘調査報告書から引用
3 漆付着の様子
352番土器 内面 (千葉県教育委員会所蔵)
観察土器は放射性炭素測定資料採取のためにあらかたの漆が除去されています。
352番土器漆付着の様子
西根遺跡発掘調査報告書から引用
出土した時の漆付着の様子写真です。
漆パレットは別にもう1点出土しています。
漆パレットの出土は生業としての漆製品づくりが行われていた証拠となります。それは漆木の管理が伴っていたことも指し示します。
4 西根遺跡出土ベンガラ漆塗り飾り弓
西根遺跡から加曽利B2式土器とともに赤漆が塗られた飾り弓が出土しています。
赤色成分はベンガラ(赤色酸化鉄)と分析されています。
漆パレットが出土していること、漆塗り土器が多数出土していることから、西根遺跡付近でこの飾り弓がつくられた可能性が高まります。
西根遺跡出土飾り弓 (千葉県教育委員会所蔵)
5 参考 西根遺跡出土 古代漆パレットと漆製品
西根遺跡の古墳時代後期~奈良・平安時代流路から漆パレット(土師器)と漆製品が、漆関連墨書土器が出土しています。
西根遺跡出土 古代漆パレット(土師器) (千葉県教育委員会所蔵)
西根遺跡出土 古代漆製品 (千葉県教育委員会所蔵)
西根遺跡出土 墨書文字「息」(千葉県教育委員会所蔵)
墨書文字「息」は発音「ソク」であり乾漆を表していて、麻を材料とした漆製品製造の発展を祈願していると考えられます。
2016.04.09記事「船尾白幡遺跡で乾漆を示す墨書文字(息)を認識」
2016.04.10記事「参考 千葉県における漆関連墨書文字分布 その2」
2016.04.11記事「西根遺跡の漆関連出土物」
2017.07.16記事「縄文時代漆パレットと奈良時代漆パレットが同じ西根遺跡から出土」
6 メモ
6-1 生業としての漆製品製作
・漆パレットの出土により加曽利B2式期頃西根遺跡付近の下総地方で漆栽培管理、漆液の各種利用、漆製品の製作が行われていたことが判ります。
・漆パレット付着漆の放射性炭素年代測定結果は3400±50calBPという結果になっています。
・漆による黒色処理土器は観察表掲載640土器中28(4.4%)を数えます。
・参考 炭素吸着による黒色処理土器は79(12.3%)を数えます。
6-2 古代における漆産業
乾漆を表す「息」(ソク)が墨書土器として同じ西根遺跡から出土していることから、縄文時代後期以降古代までこの付近で漆製品作成が継続して行われていたと推察できます。
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