2019.06.18夕刊に次のような記事があり、またその説明記事や論文そのものもWEBから入手して興味を深めました。縄文社会消長を詳しく学習したいと希望している初心者にとってはよく理解したい論文です。
2019.06.18夕刊日経記事
公表論文の結論的図版
Analysis of whole Y-chromosome sequences reveals the Japanese population history in the Jomon periodから引用
東京大学理学部サイトの記事ではこの発表の概要を次のように説明しています。
「今回、東京大学大学院理学系研究科の渡部裕介大学院生と大橋順准教授らのグループは、東京大学大学院医学系研究科の徳永勝士教授(研究当時)らのグループと共同で、日本人男性345名のY染色体の全塩基配列決定と変異解析を行った。他の東アジア人のY染色体データと併せて系統解析をすると、縄文人に由来するY染色体の系統が同定された。縄文人由来Y染色体の遺伝子系図(共通祖先から現在に至るまでの分岐過程)を推定したところ、縄文時代晩期から弥生時代にかけて人口が急激に減少したことが示された。縄文時代晩期は世界的に寒冷化した時期であり、気温が下がったことで食料供給量が減ったことが、急激な人口減少の要因の一つではないかと思われる。
本研究の結果は、縄文時代の遺跡数や規模などの変化から類推されてきた縄文時代後期・晩期に起きた急激な人口減少を裏付けるものである。
現代日本人のゲノム多様性を調べることで、その由来も含めて不明な点が多い縄文人の歴史、ひいては日本人の形成過程が解き明かされると期待される。」
幾つかの感想が生れましたのでメモしておきます。
1 過去人口増減把握原理の理解
過去人口増減が縄文人由来Y染色体の遺伝子系図(共通祖先から現在に至るまでの分岐過程)を推定することによって可能であることそのものを自分自身が十分に理解する必要があります。斎藤成也「日本列島人の歴史」(岩波ジュニア新書)による学習などをおこないイメージ的にはその原理を判ったつもりになっていますが、より深く納得的に理解する必要があります。
2017.02.24記事「縄文社会崩壊プロセス学習 縄文時代中期後半の激減」参照
2 この論文のメイン情報の確認
この論文は縄文時代終盤における人口急減が発掘情報以外の手法で裏付けられたことであると確認します。素晴らしい成果であると感心します。
3 人口急減の理由説明に感じる違和感
人口急減の理由説明「縄文時代晩期は世界的に寒冷化した時期であり、気温が下がったことで食料供給量が減ったことが、急激な人口減少の要因の一つではないかと思われる。」に違和感を覚えます。
この説明は論文の分析内容ではなく、単に「思われる」ことですから目くじらたてるべきことではありません。しかし、自分にとっては大いに検討して自分の考えを正すなり、より確信を深めるなりする価値があります。
違和感を感じる事柄
1 寒冷化が原因で食料が減り、それが主因で人口が急減したとは思われない。
縄文人は氷期に土器を発明し、晩氷期の温暖期、晩氷期の寒冷期、数十年で7-8度気温が上昇する温暖期を生き抜いてきています。その間食料が不足する数えきれない危機を体験してきているに違いありません。
過去16000年間の気候変化
「縄文時代はいつから」から引用
その食料環境激変をかいくぐってきた縄文人が「縄文晩期の世界的な寒冷化」程度の「ヤワな」変動が主因で人口急減するとは到底思えません。主因は別にあるように素人考えします。
2 「縄文晩期の世界的な寒冷化」が主因で人口急減したならば、世界の狩猟採集民は同じ状況であり一斉に人口急減したに違いありません。そのような情報を知りたいと思います。
3 またそもそも「縄文晩期の世界的な寒冷化」が本当に食料減少をもたらしたのか、その食料減少が人口急減をもたらすようなドラスチックなものであったのか。
さらに人口急減せざるを得ないような食料減少が存在したとして、それに直面した縄文人が手をこまねいてそのまま動物のように衰退したのか、疑問は膨らみます。
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