市川市雷下遺跡(6)(縄文早期)から出土した木製品(木製品イ)について発掘調査報告書写真を拡大して詳細観察しました。
1 観察した木製品
発掘調査報告書で次のように記載されている木製品1の2つのピースについて観察しました。
「加工が明瞭な木製遺物は7点あった。1は、トネリコ属トネリコ節の心持ち丸木材の表面を削り、横断面が楕円形となるように加工した棒状品である。断片化した3点が同一地点から出土しており、加工の様相、樹種と木取りの特徴が同じであることから同一個体と判断され、一端がすぼまる棒状と復元される。」
木製品
発掘調査報告書から引用
2 観察
雷下遺跡出土木製品の意匠 1
雷下遺跡出土木製品の意匠 2
2つのピースともに全周切込みがあり、その一部がえぐられています。また一方の端は丸木を斜め方向にわざと凹凸をつけて形状が匙状に見えるようにカットされています。そのカット面は極めて新鮮ですからカットされてから多数回にわたって使われた様子は皆無です。
1では面取り、圧着痕らしきものが観察できます。
2では小孔1つと縛り跡らしきものが観察できます。
2つのピースともに、作られた後1回使われ、その後遺棄されたように想像できます。
3 参考 匝瑳市亀田泥炭遺跡(縄文後・晩期)出土木製品の観察
棒状木製品2の意匠
棒状木製品4の意匠
4 考察
・雷下遺跡出土木製品と亀田泥炭遺跡出土木製品の意匠が「類似」しているという域をこえて「同一」であると形容したくなるような近似性を感じることができます。
・楕円形の長い棒状木製品を一旦つくり、それを分割して特殊意匠を施して単位木製品を複数作ったと考えられます。
・特殊意匠は縄文早期も縄文後・晩期も「えぐりを伴う全周切込み」「材を斜め方向に凹凸をつけ(匙状にして)カットしている」です。
・さらに2遺跡出土物ともにカット面が新鮮で使いまわした様子は全く感じられません。
次の記事でこの木製品イの意匠の意味について考察します。
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