2016年4月10日日曜日

参考 千葉県における漆関連墨書文字分布 その2

花見川地峡史-メモ・仮説集->3花見川地峡の利用・開発史> 3.4〔仮説〕律令国家の直線道路、東海道水運支路の検討>3.4.327 参考 千葉県における漆関連墨書文字分布 その2

漆関連墨書文字として「七」(シチ、漆)、「知」(シル、汁)、「益」(エキ、液)に「息」(ソク、乾漆を意味する技術用語、〓(土偏に塞)・塞・即・則などと書かれる)が加わりました。
2016.04.09記事「船尾白幡遺跡で乾漆を示す墨書文字(息)を認識」参照

そこで、芋づる式学習になりますが、千葉県墨書土器データベースで「息」を検索して、「七」「知」「益」のリストに出土遺跡を追加してみました。

なお、「息」が他の文字と組み合わさると別の意味になる可能性がありますから、ここでは他の文字を組わさった「息」の例は機械的に扱っていません。(本来は全ての「息」を検討して情報量を豊かにする必要がありますが、ここでは予察的な作業をしています。)

千葉県における墨書文字「七」「知」「益」「息」の出土状況

全部で31の遺跡から「七」「知」「益」「息」が出土しています。

特筆すべきことは、船尾白幡遺跡と鳴神山遺跡との直接関係が明瞭な沖積地(水路)遺跡である西根遺跡から「息」が2点出土していることです。

鳴神山遺跡-西根遺跡-船尾白幡遺跡の一帯が漆業務の一大中心地であったことが推察されます。

漆に関する西根遺跡検討は別記事で行います。

同時に注目すべき事象として、「七」「知」「益」がそろって出土している神山谷遺跡(横芝光町)からさらに「息」が出土していることです。

漆業務に関して神山谷遺跡に注目したいと考えています。

また吉原三王遺跡(千葉県香取市)からも「息」が出土しています。

これらの遺跡の分布と小字「ウルシ」の分布を重ねると次のようになります。

墨書文字「七」「知」「益」「息」出土遺跡と小字「ウルシ」の分布

この重ね合わせ分布図を使った現時点における感想をメモしておきます。

墨書文字「七」「知」「益」「息」出土遺跡と小字「ウルシ」の分布に関する感想1

漆関連墨書文字と小字の情報を重ね合わせて、漆資源の枯渇について考察した結果です。

8世紀から9世紀に発展した新規開発地が10世紀に一律に消滅的に衰退しますが、その理由の一つに資源浪費があるのではないだろうかと疑っています。

漆資源枯渇をヒントの一つとして、集落一斉崩壊の考察を深めたいと考えていきます。

墨書文字「七」「知」「益」「息」出土遺跡と小字「ウルシ」の分布に関する感想2

8世紀から9世紀に発展した新規開発地の定番生業メニューとして漆工芸が存在したと考えました。

定番メニューには漆工芸品生産の他、絹生産、牛馬生産などが存在し、高付加価値品の生産を目指していたと考えます。


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