2019年6月11日火曜日

雷下遺跡出土木製品意匠の意味

縄文木製品学習 8

雷下遺跡出土木製品(木製品イ)意匠の意味について考察してみました。
当初の想定でキケウシパスイではないかと踏んでいましたので、それが出ている図書のページをめくってみました。

髯揚箆(ひげあげべら)イクパスイ
金田一京助・杉山寿栄男共著「アイヌ芸術 木工編」(昭和17年発行、昭和48年復刻)から引用改変

驚いたことに、キケウシパスイ4例のうち2例は植物(の紐?)が付いています。棒にモノがついているのです。
この写真を見て、雷下遺跡等から出土している木製品イの全周する溝はモノを縛り付けて、それが滑り落ちないようにするためのガイド溝であることが直観できました。おそらく間違いのないところだと感じることができます。

さらに金田一京助・杉山寿栄男共著「アイヌ芸術 木工編」の説明を読むと、キケウシパスイの尖った方は鳥の嘴をあらわし、嘴に酒をつけて周囲にふりかけるとキケウシパスイというイナウが鳥の役割をして神に願いを確実に届けるとう趣旨の記述が書かれています。(戦前アイヌのキケウシパスイに関する記述)この記述は現在も引用-孫引用をくりかえして使われているようです。

雷下遺跡出土木製品イの本質を考える上で、キケウシパスイ、鳥、イナウなどのキーワードを仮説することは重要であることが感得できました。

雷下遺跡出土木製品は何かを紐で結んでいた。匙状先端は酒を振りかけるためかもしれない

参考 Wikipediaのイクパスイの項 抜粋
イクパスイ(ikupasuy)は、アイヌ民族が儀式で使用する木製の祭具で、カムイ(神)・先祖に酒などの供物をささげる際、人とカムイの仲立ちをする役割を果たすものとされた。
名称は ikuが「酒を飲む」、pasuyが「箸」の意である。
日本語では「(カムイに)酒を捧(ささげる)箸」として、捧酒箸と訳される。
カムイノミ(神事)やシンヌラッパ(先祖供養)など、酒を用いる祈りには欠かせず、このほか個人的な祈りに際しても用いられた。
用いる際は、その先を酒につけて酒の滴を火やイナウに振りかけ、神・先祖に捧げて祈祷する。人間の言葉は直接カムイに届かないとされているが、イクパスイを介することで人間の言葉は(たとえ不足や誤りがあったとしても)カムイに正確に届けられる。また、捧げた一滴の酒はカムイモシㇼ(kamuy-mosir:神々の世界)に一樽にもなって届き、カムイたちも同様に酒を酌み交わすとされた。

1930年に行われたイオマンテの様子。膳の上の椀に載せられたへら状の物がイクパスイ

キケウㇱパスイ
イクパスイの一種であると同時にイナウの一種でもある。kike が「削りかけ」、us「~がつく」、pasuy「箸」の意で、日本語では削り掛けつき捧酒箸と訳される。
主にヤナギ、ミズキなどの白木で作られ、一部の地域を除いて文様を施すことはない。上面1~4ヵ所に削りかけがあり、数や形は家系によって異なる。
大祭に際してとくに重要な祈りに用いられ、イナウ同様儀式が終わると火にくべたり祭壇に納めて火のカムイへの捧げ物としたため、原則として儀式のたびに新しく作られているが、一部の地域では複数回使用されたこともある。



0 件のコメント:

コメントを投稿