2019年7月1日月曜日

縄文早期条痕文系土器形式「鵜カ島台式」の表記

縄文土器学習 170

縄文早期条痕文系土器形式の一つである「鵜カ島台式」の表記におけるカタカナの「カ」の部分(発音は「ga」)をどのようにしたらよいか困っていますのでその解決のために判らない点をメモしておきます。

1 「鵜カ島台式」表記の状況
1-1 「千葉県の歴史」における「鵜カ島台式」表記
私の学習基本図書である「千葉県の歴史 資料編考古1」「同 資料編考古4」では「鵜カ島台式」(ルビはウガシマダイシキ」に統一されています。自分はそれを使ってきました。(ただし、「カ」が小さい「ヵ」に見えたのでそれを使ってきました。)

「千葉県の歴史」における「鵜カ島台式」表記

1-2 遺跡データベースにおける「鵜カ島台式」表記
千葉県遺跡データベース(WEBサイト「ふさナビ」から以前ダウンロードした千葉県教育委員会の行政資料)では「鵜カ島台式」が52レコード(遺跡)がヒットし、次のような表記になっています。

千葉県遺跡データベースにおける「鵜カ島台式」表記
全角と半角の違いを無視すると「ヶ」「ケ」「ガ」になります。

1-3 日本土器事典における「鵜カ島台式」表記
「鵜ヶ島台式」で記述や索引が統一されています。

日本土器事典における「鵜カ島台式」表記

1-4 小林達雄編「総覧縄文土器」における「鵜カ島台式」表記
条痕文土器における記述は「鵜ガ島台式」で統一されていますが、他の項目で引用的に語られる部分はほとんど全て「鵜ヶ島台式」です。さらに索引【土器群】では「鵜ヶ島台式」であり、「鵜ガ島台式」は出てきません。

小林達雄編「総覧縄文土器」における「鵜カ島台式」表記の不統一

2 「鵜カ島台式」の用語不統一の理由
自分は考古関係社会の状況を100%知らないので「鵜カ島台式」の用語不統一の理由が皆目見当がつきません。
学習基本図書「千葉県の歴史」で「鵜カ島台式」と統一されているのでそれに従っているのですが、同じ千葉県の行政資料では「鵜カ島台式」は全く使われていません。
さらに納得できないことは権威ある専門書として入手した小林達雄編「総覧縄文土器」で本文専門記述は「鵜ガ島台式」なのに、そのページを指し示す索引が「鵜ヶ島台式」と異なる不思議です。
・「鵜カ島台式」が一般化した学術的専門用語であることは間違いないと思いますが、その表記がこのようにバラバラでも考古社会は不便を感じないのでしょうか?
・「千葉県の歴史」において「鵜カ島台式」に統一されていることは、同じ県の行政資料でそれが全く使われていないことを踏まえると、「千葉県の歴史」執筆編集において強い規制力が存在したことに間違いありません。「鵜カ島台式」をどのような表記するか、その独自性を発揮することが専門性とか学術性とかの権威の象徴なのでしょうか?
・小林達雄編「総覧縄文土器」で本文と索引及び引用的記述で表記が異なるのは専門性とか学術性の権威の激突(つまり専門的意地のはりあい)なのでしょうか?
・それとも「鵜カ島台式」、「鵜ガ島台式」、「鵜ヶ島台式」などの表記の違いに対応して対象となる土器が異なる、土器区分や細分の考え方が異なるといった意味のある違いなのでしようか?
・土器形式に関して学術用語統一委員会みたいな交通整理的機能を果たす機関はないのでしょうか?

3 データベースをどのように作ったらよいか
土器学習を含めて縄文時代学習では学習ツールとして私家版遺跡データベースを充実させています。File Makerというソフトを使っていますが、千葉県だけで2万ある遺跡の検索を繰り返して行っています。その際「鵜カ島台式」「鵜ガ島台式」「鵜ヶ島台式」・・・があると検索効率が著しく落ちます。効率の問題だけでなく、そこにある重要な情報を見落とす可能性も強まります。
意味のある用語の違い(加曽利EⅡ式と加曽利E2式など)ならそれを受容すべきだと思いますが、意味が同じで表記だけ異なる土器形式用語は、データベース内部では是非とも統一したいです。
自分が作る遺跡データベースでは「鵜カ島台式」の表記をどのようにすべきか、専門家のご指導を是非とも受けたいと希望しています。
この記事を読んでいただいた方でこの問題に興味がある方がいらっしゃれば、是非ともアドバイスいただきたくお願い申し上げます。

参考 八千代市立郷土博物館における鵜カ島台式土器の展示(千葉県教育委員会所蔵)
八千代市間見穴遺跡出土

参考 鵜カ島台式土器出土遺跡

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