2020年7月9日木曜日

「縄文のビーナス」と系譜を同じにする千葉県出土土偶

縄文土器学習 420

図書館から借り出した28年前の図書「国立歴史民俗博物館研究報告第37集」(1992年)が興味深くて、時間の経つのもお構いなしに読んで、見て楽しんでいます。同時に他の土偶図書も読み、土偶というものに対する知識を集中的に入手しています。
この記事では茅野市棚畑遺跡出土国宝土偶「縄文のビーナス」と同じ系譜の土偶が東京都、千葉県からも出土していることを知りましたので、メモします。

1 茅野市棚畑遺跡出土国宝土偶「縄文のビーナス」

茅野市棚畑遺跡出土国宝土偶「縄文のビーナス」
3Dモデルはhttps://skfb.ly/6TJDr
中期初頭終末期から中期中葉Ⅰ期(貉沢式期)頃つくられたと考えられています。

2 東京都出土河童形土偶

東京都出土河童形土偶
「国立歴史民俗博物館研究報告第37集」(1992年)から引用
「国立歴史民俗博物館研究報告第37集」(1992年)の「東京都の土偶」における中期前半土偶について、8を祖形とし、17~19が河童形土偶であり、棚畑遺跡例に共通する形態であると説明しています。ハート形の顔にフードを被ったような頭を特徴としてます。
説明にはありませんが、顔のない16の体形が「縄文のビーナス」に似ています。

3 千葉県出土河童形土偶
縄文中期前葉五領ヶ台式期の土偶として河童形土偶が出土しています。

河童形土偶(千葉県東金市鉢ヶ谷遺跡出土)
「千葉県の歴史 資料編 考古4(遺跡・遺構・遺物)」から引用

河童形土偶(1:東金市鉢ヶ谷遺跡出土、2:芝山町香山新田新山遺跡(新東京国際空港No.10)出土)
「千葉県の歴史 資料編 考古4(遺跡・遺構・遺物)」から引用
ハート形の顔とフードを被ったような頭の様子が「縄文のビーナス」を彷彿とさせます。
東金市鉢ヶ谷遺跡出土はほぼ完形で出土したもので墓坑の可能性のある土壙から五領ヶ台式に比定される土器と一緒に出土しています。
縄文のビーナスも副葬品として出土したことと合わせて考えると興味深いことです。

4 感想
千葉県中期の土偶出土数はすくないのですが、出土した土偶が河童形土偶で長野県茅野市棚畑遺跡出土国宝土偶「縄文のビーナス」と系譜を同じにすることに驚きました。長野県と千葉県の間に東京都を介在して土偶に関する交流があることが確実です。おそらく土偶に関する文化は長野県から千葉県方向に一方的に流れたのだと思います。
棚畑遺跡で銚子産コハクが出土しているので土偶文化と一緒に受領した物品の返礼に該当する対応がコハクの送付だったのかもしれません。
千葉県では阿玉台式にも土偶がでるのですが、社会の急拡大期である加曽利E式期になると土偶はほとんど出土しなくなり、とても興味深いテーマとなります。

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