縄文土器学習 472
君津市三直貝塚出土土製耳飾の観察をしています。
1 縄文後晩期臼形土製耳飾(君津市三直貝塚)3点 観察記録3Dモデル
縄文後晩期臼形土製耳飾(君津市三直貝塚)3点 観察記録3Dモデル発掘調査報告書記載 上:グリッド出土、18番、径15.5㎜、幅9.5㎜、質量1.33g、赤彩臼形で上下面が大きく抉れる。
発掘調査報告書記載 下左:SX-038出土、1番、径(22.0㎜)、幅12.0㎜、厚さ21.0㎜、質量2.30g、赤彩:凹み部に多くのこり、外面(側面)にも少し残る。胎土精良。焼成:やや軟。臼形耳飾り。凹みの中央に凸があり、その上に刺突文。
発掘調査報告書記載 下右:グリッド出土、127番、径22.0㎜、幅12.0㎜、質量2.76g、赤彩、胎土精良。焼成:良。臼形耳飾。底の部分が盛り上がる。(両面)
撮影場所:加曽利貝塚博物館 ミニ企画展示「県内縄文遺跡展」-千葉県の縄文時代研究を彩った遺跡たち- 君津市三直貝塚編
撮影月日:2020.08.28
ガラス面越し撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.007 processing 47 images
展示の様子
展示の様子
上(グリッド出土18番)の実測図
3Dモデルの動画
2 メモ
ア 大きさの体感
直径が1.55㎝、2.2㎝と小さい土製耳飾ですが、現場での観察と3Dモデルでの観察で、何か大きさの実感が湧きません。具体的には上の土製耳飾の直径1.55㎝を基準にすると下の2つはもっと直径が大きいような気がしてきます。そこで3Dモデルで寸法を計測してみました。
実寸法を付与した3Dモデル
ショーケース手間に折尺を置いて、それが写るように撮影して3Dモデルを作成して、3つの臼形土製耳飾の直径を計測してみました。
実寸法が無い3Dモデルでの計測
実寸法を付与していないけれども精細な3Dモデルで3つの臼形土製耳飾の寸法を計測し、相対的に比較してみました。
これらの作業により、3つの土製耳飾の大きさは発掘調査報告書の調査表通りであり、自分の視覚体感に錯覚的な現象があったことがわかりました。
3つの土製耳飾のオルソ投影画像 立面
イ 少年少女用土製耳飾
3つの土製耳飾は直径が小さく、少年少女が通過儀礼として耳たぶに穴を開け最初に着装したものであると想像します。
耳たぶの穴を最初から1.55㎝とか2.2㎝にすることはできませんから、時間をかけて徐々に広げていったに違いありません。痛みに耐えて体を徐々に変形させる最初の身体変工が土製耳飾着装だったようです。
耳たぶの穴は壮年熟年では最大8㎝以上にまでなります。これ以外に抜歯、入れ墨、ペニス異形化など苦痛を伴う身体変工が少年少女達に待ち受けています。
ウ 赤彩の意味
この3点は赤彩土製耳飾を選んで展示したようです。赤彩されているものの数は少ないです。グリッド出土土製耳飾133点でみると13点が赤彩です。約1割ということになります。普通に着装される土製耳飾は赤彩されないで、特殊な場合に赤彩されることが想定されます。
その特殊な場合の例として遺体を埋葬する際の着装土製耳飾があります。
下右(SX-038出土1番)土製耳飾は頭部人骨付近から出土していて、その実例のようです。
次の記事でSX-038出土1番土製耳飾について検討を深めます。
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