縄文土器学習 468
千葉市内野第1遺跡出土の土製耳飾119点の中にペアであるものがどれほどあるか調べてみました。
調べ方は最大直径区分別装飾性分級別に9区分した土製耳飾実測図を画面上に並べて文様と断面形でざっくりとした分類を行い、そのプロセスの中でペア土製耳飾と直観できるものを抽出しました。
同時に抽出したペア土製耳飾は発掘調査報告書の調査表データ(最大直径、最大幅、最大厚、備考)から、データとしての近似性も確認しました。
1 土製耳飾似たもの探し
1-1 最大直径~3.4㎝
ア 装飾性高
土製耳飾似たもの探し 最大直径~3.4㎝ 装飾性高
ペア土製耳飾は見つかりません。
イ 装飾性中
土製耳飾似たもの探し 最大直径~3.4㎝ 装飾性中
ペア土製耳飾は見つかりません。
ウ 装飾性低
土製耳飾似たもの探し 最大直径~3.4㎝ 装飾性低
13と115がペア土製耳飾である可能性があります。しかし、形状が単純で小さいためペアであると確信できる特徴点は少ないです。
1-2 最大直径3.5~5.9㎝
ア 装飾性高
土製耳飾似たもの探し 最大直径3.5~5.9㎝ 装飾性高
ペア土製耳飾は見つかりません。
イ 装飾性中
土製耳飾似たもの探し 最大直径3.5~5.9㎝ 装飾性中
ペア土製耳飾は見つかりません。
ウ 装飾性低
土製耳飾似たもの探し 最大直径3.5~5.9㎝ 装飾性低
92と101及び64と65の2組がペア土製耳飾である可能性が濃厚です。
1-3 最大直径6.0㎝~
ア 装飾性高
土製耳飾似たもの探し 最大直径6.0㎝~ 装飾性高
34と35複雑な文様と形状がほぼ一致するので、ペア土製耳飾であると断定できます。
イ 装飾性中
土製耳飾似たもの探し 最大直径6.0㎝~ 装飾性中
ペア土製耳飾はみつかりません。
ウ 装飾性低
土製耳飾似たもの探し 最大直径6.0㎝~ 装飾性低
40と57及び39と41の2組がペア土製耳飾である可能性が濃厚です。
2 ペア土製耳飾
1の検討でペア土製耳飾と断定できるものから多少不確かさが残るものまで含めて6組のペア土製耳飾を抽出できました。
土製耳飾の全出土数は119点ですから、ほぼ1割がペアであったことになります。
3 考察
ア 土製耳飾は両耳にペアで着装されていた。
出土数は少ないけれども1割はペア土製耳飾であることから、土製耳飾は両耳にペアで着装されていたことは確実であると考えます。
イ ペア土製耳飾出土が少ない理由
土製耳飾の9割が片方で出土する事象にはそれに対応する祭祀上の理由が存在すると考えます。
耳飾知識が少ない現段階で仮考察を次のようにします。
現代社会で女性がイアリングを片方なくす、隠す、捨てるという行為は、それをプレゼントしてもらった恋人と別れる場合、裏切られた場合、捨てられた場合などの破局を意味します。※
この現代女性心理のアナロジーで次のように想像します。
・土製耳飾は身体変工を伴う通過儀礼で着装するものであり、集落から、突き詰めれば集落リーダー(=シャーマン)から支給されたものであった。
・したがって、土製耳飾は神-シャーマン-自分という関係性を表現するものであった。
・何らかの理由で集落リーダー(=シャーマン)を拒否(殺害、追放)しようとした時、人々は集落リーダー(=シャーマン)との関係を清算する意思表示として土製耳飾の片方を山奥や谷底に投げ捨てた。
・内野第1遺跡に近在近郷の人々が片耳だけの土製耳飾をしてやってきて、集落リーダー(=シャーマン)を処刑あるいは追放する祭祀を行った。人々は祭祀の後、片方の土製耳飾をその場に捨てた。
ウ 土製耳飾の文様について
土製耳飾の文様は類似のものがあり、家紋のような役割をしていて家族毎に同じデザインをつかっていたのかもしれません。
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※ 参考 ユーミン 真珠のピアス
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