縄文土器学習 473
君津市三直貝塚土製耳飾で人骨出土遺構から出土したものがありますので学習します。
1 頭骨の耳の位置から出土した土製耳飾2点
2020.09.24記事「縄文後晩期臼形土製耳飾(君津市三直貝塚)3点 観察記録3Dモデル」で観察したSX-038出土1番は発掘調査報告書を確認すると2番とともに2点が人骨(頭骨)と一緒に出土しています。その様子を発掘調査報告書から把握します。
ア 人骨出土遺構SX-038の発掘調査報告書記載
「3C-55に所在する。貝層直下から人骨が出土した。明瞭に部位が判明したのは頭部骨のみで、他は確認できなかった。頭部の耳の位置から耳飾が出土している。出土状況から、加曽利B式期の人骨であると考えられる。」
なお、発掘調査報告書の人骨詳細記述ではSX-038に関する記述はありません。
イ 土製耳飾実測図、調査表
土製耳飾実測図
君津市三直貝塚発掘調査報告書から引用
調査表
君津市三直貝塚発掘調査報告書から引用
2 SX-038出土1番土製耳飾の観察
3DモデルからSX-038出土1番を拡大して観察します。
SX-038出土1番の3Dモデル拡大画像
SX-038出土1番の3Dモデル拡大画像
SX-038出土1番の3Dモデル拡大画像
赤彩塗料(ベンガラか)がべったり塗られてそれが残存しています。
3 考察
ア 被葬者は少年少女か
頭骨の耳の位置から土製耳飾が出土しているのですから、被葬者がこの土製耳飾を着装して埋葬されたものと考えられます。したがって、この被葬者は少年少女の世代だと想定できます。
イ 被葬者は通過儀礼前の年齢か
赤彩され2つの土製耳飾の寸法は全く同じです。しかしその形状は異なっています。一方は凹み中央部の凸部に刺突があり、一方はありません。この2つの土製耳飾がペアとして作られたものではないことを物語っています。ハレの通過儀礼で着装する人生最初の土製耳飾がペアで新調されたものであると想定すると、この土製耳飾がペアでないことは次のような意味をもっているかもしれません。
[想像]「被葬者(子ども)は土製耳飾を着装する年齢に近いがまだその年齢には到達していなかった。そのため新調したペア土製耳飾は作っていなかった。しかし子どもが突然死んだため、親は子どもがせめて土製耳飾を着装する通過儀礼をこの世でしてから(それだけこの世を楽しんでから)あの世に送りたいと希望した。そこで、仲間が協力して余っている土製耳飾で同じような大きさのものを2つ集め、赤彩して、子どもに着装させて葬った。」
ウ 土製耳飾は両耳に着装することが一般的
当たり前のことですが、この事例から土製耳飾は両耳に着装することが一般的であると捉えることができます。土製耳飾は片方しか出土しないことが一般的ですが、その理由は土製耳飾が呪術活動(例 シャーマン殺し)の意思表示道具としても使われたためであると考えます。
エ 赤彩の意味
出土土製耳飾の約1割が赤彩されています。逆に約9割は赤彩されていません。この割合から、土製耳飾は本来用途(通過儀礼や祭祀における着装)では赤彩されることはなく、赤彩は被葬者に着装させる場合など特殊な場合に限定されていたと考えます。赤彩するということはあの世とのコミュニケーションを円滑の行うために必要な行為であると感じます。赤はあの世に住む神様が好む色です。あの世の神様が見つけやすい色が赤です。
この記事で君津市三直貝塚土製耳飾学習をいったん区切ります。
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