2020年9月3日木曜日

アリソガイ学習の作業仮説と予備実験1

 縄文貝製品学習 8

2020.08.23記事「アリソガイ実験学習の開始」でアリソガイ学習をスタートしました。千葉市埋蔵文化財調査センター所長西野雅人先生からサポートしていただいたことは誠に心強いことです。

アリソガイ現物を借用させていただきましたので、何はともあれ、簡単な予備実験をして作業仮説の手ごたえを実感することにしました。

1 アリソガイ学習の作業仮説

縄文中期をメインとする遺跡千葉市有吉北貝塚で出土するアリソガイ製ヘラ状貝製品の用途を突き止める学習をするのですが、その用途が皮なめしに関連するものであると作業仮説して学習を進めます。

アリソガイ製ヘラ状貝製品が殻物質つまり炭酸カルシウムを他のモノに擦りつけてその役割を果たしていると想定できるので、次ような作業仮説を設定して学習を進めることにします。


現代製革工程と縄文時代アリソガイ製ヘラ状貝製品役割の対応(作業仮説)

現代製革工程で石灰漬けといわれる準備工程がアリソガイ製ヘラ状貝製品が果たしていた役割であると作業仮説します。

アリソガイ製ヘラ状貝製品の炭酸カルシムを皮に擦りつけて塗布することによって、現代製革工程における石灰漬けと同じような効果、つまり脱毛、表皮除去及び余分な物質除去による柔軟化を実現していたと想定します。

2 予備実験 1

頭でいくら物事を考えていても、学習は空転し休むに似たりですから、何はともあれ手を動かしてみました。予備実験1と称してつぎの実験をしてみました。

ア シカ革(タンニンなめし革)の入手

イ シカ革の水漬け(タンニンなめし成分の部分的除去)

ウ 水漬け後シカ革の乾燥

エ 乾燥シカ革に対するアリソガイ擦りつけ(炭酸カルシウムの塗布)

オ 炭酸カルシウム塗布の効果体感

本来シカ皮原皮で行うべき実験ですが、シカ皮原皮の入手方法がわからないので、webでタンニンなめし革を購入しました。シカ獣害対策に関連した日本産シカ革です。

タンニンなめし革は水に漬すとなめし成分が溶出して、なめし効果が薄れると何かに書いてありましたので、なめし効果減退に期待しました。


入手シカ革


水漬けの様子

水が茶色になり、革に含まれるなめし成分(?)が溶出している。


乾燥シカ革

購入製品よりゴワゴワとなり硬くなりました。


アリソガイ擦りつけの様子(革の肉側)


アリソガイ擦りつけの様子(銀面)

【実験結果 体感】

・アリソガイを革の裏側(肉側)に擦りつけると貝成分が多量に革に付着する感触があります。目で見ると白いクリーム状の成分が付着しています。アリソガイ(貝殻)からクリーム状成分が革表面に塗布できるという不思議な感覚を体験します。

・アリソガイを革の表面(銀面)に擦りつけると、滑ってしまい貝成分が表面に付着する感触はあまりありません。目でみると革表面が光っていて油を塗ったような感じに変化しています。

・アリソガイを表裏塗った部分と塗っていない部分の硬さを指の感触でくらべると、塗った方が柔らかい印象を実感します。アリソガイ成分(炭酸カルシウム)がなめし革(の水漬け後乾燥革)にも効果があり、革を柔らかくしているようです。

3 感想

ままごとのような予備実験ですが、アリソガイ製ヘラ状貝製品が皮なめしに関連して使われていたという作業仮説の確からしさをまずは体感できました。

次は脱毛の予備実験にチャレンジすることにします。


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