2020年9月29日火曜日

アリソガイ製ヘラ状貝製品の予察観察 その2

 縄文貝製品学習 16

2020.09.28記事「アリソガイ製ヘラ状貝製品の予察観察」のつづきです。

1 貝殻成長線強調写真の作成

Photoshopハイパス機能を利用した貝殻成長線強調写真が他の写真でも可能であるか試してみました。


撮影写真と貝殻成長線強調処理画像

撮影写真は貝殻成長線強調処理が可能です。


3Dモデル画像と画像処理による貝殻成長線強調画像

3Dモデルから取得した画像でも貝殻成長線強調が可能です。3Dモデルではオルソ投影や好みの角度からの画像を作成できますから、分析の幅が広まります。

2 貝殻成長線を利用した使用痕跡の発見

貝殻成長線は過去の腹縁を示しています。腹縁は平です。したがって貝殻成長線はある部分だけを見れば平行線で等高線のように扱うことができます。この特性から、貝殻成長線の凹凸を見つければ、それにより貝殻の微細な削剥の様子を観察できるはずです。

このような観点からアリソガイ製ヘラ状貝製品372図1を観察するとこれまで気が付かなった微細な削剥面を発見することができました。よく見ると、擦痕がその場所に存在します。


貝殻成長線のわずかな分布異常から見つかる摩耗削剥部と擦痕

この削剥面の深さはおそらく0.1㎜前後程度かそれ以下だと想像します。(貝殻の厚さは1㎜前後です。)

3 硬いモノを擦ったと推定できる削剥面と強い擦痕


硬いモノを擦ったと推定できる削剥面と強い擦痕

貝の後端の貝殻成長線が密集して凸形になる部分が平らに削剥されています。その削剥面には直線の強い擦痕が残り、末端では顕著な細溝になっています。硬いモノを擦った跡のように考えることができます。

4 メモ

・貝殻成長線に着目すれば効率的にアリソガイ製ヘラ状貝製品の使用痕を見つけることができるようです。

・ライトとルーペで観察した擦痕の一部は撮影写真画像処理で観察できるようです。

・この製品(372図1)は硬いモノも擦っているようですが、それがこの製品(372図1)だけの事象であるのか、それとも製品一般の事象であるのか大いに気になるところです。


0 件のコメント:

コメントを投稿