2013年9月20日金曜日

芦太川谷津の仲東谷津合流部における横ずれ

花見川流域の小崖地形 その27

海老川乱歩さんから2013.09.15記事「花島断層の水平移動成分は130mもある」に次のコメントがありました。
………………………………………………
海老川(Ebigawa) 乱歩(Ranpo) です。

いやーこの発見は素晴らしいです。
小生もこの領域の、Google map や、国土地理院の空中写真を見ても発見できなかったので、
クーラーさんの地道な調査の成果だと思います。

しかし、このまま素通りはできません。

2012714日土曜日」の記事で芦太川のずれの距離は、約50m前後のはずです。
この記事では、柏井断層の水平移動成分は、芦太川筋では約150mのズレと記述しています。
この違いの検証は省略すべきではないと思います。

ずれが、約50mから約150mになった原因を説明して頂けないでしょうか。

お願い致します。
………………………………………………
ずれの認識が約50mから約150mに変わった理由を説明します。

1 間違った横ずれの認識
2012.07.14記事「海老川乱歩さんの大発見(!)」では横ずれを次のような方法で計測していました。

まちがった横ずれの計測

米軍空中写真で観察できる芦太(あしだ)川水路のずれが50mあるので、それが断層の横ずれであると考えていました。

これは完全なる間違いでした。一般論として、地史的な時間を考えると水路は谷底の中を曲流しながら絶えず移動しています。従って水路のカーブを断層の横ずれの指標とすることはできません。20127月にはこのことに気がついていませんでした。

断層横ずれの指標は同じ年代にできたと考えられる地形や地層の横ずれです。

2 芦太川谷津の横ずれ
次の地図は芦太川付近の旧版1万分の1地形図です。

旧版1万分の1地形図

この地図に芦太川谷津の横ずれを書き込んでみると次のようになり、その値は約150mです。

芦太川谷津の横ずれ
基図は旧版1万分の1地形図

ちなみに、仲東(なかひがし)谷津は断層(柏井断層)線に沿って発達した浸食谷であると考えています。

この芦太川谷津の横ずれ情報を現在の地図に投影すると次のようになります。

芦太川谷津横ずれ情報の現代地図投影
基図は標準地図(電子国土ポータルによる)

なお、150mもの横ずれは当然ながら花見川谷津筋もずらしたのですが、東京湾水系花見川の侵蝕作用と人工改変により地形から横ずれを計測することは、今の調査段階では、できません。
逆に、150mの横ずれを前提にすると、現在の地形の有り様を合理的に解釈できます。

つづく



2 件のコメント:

  1. 海老川(Ebigawa) 乱歩(Ranpo) です。

    説明ありがとうございました。
    ちなみに小生の検証結果を報告します。

    Google Map と 旧版1万分の1地形図(大正6年測量)の同じ2区間の直線距離を比較して
    大きな差がないか確認してみました。

    千葉県道262号,幕張八千代線と京成の踏切が交差する地点をA地点とします。
    千葉県道262号,幕張八千代線と鉄道連隊演習線の交差点をB地点とします。
    (B地点は、京成のガードの北西側にある和食さと東習志野店の交差点)
    最初は、旧版1万分の1地形図(大正6年測量)の距離尺(スケール・バー)の
    誤りかと思いましたが、Google Map と、旧版1万分の1地形図(大正6年測量)で、
    A地点とB地点の距離を計測したところほぼ一致しましたので、
    旧版1万分の1地形図(大正6年測量)の距離尺(スケール・バー)に
    誤りは無いと判断しました。

    となると、両地図の違いは、時間経過による地形の変化となります。
    Google Map は、最新(現在)の状態に近いものなので、旧版1万分の1地形図(大正6年測量)に対し、
    開発などで地形が変化している可能性が高いと考えられます。
    芦太川の谷の柏井断層から、ヨークマート花見川店まではかなり埋め立てられているようなので、
    Google Map では元の正確な谷底が分からず、前回(2012年7月14日土曜日の記事)は、
    約50m前後になったと判断します。
    (小生は、このとき測定に使用したのは、Google Map で、国土地理院の米軍写真は使用していません。)

    この区間の埋め立ては、谷の東側が顕著なようです。
    特に花見川団地3-5、3-6、3-7は、元谷底が山状になっています。
    誰も元谷底とは気がつかないでしょう。小生もこの付近は何百回も通っていますが、
    このブログを見るまでは、元谷底とは思いませんでした。
    ということで、疑いの晴れた旧版1万分の1地形図(大正6年測量)の
    柏井断層の北と南で芦太川の谷底のずれを小生も前回と同様の方法で測定したところ、
    クーラーさんが算出した値とほぼ一致しました。
    現在の宅地や工場がある、人の手が入った土地の地図では、「真実の地形が分からない」という事を
    あらためて認識しました。
    そして、今回ほど「古地図」の重要性を痛感した事はありません。

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  2. 海老川乱歩さん
    コメントありがとうございます。

    芦太川谷津の横ずれが約150mという計測は、人工改変がほとんどない時代の地図である旧版1万分の1地形図の等高線分布に基づいていますので、ざっくりした把握だと考えています。
    私の感覚では、横ずれが120mかもしれなし
    、あるいは180mかもしれない。そんなイメージの150mです。
    より専門的で正確な検討をするとすれば、いろいろと問題点が浮かび上がると思っています。
    その問題点に突っ込んでいくと、地形の全体像を見れないので、今は検討を省略したいのですが・・・。
    その問題点として、芦太川谷津が仲東谷津合流点の前後で断層模型のようにかっきりずれているのではなく、カーブして連続的にずれている点があります。
    この点について、いつか記事にしてみます。

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