2014年2月11日火曜日

印旛沼-自然と文化- 全6冊 紹介

花見川流域の自然・歴史を知るための図書紹介 3

「印旛沼-自然と文化-」は財団法人印旛沼環境基金が1994年から1999年にかけて合計6冊発刊した刊行物です。(現在休刊中)

1 「印旛沼-自然と文化-」諸元
編集:財団法人印旛沼環境基金
執筆者:専門家
発行:財団法人印旛沼環境基金
発行年月日:1994年~1999
価格:各号1000
サイズ:B5判、各号5080頁程度

印旛沼-自然と文化- 創刊号~第6

2 内容紹介
創刊号目次(1994.11
No.
内  容
著  者
1
印旛沼の成因と性格
楠田 隆・楡井
2
印旛沼の水環境と水質保全対策
本橋 敬之助
3
水道水源としての印旛沼
立本 英機
4
生活雑排水の浄化対策について
千葉英和高等学校 生物研究同好会
5
印旛沼の水草の変遷
笠井 貞夫
6
ナガエツルノゲイトウの出現
笠井 貞夫
7
佐倉のシダ-1992年以後-
倉俣 武男
8
印旛沼を中心とする昆虫
井原 英俊
9
縄文時代の印旛沼地域
堀越 正行
10
印旛沼周辺の弥生文化とその環境
熊野 正也
11
江戸時代の印旛沼工事
鏑木 行廣
12
印旛沼周辺の神社と古代氏族
小倉
13
印旛沼の絵葉書
内田 儀久
14
印旛沼魚猟と金比羅信仰
榎本 正三

2号目次(1995.10
No.
内  容
著  者
1
水田における物質循環と環境浄化機能
-流域に水田をもつことの意義-
(
特別寄稿)
増島
2
印旛沼への湿性・乾性沈着によるイオン種の負荷
押尾 敏夫
3
印旛沼の野生鳥類
小倉 正一
4
印旛沼を中心とする地域のテンツキ属植物
谷城 勝弘
5
印旛沼に出現したナガエツルノゲイトウとトウビシ
笠井 貞夫
6
高崎川水域のヤナギモの分布と経年変化
千葉県立佐倉東高等学校生物部
7
印旛沼周辺の自然観察道コースの検討
(1)
土浮コース
岩瀬 徹・小倉 正一・松平 喜美代・村田 威夫・笠井 貞夫
8
明治維新後の佐倉惣五郎
鏑木 行廣
9
埜原新他十四ケの村々
五十嵐 行男
10
江戸期の印旛沼掘割工事に描かれた絵図
木原 善和
11
印旛沼の漁労と泉王寺の漁不動尊
榎本 正三
12
香取秀真の心に映える印旛沼
北詰 栄男
13
印旛沼の淡貝工芸
-印旛沼コレクションⅡ-
内田 儀久

3号目次(1996.11
No.
内  容
著  者
1
千葉県(印旛沼流入水系)の湧水地点とその水質および生物調査(その1)
堀田 和弘
2
印旛沼流域河川の底性動物と水質について
大塚 直樹
3
アオコが生産する毒素(ミクロシスチン)について
藤本 千鶴・吉澤
4
印旛沼の魚類-今も元気な紳士たち-
兼子 昭夫
5
印旛沼における「モク採り」の実態
白鳥 孝治
6
万葉集の中の下総-防人歌を中心として-
岡本
7
印旛沼周辺の古墳時代
沼澤
8
「雲玉和歌集」と印旛の浦
-本佐倉城主千葉勝胤との関連を中心に-
外山 信司
9
将門の羽衣伝説考
-印旛沼コレクションⅢ-
内田 儀久

4号目次(1997.11
No.
内  容
著  者
1
西印旛沼の水質にかかわる三つの物質群
立本 英機・生嶋
2
最近の印旛沼における水草の減少について
小林 節子
3
千葉県の農耕地における水質浄化機構
金子 文宣
4
水道水源の問題
立本 英機
5
八千代市の植物相
大野 景徳
6
印旛沼周辺のフナト地名に関する覚書
遠山 成一
7
「日本地理風俗大系」にみる印旛沼の風景
-印旛沼コレクションⅣ-
内田 儀久
8
印旛沼の漁具と漁法《解説》
土屋 敏彦
9
高校生による自然環境調査
10年間を振り返って-《雑感》
本橋 敬之助

5号目次(1998.11
No.
内  容
著  者
1
印旛沼周辺から発見されるナウマンゾウ化石及び哺乳類化石と古環境
三島 弘幸
2
千葉県の気候と気象災害
太田 久雄
3
水質直接浄化の意義と方法
-生活排水対策に関連して-
本橋 敬之助
4
生活排水の汚濁負荷と合併処理浄化槽
藤村葉子・中島
5
印旛沼周辺の自然観察コースの検討(2)
小竹川コース
岩瀬 徹・小倉 正一・松平 喜美代・村田 威夫・笠井 貞夫
6
印旛沼落掘難工事現場の地理地質的特徴
白鳥 孝治
7
印旛湖畔の新しき村-吉植農場
五十嵐 行男

6号目次(1999.11
No.
内  容
著  者
1
印旛沼の水質,汚濁負荷量と浄化対策
平間 幸雄
2
印旛沼の洪水
白鳥 孝治
3
明治前期測 2万分の1フランス式彩色地図にみる印旛沼近傍の下総台地の景観について
白井 哲之
4
印旛沼周辺の風景を詠んだ『臼井八景』
立原 三知男
5
佐倉市の伝承行事“人形送り”
-藁人形の作り方-
千葉
6
『学海日録』にみる印旛沼
土佐 博文
7
印旛沼の龍伝説-印旛沼コレクションⅤ-
内田 儀久
8
環境から学ぼう
石井
9
身近な遺跡と環境教育
小野 由美子
財団法人印旛沼環境基金ホームページによる。

3この図書の特徴
この図書は、印旛沼と周辺地域の水質・環境の保全に役立てるという趣旨から、印旛沼の自然や文化に関する論文を集成したものです。

論文の中の「江戸時代の印旛沼工事」(鏑木行廣、創刊号)、「江戸期の印旛沼掘割工事で描かれた絵図」(木原善和、第2号)、「印旛沼落掘難工事現場の地理地質的特徴」(白鳥孝治、第5号)は花見川流域に直接かかわる記述があり参考になります。

特に「印旛沼落掘難工事現場の地理地質的特徴」(白鳥孝治、第5号)では花見川河川争奪に関する記述があります。
この記述は花見川河川争奪に関する最初のものであり、印刷された記述としては唯一のものであると考えます。

このブログでは花見川河川争奪について詳しく論じていますが、その検討途中でこの論文が先行して花見川河川争奪について記述していることを知りました。

花見川流域の半分(高津川流域と勝田川流域)は45年前までは印旛沼流域であったのであり、この図書に掲載されている各種論文は、花見川流域について直接言及していなくても、花見川流域の自然・歴史と出自を考える上で示唆に富むものばかりです。

例えば、「印旛沼周辺の神社と古代氏族」(小倉博、創刊号)はいつかこのブログで紹介したいと常々考えていて、実現していないものです。この論文では、香取の海(印旛沼)を軸に土地が下流から上流に向かって、古代氏族によって最初に植民されていった頃の様子を知ることができます。私はこの論文から、古代における花見川流域の空間的意味を考える際の貴重な示唆を得ました。

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