第2部 花見川河川争奪に遡る その19
花見川河川争奪について、これまで検討してきたことがらの要点を次にまとめました。
1 花見川筋の自然地形復原
花見川筋は江戸期印旛沼堀割普請及び戦後印旛沼開発で自然地形と水系が大幅に改変されました。
従って、開発前自然地形と水系を復元認識することが花見川河川争奪を考察するための必須前提条件です。
開発前自然地形と水系は古地図(小金牧野絵図、17世紀中葉作)及び現地調査から次のように復元できます。
図-1 東京湾水系と印旛沼水系の分水界
図-2 東京湾水系花見川と印旛沼水系河川の流域界
2 花見川河川争奪のまとめ
花見川河川争奪の検討結果を次の表と図にまとめました。
表-1 花見川河川争奪のまとめ
項目
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内容
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名称
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花見川河川争奪
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関係場所
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千葉市花見川区
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関係河川
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争奪河川:東京湾水系花見川
被奪河川:印旛沼水系平戸川(新川)支川古柏井川
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争奪原理
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動的河川争奪
(オーソドックスな河川争奪原理と異なる。図-3参照)
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争奪タイプ
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河道逆行争奪
(これまで見つけられたことが無い珍しい河川争奪タイプである。表-2参照。ただし、印旛沼筋河川争奪が同じ争奪タイプであることを最近発見している。)
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河川争奪であることの証拠
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1 東京湾水系のパターン異常
2 東京湾水系域における印旛沼水系特有の浅い谷地形の存在
3 東京湾水系域における印旛沼水系起源河岸段丘の存在
4 東京湾水系河川の河床高度が印旛沼水系河川の河床高度より低いこと
5 ウィンドギャップ(風隙)と無能河川の存在
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河川争奪の成因
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1 地殻変動による印旛沼水系谷津の変位
2 印旛沼水系V字谷前線と東京湾水系V字谷前線の地理的位置関係
(2について図-4、図-5参照)
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河川争奪の地形面モデル
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図-6花見川河川争奪の地形面モデル参照
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河川争奪時期
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千葉第2段丘形成時代
(図-7参照)
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関連文献
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白鳥孝治著「印旛沼落堀難工事現場の地理地質的特徴」(印旛沼-自然と文化-第5号、1998.11 財団法人印旛沼環境基金発行)で本河川争奪について触れている。
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図-3 一般的河川争奪原理と花見川河川争奪原理の差異
表-2 新たな河川争奪タイプ(様式)の分類
原理
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様式
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説明
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コメント
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静的河川争奪
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①頭方争奪
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本流または支流の頭方侵食により、その谷頭が別の河川に接し、その河流を奪取する。
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並走する河川間の生存競争による併合は①と②による
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②側方争奪
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一つの河川流域において、側方侵食によって本流が支流を争奪し、貫通丘陵を形成する。
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③自動争奪
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1本の河川の蛇行切断。
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③と④は大規模な分水界の移動(流域面積の増減)を伴わないので、普通は河川争奪とよばれない。
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④地下争奪
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カルスト地域で水流の地下への吸い込みによる流量の消失。
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動的河川争奪
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⑤河道逆行争奪
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頭方侵食により、その谷頭が別の河川の最上流部に接し、その河川の谷底を下流に向かって差別浸食が進行していくことにより、その河川の流域を奪取する。
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最初に発見された事例は花見川河川争奪である。
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図-4 花見川河川争奪の成因 2つの水系のV字谷の地理的位置関係
図-5 2つの水系のV字谷(頭方侵蝕)前線
図-6 花見川河川争奪の地形面モデル
図-7 花見川河川争奪が生起した年代
花見川河川争奪に関する検討はさらに詳しく検証したく、幾つかの具体的課題に取り組みたいと考えています。
しかし、その取り組みは後日とし、このシリーズの「第2部 花見川河川争奪に遡る」はこれでひとまず終了します。
次は「第3部 印旛沼筋河川争奪に遡る」に入りたいと思います。
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