2015年5月14日木曜日

八千代市白幡前遺跡 墨書土器の文字検討 その4

花見川地峡史-メモ・仮説集->3花見川地峡の利用・開発史> 3.4〔仮説〕律令国家の直線道路、東海道水運支路の検討>3.4.130 八千代市白幡前遺跡 墨書土器の文字検討 その4

八千代市白幡前遺跡出土墨書土器文字の詳細検討を続けています。この記事では2Cゾーンについて検討します。

5 2Cゾーンに出土中心を持つ文字の検討
●2Cゾーンに出土中心を持つ文字

2Cゾーンに出土中心を持つ文字

2Cゾーンでもこれまでのどのゾーンと比べても異なる大変特徴的な文字(組文字Z)が集中出土しています。その文字は他のゾーンではほとんど出土しません。

2Cゾーンは建物や銙帯等の出土情報から、現在までのところ農業的業務を行っていたと推測していますが、墨書土器の出土数が多く、墨書土器出土が少ない2Bゾーンのように特殊的に劣位なポジションにあったのではないようです。

特定のプロジェクトに携わるタスクフォース(部隊)が存在していたと想定しますが、そのプロジェクトが何であるか、あぶり出したいと思っています。

●組文字Zの分解
組文字Zを活字にすると次のようになります。

組文字Z

実際の墨書のスケッチは次のようになります。

Zの実例

このZの実例から、Zは次のように大と一の組み合わせであると考えることが出来ると思います。

Zの漢字組み合わせ

書き順(組わせ順)は大→一だと思います。一→大としても検討しますが、恐らく一大ではないと思います。

●組文字Zの意味
一大(イチダイ)は接頭語として使われることがありますが、そのものとしては使われないようです。
一→大の順で書いた(読んだ)ことはないと思いました。

辞書には大一としては1つの古い言葉大一(タイイツ)しか掲載されていません。オオイチ(バン)とかオオイチ(モンジ)とかの言葉はありますが、大一という2字の言葉は大一(タイイツ)だけです。

Zはこの古い言葉である大一(タイイツ)だと思います。

たい‐いつ【太一・太乙・泰一・大一】
1 〖名〗
① 中国の上代の思想で、天地・万物の生ずる根元。宇宙の本体。
*藤樹文集(1648頃)三「夫皇上帝者大乙之神霊、天地万物之君親」 〔礼記‐礼運〕
② 天神の一つ。天上の五帝をすべるとされ、天帝・上帝の別名ともいう。また、北極紫微宮をその居所とするところから、時に北極星そのものを指す。
*本朝文粋(1060頃)三・立神祠〈三善清行〉「烹ㇾ鷺而祭ニ太一一、安知ニ求ㇾ仙之徴一」 〔宋玉‐高唐賦〕
2 =⇨たいいつせい(太一星)
*律(718)職制「凡玄象器物、〈略〉、太一雷公式、私家不ㇾ得ㇾ有、違者徒一年」 〔易緯乾鑿度〕
『精選版 日本国語大辞典』 小学館

たいいつ‐せい【太一星・太乙星】
北天を運行する一星。天帝神として、兵乱・禍災・生死などをつかさどるとされる。陰陽道ではとくに重要視され、その八方遊行の方角を求めて吉凶を占うのを、太一占の法という。太一。〔文明本節用集(室町中)〕 〔晉書‐天文志〕
『精選版 日本国語大辞典』 小学館

大一(タイイツ)とは陰陽道で特に重要視される中国由来の天神であり、北極星そのものを指すようです。

陰陽道についてほぼ無知識の私ですが、Zのスケッチを見て、それが漢字の組み合わせであるだけでなく、図像として星を表現しているらしいと強く感じます。

大+一を2Cゾーン住人が墨書した時、次のようなイメージ変遷プロセスを瞬間的に経ていたのではないかと想像します。

土器に墨書大+一を書く

墨書土器に星型をイメージする

墨書土器に大一星をイメージする

大+一の文字は陰陽道の立場から、大一星(北極星)に○○を祈願したということだと思います。

2Cゾーンの集団は陰陽道を信奉する集団であることが判明しました。

1Bゾーンは高級軍人のゾーンで○(則天文字 星)を白星=勝利として祈願していて、○は具体的には北極星を指す可能性があり、妙見信仰との関係について今後検討することにしました。

2Aゾーンは仏教寺院が存在します。

そして2Cゾーンには陰陽道を信奉する集団が存在するようです。

仏教寺院と陰陽道と軍事組織の3者の関係を知ることが大切のようです。

つづく

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