2019年5月6日月曜日

唐草文Ⅰ期・Ⅱ期の土器

縄文土器学習 109

2019.05.05記事「唐草文土器 伊那市島崎遺跡」で唐草文Ⅲ期の土器を観察しましたが、この記事では唐草文Ⅰ期とⅡ期の土器を観察します。いづれも伊那市創造館で観覧したものです。

1 唐草文Ⅰ期の土器

深鉢ア 唐草文Ⅰ期 伊那市月見松遺跡出土 伊那市創造館展示

深鉢イ 唐草文Ⅰ期 伊那市月見松遺跡出土 伊那市創造館展示

2 唐草文Ⅱ期の土器

深鉢(埋甕)ウ 唐草文Ⅱ期 伊那市御殿場遺跡出土 伊那市創造館展示

深鉢(埋甕)エ 唐草文Ⅱ期 伊那市御殿場遺跡出土 伊那市創造館展示

3 展示の様子

展示の様子

4 唐草文系土器群に関する「日本土器事典」の記述
「中部高地における縄文時代中期の編年は、八ケ岳南麓のいわゆる井戸尻編年に頼るところが大きく、とりわけ中期後半においても同様である。中でも曽利式は、標式土器であっても他のきわめて強い要素が介在しており、また他地域でも曽利式と併行関係をもつ土器はそのまま曽利式編年を当ててしまっているという現状にある。とくに長野県では諏訪湖盆、伊那谷、松本平、千曲川水系の土器群が曽利式とは様相を異にしている。このような地域的な資料の増加に伴い、土器そのものの内容を明確化し、地域ごとの編年を集成しようという試みが、長崎元広ほか中部高地縄文土器集成グループによって行なわれた(長崎元広ほか1979)。これらは、曽利式、加曽利E式、唐草文系を器形の配列により地域ごとに集成したもので、とくに唐草文系土器群を取り上げて集成したものは初めての試みである。
唐草文系土器とは、「胴部の全面に展開する大柄渦巻文を基調に、その間隙をへら描沈線による綾杉文とその変形文で充たしている」ことが最大の特徴である。唐草文と総称する土器の中でも大柄渦巻文は、普通の深鉢にはあまり施文されず、甕の類に多様される文様である。なお、渦巻文の口縁部横帯文と胴部の懸垂文とからなる深鉢の文様構成は、加曽利E式からの影響が濃厚である。また深鉢の地文は沈線文である点では曽利式も唐草文系も共通しているが、唐草文系は綾杉文とその変形文を基本としている。唐草文系はまださまざまな要素が含有しており他の型式から分離する理由は確実に成り立つものである。これらの根拠に基づき唐草文系はⅠ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ期に分類された。」
「日本土器事典」から引用

5 メモ
・唐草文土器という土器形式が中部山岳に存在していて、それが曽利式や加曽利E式から影響を受けながら存在していることを知りました。

0 件のコメント:

コメントを投稿