谷口康浩著「土偶と石棒 儀礼と社会ドメスティケーション」学習 8
Taphonomy
Study 8 “DOGU & SEKIBOU: Rituals and the Domestication of Society in Prehistoric Jomon” by Yasuhiro Taniguchi
In “DOGU & SEKIBOU” by Yasuhiro Taniguchi, it is written that taphonomic research is a prerequisite for contextual interpretation. The term “taphonomy” is applied not only to biological fossils but also to artifacts in general, including dogu. I learned that idea.
谷口康浩著「土偶と石棒」の中でコンテクスト解釈にはタフォノミー研究が前提となると書いてあります。用語「タフォノミー」を生物化石だけでなく、土偶を含む遺物一般に拡大して適用しています。その考え方を学習しました。
2024.06.23記事「「儀礼行為とコンテクスト」の学習」のつづきです。
序章 儀礼考古学の現代的意義
2 儀礼考古学の研究法一モノ・行為・コンテクストー
(3)儀礼行為とコンテクスト
「ここでいう「コンテクスト」とは、遺跡の中に残された儀礼行為の物的状況を指すが、それはある儀礼の場面が瞬間的に埋没した状況を必ずしも意味しない。短時間の中でおこなわれる儀礼にも、過程があり、前後の脈絡がある。ある瞬間の状況が痕跡化されているように見えても、そこには必ず時間の流れが介在している。儀礼行為を復元する際には、その場のコンテクストが形作られることになったさまざまな人為的・自然的作用を、遺跡の形成過程に沿って把握する必要がある。換言すれば、コンテクストの解釈よりも前に、まずタフォノミーの研究(4)をおこなう必要がある。」(谷口康浩著「土偶と石棒」から抜粋引用)
・この記述における用語タフォノミーに次の注がついていて、考古学における定義(著者の定義)を書いています。
注(4)
「タフォノミーとは、古生物学の原義では、生物の遺骸が堆積物中に埋没し、続成作用を受けて岩石化するまでの化石生成の過程を研究する分野を指す。考古学におけるタフォノミー研究が対象とするのは考古資料の形成過程である。考古資料が廃棄されて、機能的脈絡(モノが使用されて機能していた状況)を離れ、堆積物中に埋没し、発掘されるまでの過程で、いかなる自然的・人為的営力を受けたのかを検討して、考古資料の産状と由来を考察する。そうした検討を経ないまま、考古資料から直截に過去の人間の生活や行動を復元することはできないという資料認識から、考古学の基礎研究分野に位置づけられてきた。」(谷口康浩著「土偶と石棒」から抜粋引用)
・本書では主に土偶が破壊された状態で出土する状況が多いことに理解に関連して、タフォノミー研究の大切さが指摘されています。
「まず考慮しなければならないのは、個々の土偶資料がその状態にいたるまでの過程(資料形成過程)である。土偶の製作から使用、廃棄にいたるライフサイクルの中のどのタイミングでいかなる取り扱いがなされていたのかを検討する視点である。つまり土偶のタフォノミー研究である。」(P120、谷口康浩著「土偶と石棒」から抜粋引用)
・土偶に関するタフォノミー研究の事例として、榎本剛治(2010)と今井哲哉(2020)をあげていますが、「土偶を対象としたタフォノミー研究はまだほとんどなく、これからの重要な課題となる。」(p141)と注書きしています。
・上記2事例をweb検索-購入の方法で入手することはできませんでした。
【参考】
・Wikipedia Taphonomy (英語版)を翻訳して閲覧しました。
・ここにおける用語Taphonomyは考古学分野適用も含めて、すべて生物化石(化石化現象)を対象として記述されています。
・化石形成には5つの主要段階があることが説明されています。
1 分離(腐敗等により、骨が分離する)
2 分散(洪水や腐食動物などによる生体断片の移動)
3 蓄積(腐食動物や人間などによる収集蓄積)
4 化石化(ミネラルが豊富な地下水が有機物に浸透して空きスペースを埋めて化石形成)
5 機械的変化(凍結融解、圧縮、輸送、埋葬などによる物理的変化プロセス)
・考古学分野におけるタフォノミー研究は、遺物(通常は動物骨)の堆積がどのように起こったかを評価する形をとることが述べられています。
「タフォノミーは考古学者が遺跡をより良く解釈するための重要な研究です。考古学的記録は不完全なことが多いため、タフォノミーはそれがなぜ不完全になったのかを説明するのに役立ちます。タフォノミーの方法論には、考古学的資料への影響を理解し、実際の遺跡のパターンを解釈するために、変化のプロセスを観察することが含まれます。これは主に、堆積物をより良く理解するために、生物の保存された遺物(通常は動物の骨)の堆積がどのように起こったかを評価するという形をとります。
堆積が人間、動物、環境のいずれの結果であるかは、多くの場合、タフォノミクス研究の目標です。考古学者は通常、人間と動物の遺物の相互作用の証拠を特定するときに、自然プロセスと文化的プロセスを区別します。これは、遺物の廃棄前の人間プロセスと遺物の廃棄後のプロセスを調べることによって行われます。廃棄前の変化には、屠殺、皮剥ぎ、調理が含まれます。これらのプロセスを理解することで、考古学者は道具の使用や動物の処理方法について情報を得ることができます。遺物が堆積すると、非生物的および生物的変化が発生します。これには、熱による変化、げっ歯類の撹乱、かじった跡、土壌 pH の影響などが含まれます。
タフォノミクスの方法論は、埋蔵された陶器や石器などのさまざまな材料の研究に応用できますが、考古学における主な応用は有機残留物の調査です。動物群集の死後、埋葬前、埋葬後の歴史の解釈は、ヒト科の活動や行動との関連性を判断する上で重要です。」(Wikipedia Taphonomyから引用翻訳)
【感想】
・本書ではタフォノミー研究を土偶に適用することの大切さが述べられています。土偶をタフォノミー研究するということはどのような項目を調査すべきであるのか、情報収集を継続することにします。現状では具体的イメージをほとんど持てていません。
・土偶が壊されてばら撒かれること自体が、土偶が果たす最重要機能であるとするならば、出土状況精細調査(タフォノミー研究)がそれを明らかにするのかもしれません。
ミミズク土偶(千葉市加曽利貝塚)
画像は本文とは関係ありません。
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