この記事では、作業途中の千葉県小字データベース2万件を使って、小字「花輪」を例に、データベース活用効果の可能性について考えます。
これまでの検討では「香取」は中世の例でした。「白幡」は古墳時代の例でした。「花輪」は旧石器時代に遡ると考えています。
「花輪」という小字が旧石器時代に遡るという話を聞くと、恐らく多くの方はマユツバと感じるのではないかと思います。
確証を用意しているわけではないのでマユツバと思っていただいてよいのですが、そのような問題意識でこれまで一貫してこのブログで検討していることに興味をもっていただければ幸いです。
データベースでは花輪関連語は次の63件がヒットします。
小字「花輪」のヒット(21市町の範囲)
これをGoogle earth proにプロットすると次のようになります。
Google earth proによる
白網は21市町域
位置情報はアドレスマッチングにより作成(小字が属する大字の中心位置にプロット)。
この図を地理院地図色別標高図を下敷きに描くと次のようになります。
千葉県21市町における小字「花輪」の分布
Google earth proによる
地理院地図色別標高図を表示
花輪の検討はブログ開始直後に集中して行ったことがあります。縄文語起源らしいということがわかりました。
2011.06.04記事「花見川の語源7 アイヌ語源説の取り下げ」参照
一方、旧石器時代の狩について検討を深めました。現在の台地崖の比高は20mから最大30mですが、旧石器時代にはそれが60mから最大90mありました。その崖を利用して旧石器時代の狩が行われていました。
2014.09.04記事「旧石器遺跡分布から推定する狩方法」等多数記事参照
旧石器時代の狩方法は縄文時代にも継続していて、崖を利用した狩の跡が各所で見つかっています。
ブログ花見川流域を歩く番外編の2015.04.20記事「千葉市内野第1遺跡 縄文時代大規模落し穴シカ猟」等参照
さて、このような背景情報を念頭に、旧石器時代遺跡プロット図を作成してみました。
旧石器時代遺跡プロット図
Google earth proによる
基図は地理院地図色別標高図
旧石器時代遺跡情報はふさの国ナビゲーション(千葉県教育委員会)より取得し、アドレスマッチングによりプロット
崖比高の大きい所(つまり狩適地)に旧石器時代遺跡がプロットされます。
この分布図と花輪分布図は大変似ているように見えます。
花輪分布も同じく崖の比高が大きい所に分布しているように見えます。
花輪分布図も旧石器時代遺跡プロット図も双方がアドレスマッチングによるもので、精細な地形との関係は不明ですが、崖の比高が大きいか小さいかという地勢大局との対応を見るには不都合のない精度であると考えます。
二つの分布図の分布パターンが似ていることは、小字花輪の起源が旧石器時代・縄文時代の狩に関係しているとの仮説に重要な手掛かりを与えます。
1箇所2箇所あるいは少数箇所の小字名称の検討では限界がありますが、小字の広域分布が明らかになると、それまで不可能であった空間的(地理的)分析が可能となります。
花輪はその格好の例になると考えます。
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参考 縄文時代遺跡プロット図
縄文時代遺跡プロット図
Google earth proによる
基図は地理院地図色別標高図
縄文時代遺跡情報はふさの国ナビゲーション(千葉県教育委員会)より取得し、アドレスマッチングによりプロット
情報量が多くなりすぎて見づらくなっています。
縄文時代遺跡は旧石器時代の様に狩だけではなく他の様々な活動も遺跡に残ります。
このプロット図から狩に関連する情報を抽出すれば(あるいは狩以外の活動の情報を除去すれば)、その情報は花輪起源の説明に役立つ情報を提供することになると想定します。
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参考までに小字花輪と旧石器時代遺跡の各ヒートマップを作成して番外編に掲載しました。
花見川流域を歩く番外編2015.08.18記事「小字花輪と旧石器時代遺跡のヒートマップ作成」参照
小字DB活用効果の展望シリーズ 終
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