2015年8月11日火曜日

白幡前遺跡出土墨書土器の閲覧 その3(記銘部位方向と心の込め方)

花見川地峡史-メモ・仮説集->3花見川地峡の利用・開発史> 3.4〔仮説〕律令国家の直線道路、東海道水運支路の検討>3.4.185 白幡前遺跡出土墨書土器の閲覧 その3(記銘部位方向と心の込め方)

2015.08.10記事「白幡前遺跡出土墨書土器の閲覧 その2(記銘部位)」で底部内面に記名している墨書土器は祈願ツールとして、心がこもっていると考えました。

体部外面横位に記銘された墨書土器は次の理由から祈願ツールとしては心がこもったツールではないと感じています。
・土器を使うときにみえる文字は横位であり、ぞんざいな感じがする。
・土器を伏せて棚に置いている時も、文字は横位であり、ぞんざいな感じがする。

そのぞんざいな感じがする体部外面横位の史料586番と史料246番を見ていると、同じ外面横位でも文字の方向が異なることに気が付きました。
この土器外面横位の方向の違いはデータベースでは識別されていません。

史料586番 廓

史料246番 器

史料586番廓は土器の縁を左手の親指と4本の指で挟んで持って、右手で書いたものと考えます。(この土器の持ち方を縁持ちと呼ぶことにします。)

史料246番器は土器の底を左手の5本指全部を使って持って、右手で書いたものと考えます。(この土器の持ち方を底持ちと呼ぶことにします。)

この違いは実務的に考えれば縁持ちの方がしっかり持てるので合理的な持ち方です。実際に体部外面横位の文字はほとんど縁持ちでかかれています。

しかし、祈願ツールとしての土器に墨書をする時の心が澄みわたっていて、墨書土器による祈願が形骸化していなければ、土器に対する扱いは必ず丁寧なものになると考えます。

土器の持ち方の丁寧さは底持ちの方が上であり、縁持ちは丁寧さに欠けると考えます。

その心性は、現代人が茶碗を持つとき、縁をつまんで持つより、底から持つ方が丁寧な持ち方であると感じることに引き継がれてきています。

よって、同じ体部外面横位の記銘でも、祈願ツール作成の心構えの違いを見つけだすことができました。

底持ちと縁持ちの出土例は廓を例にすると下表のように3:36の割合です。

白幡前遺跡出土墨書土器の記銘部位・方向の例

墨書土器の中で体部外面横位の記銘が大変多く、さらにそのほとんどが縁持ちで書かれているということから、墨書土器の原義は祈願ツールであるにしても、そのツールを使った祈願行為は形骸化していた側面があることを察します。

墨書土器の記銘部位と記銘方向を分類して、祈願の心の込め方の強弱順に並べると次のようになります。

墨書土器の記銘部位と記銘方向

墨書土器の文字毎に、あるいはゾーン毎に記名部位・方向を詳しく分析すると、古代人の心の片鱗を知ることができ、当時の社会の様子をうかがえる有用な情報を得ることができると見立てます。

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