小字地名データベース作成活用プロジェクト 26
千葉県小字データベースの作業が進み21市町村分2万を超える小字データベースが使えるようになりました。
花見川流域だけでなく、下総国領域を視野に入れる問題意識をデータベースに投影すれば、応答がある状態になってきました。
この記事では小字「香取」を例に、データベース活用効果の可能性について考えます。
データベースで香取を検索すると次の27件がヒットしました。
小字「香取」のヒット(21市町の範囲)
市川市以外に八千代市、松戸市、柏市、野田市、栄町、成田市からも香取がヒットしています。
これらすべての香取を地図に示すと次のようになります。
千葉県21市町における小字「香取」の分布
Google earth proによる
白網は21市町域
位置情報はアドレスマッチングにより作成(小字が属する大字の中心位置にプロット)。
このうち、市川市の香取については香取神宮が設置した河関(徴税所)との関連をすでに検討しました。
2015.07.22記事「市川市香取について」等参照
「海夫注文」に載る津と香取社の河関
松戸の香取(香取後)も香取社の河関との関連で捉えることができそうです。
野田に沢山ある香取は市川や松戸の例を敷衍すると、太日川(江戸川)と蘭沼(常陸川、現在の利根川筋)を結ぶ船越あるいは水路という水運交通上の要衝(香取の海水系と東京湾水系を結ぶ要衝)の香取神宮河関であった可能性が考えられます。
参考 刀禰古代(約千年)水脈想定図、衣川流海古代(約千年)水脈想定図
吉田東伍著「利根治水論考」より引用
参考 寛永初年水脈図
吉田東伍著「利根治水論考」より引用
(17世紀初め頃の利根川東遷直後の様子)
野田の香取が香取神宮河関に関連するものならば、利根川東遷以前に現在の利根川筋と江戸川の間に濃密な水運交通が存在したことが明らかになりますから、おそらくこれまであまり知られていなかった情報になると思います。
そのような発想を続けると、柏の香取は手賀沼と江戸川の間の船越に香取神宮河関が存在したことになり、この場所が古代における東海道の茜津駅家付近ですから興味が強まります。
八千代市の香取がもし同じようなものであるならば、中世には香取の海から船橋方面に抜ける船越があったことになります。
以上の記述は、検索してヒットした香取情報とこれまでこのブログで検討してきた結果を照合して得られる第一印象的な感想です。
感想ではありますが、大変刺激的で検討意欲をそそるものです。
時代的には中近世のことになると思いますが、文書からは得られない貴重な情報が得られる可能性を感じます。
このように、小字データベースの活用効果は大変大きなものがあると感じます。
検索可能な広域小字データベースというものが世の中に存在していないので、その活用効果の可能性はまだ誰も知らないのです。
千葉県小字データベース完成後、香取について本格的な検討をしたいと思います。
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参考 香取分布図
千葉県21市町における小字「香取」の分布
Google earth proによる
千葉県21市町における小字「香取」の分布
Google earth proによる
地理院地図標準地図を同時表示
千葉県21市町における小字「香取」の分布
Google earth proによる
地理院地図色別標高図を表示
参考 ブログ「花見川流域を歩く番外編」2015.08.16記事「参考 千葉県北西部における小字「香取」分布説明動画」に小字「香取」分布の説明空撮動画を掲載しました。
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