縄文社会消長分析学習 58
地形3Dモデルという学習分析インフラが出来たので、有吉北貝塚学習を本格スタートすることにします。この記事ではウォーミングアップを兼ねて早期遺構の分布図を作成してみました。
1 中期以外の遺構と遺物
有吉北貝塚は中期遺構・遺物がメインです。中期として住居跡168軒、土坑770基(いわゆる小竪穴を含む)、埋設土器2基、ピット群1ヶ所、斜面貝層5ヶ所を検出しています。それ以外の時期についても次の遺構が検出されています。
・早期炉穴8群25基
・早~前期陥穴状土坑12基
・前期土坑1基
・前期土器埋設遺構1基
・後期竪穴住居跡1軒
・後期土坑2基
・後期斜面貝層1ヶ所
中期遺構・遺物の学習の前に、発掘調査報告書詳細分析学習のウォーミングアップを兼ねて中期以外遺構について学習することにします。
2 早期炉穴と早~前期陥穴状土坑の分布
早期炉穴と早~前期陥穴状土坑の分布を次に示します。
早期炉穴と早~前期陥穴状土坑の分布(2D)
これを3D地形モデルで示します。
早期炉穴と早~前期陥穴状土坑の分布(3D)
有吉北貝塚は根本がくびれた細長い半島状台地を利用して立地しています。早期炉穴はその半島状台地の先端部に集中して分布します。
早期後半の条痕文土器小片が出土しています。
炉穴の存在はその場所に定期的に来訪して一定期間棲み付いた跡であると考えられます。台地先端部に炉穴が分布する最も大きな理由は、その場所が飲み水を得るために最適だったからであると考えます。台地先端直下の斜面下部で湧水が得られたのだと想定できます。あるいは谷津を流れる小川が水源だったのかもしれません。
炉穴の例
有吉北貝塚発掘調査報告書から引用
早~前期陥穴状土坑は半島状台地の南東部の相対的に広い場所と先端部にまとまって存在し、中央付近にも見られるという分布をしています。
中期土器片が出土していますが正確な所属時期は不明です。
先端部と南東部に動物が立ち寄ることが多かったという当時の動物生態特性を表現していると考えられます。移動しながら草を食べるシカの群れがこの半島状の台地に入り込み、先端まで行ってから引き返すという行動があったと想像します。
陥穴状土坑の例
有吉北貝塚発掘調査報告書から引用
3 3D地形モデルのデフォルト表示画面
3D地形モデルのデフォルト表示画面は上図にしめしたように遺跡北西上空から南東方向を俯瞰したものを使うことにします。
また垂直倍率は地形の様子をある程度誇張して判りやすくするために×3.0を使うことにします。
垂直倍率の違い
4 グリッド分割情報を使った分布図作成
炉穴の分布図は発掘調査報告書には掲載されていませんがグリッド(4m×4m)の位置は記載されています。このような情報はグリッドの位置から分布図を作成することにします。
グリッドの様子(2D)
グリッドの様子(3D)
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