2019年7月13日土曜日

市立市川考古博物館主催縄文文化講演会学習メモ

縄文土器学習 186

2019.07.13開催の市立市川考古博物館主催 企画展「大地からのメッセージ-外かん自動車道の発掘成果-」関連講演会「市川から発信する新たな縄文文化」を聴講しました。参考になった点が多々ありましたのでその感想をメモします。

講演会配布資料表紙

1 外かん自動車関連遺跡の発掘概要 蜂屋孝之先生講演
道免き谷津遺跡をメインにして低地遺跡の発掘概要説明があり、興味深い事柄ばかりでした。トチの実集積土坑が偶然発掘できて、そのアク抜き水さらし場と推定される木組み遺構の発見は堀之内貝塚の作業場がこの谷津にあったことを想定させます。
また土器片が特に大量に出る場所があり、焼骨出土などの情報を加え単なる生業作業場だけでなく、西根遺跡のような祭祀の場所であったことも自分は想像しました。

極めて興味深い情報満載の配布資料

2 雷下遺跡の発掘と最古の丸木舟 沖松信隆先生講演
雷下遺跡の状況は以前学習した千葉市神門遺跡と似ていますので興味があり、特に棒状木製品については検討してきているので、どのような話になるのか話に注目しました。
棒状木製品についてはこれまで発掘調査報告書やWEB掲載資料では見かけなかった写真がパワーポイントで表示され、いままでの興味がさらに倍化しました。イナウではないかという自分の作業仮説に沿う発掘製品のように感じました。
演者は棒状木製品について「2本1組で出土していることに注目できる」、「丸木舟が乗り上げている自然木の下からも出土している」(写真あり)、「櫂、掘具とは別の製品と考えられる」など自分にとって初めての情報・興味を挑発する情報が述べられました。

棒状木製品が掲載されているページ

3 縄文人の暮らしと世界観 小林達雄先生
小林達雄先生の姿を見たのは初めてです。先生の図書はいろいろ読んだことがありますが話しを聞くのははじめてでした。

興味深いので私が参考となる部分だけの要旨を次にまとめました。
・縄文土器をつくるということは定住生活が始まったことを意味し、それが縄文時代の幕開けである。
・縄文土器口縁部に突起や波状がある。これは世界の古代土器に無い特徴である。世界で縄文土器だけの特徴である。
・沖縄の土器にも突起や波状があるので、沖縄も縄文文化である。
・突起や波状は無用の長物どころか実用上邪魔モノ以外の何物でもない。しかし、実用鍋に突起や波状をつけている。
・その極端な例が火焔土器、水煙土器である。
・この特徴は縄文人の右脳思考による。
・縄文人の右脳思考の例として土偶、土版、石棒などをあげることができる。
・土版は占いかもしれない。
・土偶はアイヌのクロボッコルたいな見えない何物かを表現した可能性がある、早期・前期の土偶に顔がないのはそのためである。中期になるとようやく顔がつくが最初は目や口はない。
・見えない何物かを表現しようとすると人に近くなってしまう。
・土偶は女性ではない。土偶の研究は早期土偶からしなければならない。顔のついた土偶から研究するのは本質を見誤る。
・縄文人が情緒深い文化をもっていることは日本語にオノパトペが多く伝わっていることにも表れている。
・縄文人が情緒深い文化を持った、右脳を使う文化を持った背景に集落の回りがハラであったことによる。大陸では集落の回りはノラであり、左脳で生活する環境であった。
・大陸から発生した4大文明は現在にいたって地球を破壊し、人類という種が滅亡する運命にある。

感想
縄文文化の本質を分かりやすく話していただいたと感謝します。弟子でも自分の考えに反論する人がいると愚痴半分冗談半分の話が出ましたが、自分は小林達雄先生の考え(縄文人は右脳人間で現代文明の左脳人間と違う)に大いに共鳴しました。
しかし弟子でも反論する人がいる状況も大変よく理解できました。小林達雄先生の考えに自分を染めると技術的な論文が書きにくくなります。小林達雄先生の縄文人の本質を突いた考えを無意識的に回避しようとする人がいてもおかしくありません。
自分は完全趣味活動で縄文学習をしていますので小林達雄先生の本質的な指摘に共鳴しつつ、その指摘を格好の検討対象にして学習を進めたいと思います。
ただし、小林達雄先生の図書記述具体について疑問を持ったことが何回かあります。具体的なことではなく、縄文社会を捉える先生の根本姿勢を参考にしたいと思います。


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