2020年9月28日月曜日

アリソガイ製ヘラ状貝製品の予察観察

 縄文貝製品学習 15

1 アリソガイ製ヘラ状貝製品等の閲覧撮影

有吉北貝塚出土縄文中期アリソガイ製ヘラ状貝製品をメインにハマグリ製貝刃、赤彩ハマグリ、赤彩アリソガイ全部で15点を千葉県教育委員化の許可を得て閲覧・3Dモデル作成用撮影を行いました。

2 アリソガイ製ヘラ状貝製品の予察観察

アリソガイ製ヘラ状貝製品のうち1点の3Dモデルを作成し、その使用痕について予察観察しました。

2-1 アリソガイ製ヘラ状貝製品(磨貝)(千葉市有吉北貝塚)372図1表面 観察記録3Dモデル

アリソガイ製ヘラ状貝製品(磨貝)(千葉市有吉北貝塚)372図1表面 観察記録3Dモデル

縄文中期、R、殻長102.5㎜、殻高79.5㎜

撮影場所:千葉県教育庁森宮分室

撮影月日:2020.09.18 

許可:千葉県教育委員会許可による撮影・掲載

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.007 processing 21 images


撮影の様子


撮影の様子


実測図

有吉北貝塚発掘調査報告書から引用


3Dモデルの動画

2-2 予察観察

ア 3Dモデルの観察

・アリソガイ製ヘラ状貝製品の使用痕を詳細に観察すれば、アリソガイ製ヘラ状貝製品が何に利用されていたか検討する基礎資料を得ることができる考えます。そこで、使用痕についてまず予察観察をしてみました。

・3Dモデルをいじって観察するとみると腹縁部だけでなく、殻頂部付近にも使用痕があるようです。また使用痕と貝殻成長線の状況が密接に関係しているようです。そこで貝殻成長線を浮き彫りにした画像を作成し予察検討することにしました。

イ 貝殻成長線強調写真の作成

Photoshopハイパス機能を利用して貝殻成長線強調画像を作成しました。


貝殻成長線強調画像の作成

ウ 予察観察

・貝殻成長線強調画像をみると、貝殻成長線が途切れていることから摩耗で消失した部分が確認できます。腹縁部付近は全面的に摩耗しているようです。写真撮影の際にライトを横から当てて目を近づけて観察すると擦痕が観察できるのですが、3Dモデルではわかりません。撮影写真から擦痕を抽出できるかどうか、今後の課題です。

・貝殻左右端と殻頂に近い部分に強く擦って凹んだ部分が沢山存在します。よく見ると面的なモノを擦った跡、棒状のモノを擦った跡などの区別がつきます。


使用痕予察観察

2-3 メモ

・アリソガイ製ヘラ状貝製品の使用痕は腹縁部に限定されることなく、殻頂部付近も含めて全面に及ぶ可能性を予察観察で感じ取ることができました。

・アリソガイ製ヘラ状貝製品を道具として、擦った相手の製品は平面状のものとは限らず棒状のもの(凸のもの)もあるようです。

・アリソガイ製ヘラ状貝製品の利用方法(擦り方)は局限されたものではなく、ある程度汎用的に使われていたことが感じられます。

・以上の予察観察結果を参考にしながら、3Dモデルを有効活用した使用痕把握方法を検討したいと思います。

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