加曽利貝塚博物館特別展「祇園原貝塚」(2021.10.02~12.05)で展示されている剥ぎ取り断面「祇園原貝塚貝層断面」をよくみると破砕されているように見えるイボキサゴを観察できるのですが、その様子がいかにも中途半端にみえるのでとても興味を持ちました。そこで観察記録3Dモデルを作成してじっくり観察し、同時にイボキサゴの大きさを3Dモデルから計測してみました。
1 祇園原貝塚貝層断面(部分) 観察記録3Dモデル
祇園原貝塚貝層断面(部分) 観察記録3Dモデル祇園原貝塚貝層断面の全体
撮影場所:加曽利貝塚博物館特別展「-市原市史跡指定-祇園原貝塚 千年続いた縄文のムラ」
撮影月日:2021.10.07
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v6.009 processing 63 images
3Dモデルのカメラ配置
3Dモデルの動画
2 イボキサゴは破砕されているか
イボキサゴ拡大写真
イボキサゴはいずれも貝殻の概形を残し、その一部がなくなっています。まるでイボキサゴを真二つに切ってその断面を見せているようなものもあります。そこで観察記録3Dモデルで拡大してそれらを観察しました。3Dモデルを動かしながらよく観察すると、剥ぎ取り断面の微細な凹凸断面のそれぞれに対応してイボキサゴが切断されている様子を確認できます。つまり、イボキサゴは剥ぎ取り断面作成時に人工的に生じた断面に対応して切断されたものであることが確認できます。もともと貝層にふくまれていたイボキサゴは完形であったと推定できます。そのためと考えられますが、イボキサゴの断面が白くなっていて新鮮です。他の貝も白く新鮮な断面が多数みつかります。この貝層の貝殻は柔らかかった(「腐っていた」)ようです。
3 イボキサゴ殻径の計測
3Dモデルからイボキサゴ殻径を計測してみました。
イボキサゴ殻径測定結果
殻径
土に埋まっている部分もありますからあくまでも簡易的な数値になりますが、平均殻径は1.28㎝になります。加曽利貝塚出土破砕イボキサゴと完形イボキサゴの中間的大きさになります。現生イボキサゴ平均殻径と較べると4.2㎜ほど小さく、小ぶりです。採集圧ゼロの現代とくらべると縄文後期中葉(約3500年前)市原の海のイボキサゴには採集圧がかかっていたと推定します。
参考 イボキサゴ殻径頻度分布の比較
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