2021年10月4日月曜日

鳥形把手出土の例 多摩ニュータウン第9遺跡

 2021.09.28記事「縄文時代と鳥」で縄文時代と鳥との関係に興味を持ちました。その記事では総覧縄文土器の「獣面把手」(大工原豊)を参考にしました。「獣面把手」(大工原豊)では「7点の鳥形把手が出土した多摩ニュータウン第9遺跡で安孫子昭二が鳥について宗教学的意味について述べている」旨の記述があり興味が湧きました。そこで、次の図書を取り寄せてその部分を読んでみました。

1 安孫子昭二著「縄文中期集落の景観」((株)アム・プロモーション、2011)における鳥形把手に関する記述


安孫子昭二著「縄文中期集落の景観」((株)アム・プロモーション、2011)

この遺跡では勝坂式期から称名寺式期まで7点の鳥形把手や土偶多数など呪術的要素の強い遺物が継続して出土しています。それらの情報から本書ではこの遺跡がシャーマンを擁する地域における中核的集落であったことを推定しています。


人面把手・鳥形把手など

安孫子昭二著「縄文中期集落の景観」((株)アム・プロモーション、2011)から引用


人面把手・鳥形把手など メモ追記

原図は安孫子昭二著「縄文中期集落の景観」((株)アム・プロモーション、2011)から引用

図示される6点の鳥形把手のうち2はガンカモ類が推定され、第1段階(新地平8b~9b…勝坂2式~勝坂3式頃)です。3~7は猛禽類が推定され、5はウ科の可能性も述べられています。4と7はくちばしの先が失われています。7が第2段階(新地平9c…勝坂3式頃)、5が第10段階(新地平14…後期初頭称名寺1式前半)となっています。

次のような宗教学的考察が記述されています。

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鳥という動物意匠に付与された意味を、「宗教学辞典」から拾ってみると、未開杜会や古代社会にも実在の鳥だけでなく架空の鳥、擬人化された鳥をふくめて、鳥の宗教的な意味には次のような例があるという。

「使者-鳥は天界と地上界を結ぶ使者」、ツルや鳳凰を瑞鳥と呼ぶように、鳥は吉凶の予兆を告げる」

「供犠-動物供犠との関連で鳥も用いられる」、日本武尊の霊魂が白鳥と化して飛び去った伝説のように、化身人間の観念的願望として鳥に具象化される。」

-以上の区分は相互に関連しており、アニミズム的観念を基底とし、仲介者としての役割を強調することが多い(赤坂憲昭)。

さらに「動物供犠」との関連では、上代において、鳥が霊魂の復活や蘇生の呪術に使われたりしたことが記紀にみられる(伊藤芳1973)。

安孫子昭二著「縄文中期集落の景観」((株)アム・プロモーション、2011)から引用

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2 感想

・鳥形把手で年代の判っているものの1つが称名寺式期であり、千葉市動物公園展示鳥形把手の時期と一致することは示唆に富んでいます。称名寺式期の特別な状況(生活が困難であった状況)を示しているのかもしれません。

・鳥形把手の背後には必ず鳥の宗教的意味が存在しています。縄文時代には鳥は信仰の対象ではなかったとの説は受け入れることはできません。

・ガンカモ科の可能性のある鳥形把手があることから、自分が縄文時代棒状木製品に水鳥の姿を投影した空想がもしかしたら生きるかもしれません。

・本書の土偶に関する情報に興味を持ちますので、土偶学習に切り替えて、本書学習をすることにします。


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