2021年10月11日月曜日

土偶学習の発起

 これまでの縄文学習でいつの間にか土偶に興味を持つようになり、展示土偶の3Dモデルも多数作成してきました。また土偶に関する自分の不確かな知識や思考(妄想)を展示土偶に投影して楽しんできました。しかし、いくら趣味活動とは言っても何年も進歩が無ければつまらなくなります。そこで一念発起して土偶学習を多少本格的・体系的にして、土偶観察活動を少し深いところから楽しむことにしました。

本格土偶学習を展開するために当座、土偶専門書を入手して専門基礎知識を入手することにします。

この記事では手元にある図書を読んでその感想をメモするとともに、自分の土偶問題意識を洗い出してみました。

1 手元にある図書の感想

1-1 国立歴史民俗博物館研究報告第37集「土偶とその情報」(1992)


国立歴史民俗博物館研究報告第37集「土偶とその情報」(1992)


国立歴史民俗博物館研究報告第37集「土偶とその情報」(1992)ページ例

30年前の報告書ですが現在土偶研究の出発点となった研究報告書のようです。今回はこの報告書に掲載されている土偶実測図約1600を全部眺めてみました。


国立歴史民俗博物館研究報告第37集掲載土偶実測図の数

土偶というものの形の差異がどの程度であるのか、また地理的分布の概要がどうなっているのか、ある程度感覚的に知ることができました。この感覚は最新情報とあまり違わないようです。

1-2 原田昌幸「日本の美術2 No.345土偶」(1995、至文堂)


原田昌幸「日本の美術2 No.345土偶」(1995、至文堂)

国立歴史民俗博物館研究報告第37集の成果に基づいて縄文土偶の全体像とその分類、研究成果をまとめたようなとても判りやすく、かつ専門性のある図書という印象を受けます。この図書をじっくり読み、縄文土偶の全体像を自分なりに把握できました。

1-3 長野県立歴史館開館25周年記念特別企画「土偶展」(2019、信毎書籍出版センター)


長野県立歴史館開館25周年記念特別企画「土偶展」(2019、信毎書籍出版センター)

日本の土偶の全体像がわかるような企画展であり、本書は専門家の判りやすいコメントも掲載されていて、また図版がきれいであり手元から離したくありません。

1-4 三上徹也「縄文土偶ガイドブック」(2014、新泉社)


三上徹也「縄文土偶ガイドブック」(2014、新泉社)

読み直してみると自分の現在問題意識とダブル記述もあり2年程前の購入時とは別の印象を受ける図書です。

1-5 安孫子昭二「縄文中期集落の景観」(2011、アム・プロモーション)


安孫子昭二「縄文中期集落の景観」(2011、アム・プロモーション)

縄文中期の多摩丘陵北部から相模野台地北半に分布する背面人体文土偶研究報告ですが、その頃の時代、千葉では土偶が出土しないので対照情報として関心を持ちます。また本書から土偶研究に関する文献情報をいくつか入手しました。

1-6 設楽博己著「顔の考古学 異形の精神史」(2021、吉川弘文館)


設楽博己「顔の考古学 異形の精神史」(2021、吉川弘文館)

本書は主に弥生時代の顔の考古学ですが、縄文土偶のイレズミ線刻を立証している点で参考になります。

2 今後の学習

当座は土偶や縄文祭祀に関連する専門図書を入手して、基礎知識として学習することにします。

また博物館等で展示されている土偶の3Dモデルを作成して、観察することにします。

3 土偶に関する問題意識

学習の進展に従い土偶問題意識も変化すると思いますが、現在の土偶問題意識(興味)をメモしておきます。

・「その時期の社会に流布している神話に登場する神の姿を、妊娠女性に投影して(擬人化して)造形したものが土偶である」という想定の蓋然性。

・神話の内容を垣間見る手立てはないか。

・加曽利E式土器の頃、土偶がある社会とない社会の棲み分けが地理的に存在した。何故か。

・土偶祭祀と石棒祭祀はどのような関係になっているのか。

・土偶破壊行為の背後に生贄を必要とする社会風潮があったという想定の蓋然性。

・土偶文様に女神残酷殺害の意味が込められているという想定の蓋然性。

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