2019年3月10日日曜日

「加曽利E式土器展」(加曽利貝塚博物館企画展)の感想

縄文土器学習 63

加曽利貝塚博物館企画展「あれもE これもE -加曽利E式土器(千葉市内編)-」が3月3日に終了しました。この企画展には何度も足を運び、自分にとっての最初にして絶好の縄文土器学習の場となりましたので、そこで得た情報と感想をまとめておきます。
企画展「あれもE これもE -加曽利E式土器(千葉市内編)-」を開催された加曽利貝塚博物館に感謝します。

1 偶然、企画展を知る
2019.01.09記事「縄文土器学習の開始」で縄文土器学習の目的・項目・方法等を設定して学習をスタートしました。
学習方法として「千葉県出土全縄文土器形式の実見」を含めました。
この時のイメージでは草創期隆起線文土器から順次学習を進める予定でした。
ところが、偶然WEBニュースで加曽利貝塚博物館企画展「あれもE これもE -加曽利E式土器(千葉市内編)-」が開催されていることを知り、参考になるかもしれないと考え、出かけて観覧してみました。
観覧してみると自分の縄文土器形式学習の口火を切るに相応しい情報の宝庫であることに気が付き、隆起線文土器学習と併行して加曽利E式土器の学習を始めることにしました。
自分の縄文土器学習スタートと企画展開催時期が重なったことは誠に幸運な偶然となりました。
企画展に関連して佐藤洋先生、加納実先生、小澤政彦先生の講演を聞くことが出来たこともさらに幸運な学習出来事となりました。

2 企画展展示土器の様子

企画展展示土器38点の様子
企画展展示土器は加曽利EⅠ式→EⅡ式→EⅢ式→EⅣ式の順に37点が3つのショーケースに入れられて展示され、入口に「巨大土器」として加曽利EⅡ式土器1点が展示されていました。
ショーケース展示土器は時間順に並べられているので形式変化の様子がよくわかるようになっていました。

3 加曽利EⅠ式土器

加曽利EⅠ式土器5点の様子 (写真サイズは不定)
大把手が付いているものを含めて小突起を含めると全ての展示土器に把手が付いていました。獣面把手が付く勝坂式土器などの影響が残ると理解しました。
また土器底面の大きさが大きく、どっしりと平面に置くことができる感じがします。

4 加曽利EⅡ式土器

加曽利EⅡ式土器15点の様子 (写真サイズは不定)
加曽利E式土器を使う社会の最盛期にあたる時期の土器です。
口縁部に把手が付いたり波状になるものが少なく、多くの土器の口縁部が水平になります。
渦巻文と垂下磨消文が文様状の特徴です。

5 加曽利EⅢ式土器

加曽利EⅢ式土器10点の様子 (写真サイズは不定)
口縁部が波状になるものが多く口縁部と胴部の模様が融合します。この器形と模様変化は社会崩壊過程と関係するに違いないと考察しました。2019.02.27記事「加曽利EⅢ式区画文円文重層土器の観察と感想

6 加曽利EⅣ式土器

加曽利EⅣ式土器8点の様子 (写真サイズは不定)
器形が4単位波状口縁土器に収斂する様相のようです。
土器底面の大きさが異様に小さくなり、自立が困難のように観察できます。おそらく炉における設置具(廃土器リサイクル品)普及が伴ったと想像します。
小型土器展示が多く、展示が祭祀等が盛んになる社会状況を暗示しているようです。

7 トピックス
7-1 「蛇が尾を噛む」モチーフか?
「蛇が尾を噛む」モチーフ発見か、それともそれはガセネタになるのか、今後学習を楽しみます。

「蛇が尾を噛む」モチーフか?

7-2 三足土器は中国竜山文化の影響か?
加曽利EⅡ式台付土器No.17が三足土器であることは青森県今津遺跡や虚空蔵遺跡出土三足土器のように中国竜山文化の影響であるといえるのかどうか、今後学習を楽しみます。

加曽利EⅡ式台付土器 No.17
「千葉東南部ニュータウン19 -千葉市有吉北貝塚1(旧石器・縄文時代)-第3分冊(写真図版)」(平成10年3月、住宅・都市整備公団・財団法人千葉県文化財センター)から引用

7-3 器台の用途について
展示器台2点について所定の手続きを経て土器外面・内面を詳細に観察することができました。ガラス越し観覧ではわからない器台特徴を知ることができました。
その結果器台用途が液体を蒸発させ、植物の成分を気化させるなどの装置の一部であるという作業仮説の確からしさを強めることができました。
今後詳しく検討し、その結果をまとめたいと思います。

一般土器と器台の内面・外面対応関係の想定

7-4 縄文土器の3Dモデル作成
展示土器複数を多方面から撮影して3Dモデルを作成し、ガラス越し撮影による3Dモデル作成の限界を知ることができました。
360度からの撮影が可能な縄文土器3Dモデルは完成度の高い(満足できる)ものができます。(船橋市飛ノ台史跡公園博物館展示土器で試行)
ブログ「花見川流域を歩く番外編」2019.02.19記事「展示土器ガラス越し観察の技術限界

参考 船橋市海老ケ作貝塚出土獣面把手土器の3Dモデル画面
(船橋市飛ノ台史跡公園博物館展示土器)


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