加曽利貝塚博物館企画展「あれもE これもE -加曽利E式土器(千葉市内編)-」(3月3日まで開催)の展示土器38点の個別観察をメモしています。この記事では加曽利EⅢ式区画文円文重層土器No.20の観察をメモします。この土器から加曽利EⅢ式土器がはじまります。
1 加曽利EⅢ式区画文円文重層土器 No.20
加曽利EⅢ式区画文円文重層土器 No.20
井戸作南遺跡出土
加曽利EⅢ式区画文円文重層土器 No.20
井戸作南遺跡出土
(模様を見やすくするための別フィルター写真)
2 観察と感想
2-1 観察
・口唇部が波打ちEⅡ式に多かった平滑な口唇部ではなくなります。
・渦巻文が崩れて円文となり、円文と区画文が重層的に配置されます。口縁部下が波打つようになり胴部との境が不明瞭化します。
・垂下する磨消文が広くなります。
参考 企画展パンフレット抜粋
2-2 感想
・口唇部が波打つようになり、土器の見た目が派手になるように感じます。EⅡ式土器の平滑な口唇部は実用品としてのデザイン美を感じました。工業デザイン的美を感じました。ところがEⅢ式土器の見た目は波打つ曲線の存在により実用的要素を排除した一種芸術品的要素が強まったという感じを受けます。
・実用美から芸術美に変化する意味に関連すると考えられるEⅡ式社会→EⅢ式社会変化要素をピックアップしておきます。
ア 成長社会と崩壊社会(衰退社会)
イ 自然破壊社会と非自然破壊社会(自然破壊するだけの力を持てなかった社会)
ウ 伝統集落社会と外部勢力流入社会
エ 安定社会と不安定社会
オ 漁業重視社会と狩猟重視社会
カ 豊かな社会と貧しい社会
・これらの要素の違いによる世相・思考・感情等の違いと、EⅡ式期とEⅢ式期の土器デザインの違いは密接に関係していると推察します。
・一言でいうとEⅡ式期に人々は土器デザインに生活の自信と充実を表現しようとし、EⅢ式期の人々は生活の不安と貧しさを一時忘れることができる美を土器にもとめたのだと思います。
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