2019年2月24日日曜日

加曽利EⅡ式器台内面予備観察

縄文土器学習 43 加曽利貝塚博物館企画展展示土器の観察 21

加曽利貝塚博物館企画展「あれもE これもE -加曽利E式土器(千葉市内編)-」(3月3日まで開催)の展示土器38点の個別観察をメモしています。この記事では加曽利EⅡ式器台の内面予備調査結果をメモします。

1 器台用途に関する作業仮説
展示土器の中に2点の器台があります。

加曽利EⅡ式器台
当初器台とは土器を乗せる台だとばかり思いこんでいたのですが、観察と検討を加え、またTwitterにおけるお話なども参考に、突然次のような作業仮説を持つに至りました。
2019.02.20記事「加曽利EⅣ式器台の観察 香炉の可能性
2019.02.21記事「加曽利EⅡ式器台再観察及び器台と一般土器との関係考察

●器台用途に関する作業仮説
器台=あぶり器(=少量液体を火で気化させる装置)
器台の上に載せるモノ=発生気体吸引具(=底部穿孔土器)

器台の基本機能は火を利用した少量液体気化装置であり、器台の上に補助的器具を置いて発生気体の効果的吸引を行ったという作業仮説です。
補助的器具とは底部を失った(底部に穴を開けた)深鉢土器を上に載せ、それに蓋をして気体を閉じ込め濃縮し、器台と補助器具の接合部に開けた小さな孔からその気体を吸引するというイメージです。
器台とその上の補助的器具、両者の接合部を一体化した装置のフィギュア(模型)がいわゆる「異形土器」として加曽利貝塚博物館にそのレプリカ2台が展示されているようなものであると想像します。

加曽利貝塚博物館展示「異形土器」(展示物はレプリカ)
注)参照

このような作業仮説を検証していく一つの重要観察として、器台内部の状況把握が必要になります。器台内部が被熱していることが確認できれば、器台用途あぶり器仮説の確からしさが俄然高まります。

器台内部の観察は加曽利貝塚博物館の許可を得て3月上旬に実施することになりましたが、この記事ではその予備調査を行いましたのでメモします。

2 加曽利EⅡ式器台の内面写真撮影
器台上面の割れた部分から内面にピントを合わせた写真撮影に成功しました。

加曽利EⅡ式器台の内面写真

加曽利EⅡ式器台の内面写真 別フィルター

3 内面写真の分析

加曽利EⅡ式器台内面の分析

1 孔の内面側の面取の存在
6つ開いている孔と外面の接触部分には面取りが存在しますが、同じ面取りが孔と内面の接触部分に存在します。→内面も丁寧なつくりとなっています。決してぞんざいに扱っていません。

2 縄文はない
明瞭な縄文は存在しません。→観察できる範囲に明瞭な模様はないようです。

3 スス存在の可能性
・赤味がかった色が斜め方向に細長く分布します。土器作成の時指でこすって平滑になった部分ではないかと想像します。それ以外の黒っぽい部分はススではないかと想像します。指でこすって平滑になった部分のススは土器出土水洗いの際に失われ、それ以外の平滑ではない部分では微細な溝にススが残ったのではないかと想像します。→加熱によるススが残っている可能性があります。

4 灰あるいは破砕貝(漆喰)存在の可能性
・小白点集合模様が存在します。小白点は次の2つの可能性が考えられます。1灰あるいは破砕貝(漆喰)が土器表面の微細溝に挟まったもの。2出土土器を組み立てる時の接着剤等調整剤の残留物。
もし灰あるいは破砕貝(漆喰)が残留しているとすれば、器台の使い方のイメージがより明瞭になります。

5 原面剥離部の存在
器台原面(A)が剥離した部分(B)とそこからさらに剥離して新鮮な断面が観察できる部分(C)が存在します。Bの部分にはススが残っているように見え、剥離後も器台が加熱して使われたことを示しているように見えます。→剥離部が内面上部に存在することは、被熱した証拠の1つになると考えます。

4 本調査
加曽利EⅡ式器台予備調査の結果を踏まえて、加曽利EⅡ式器台と加曽利EⅣ式器台の内面調査を3月上旬に実施しその観察メモを後日記事にします。
内面調査を行うことにより器台用途に関する作業仮説の蓋然性を評価することができます。

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注 空想に空想を重ねれば加曽利貝塚博物館展示大小2点セット「異形土器」はあくまでもフィギュア(模型)土器であり、液体気化機能という実際機能を持たない祭具であったと考えます。
器台と底部穿孔土器とそれを繋ぐ藁等の植物により、液体気化・吸引・覚醒作用体験という実際活動があったと考えます。その実際活動をイメージして覚醒作用体験を呼び出すための祭具として「異形土器」2点セットが作られ、祭形式のなかで一つの式を執り行うための道具として使われたと想像します。
「異形土器」は覚醒作用疑似体験のアイコンであったということになります。

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追記 2019.02.25
・底部穿孔土器の例として加曽利EⅡ式連結渦巻文対向土器No.9をあげることができます。発掘調査報告書に底部欠損に関する記述があります。
2019.02.18記事「加曽利EⅡ式連結渦巻文対向土器の観察」参照

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追記 2019.02.26
・空想につぐ空想ですが、加曽利貝塚出土異形土器は2点セットでその大きさが大小となっています。夫婦のような印象を受けます。他の遺跡でも2点セットで出土していて、形状が微妙に異なります。(鶴川遺跡群J地点)
・「異形土器」が覚醒作用疑似体験のアイコン(イコン)であるとすれば、大きい方の「異形土器」は死んだ父や祖父と話す時の道具、小さいほうは死んだ母や祖母と話す時の道具かもしれません。

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