2021年1月11日月曜日

有吉北貝塚 出土土器の学習

縄文社会消長分析学習 72

有吉北貝塚の発掘調査報告書掲載情報を材料に分析的学習をはじめています。遺跡の概要がある程度わかってきたので、そろそろ各論詳細学習にはいります。手始めに出土土器の学習を行います。

1 学習対象とする土器型式

有吉北貝塚で出土する主な土器型式は阿玉台式、中峠式、加曽利EⅠ式、加曽利EⅡ式、加曽利EⅢ式であることから、これらを対象に出土遺物について学習します。


有吉北貝塚 中期 土器分類別竪穴住居数

2 南斜面貝層及び北斜面貝層出土土器実測図一覧の作成

発掘調査報告書では南斜面貝層及び北斜面貝層の出土土器が分類群別に整理されて実測図が掲載説明されています。そこで、その実測図を全部コピーして一覧を作成し、パソコンの画面で拡大等いじりながら学習できる環境を作りました。


南斜面貝層 出土土器実測図一覧


北斜面貝層 出土土器実測図一覧 1


北斜面貝層 出土土器実測図一覧 2

阿玉台式土器、中峠式土器、加曽利EⅠ式土器の学習は主に南斜面貝層資料を使って行います。

加曽利EⅡ式土器、連弧文系土器、加曽利EⅢ式土器の学習は主に北斜面貝層資料を使って行います。

発掘調査報告書における土器個別記載を理解し、土器片からその土器全体像を想像できるようになることをめざします。

3 加曽利EⅠ式土器資料の少なさについて

竪穴住居軒数を見ると第7段階(加曽利EⅠ式)がピークになっています。ところが南斜面貝層の加曽利EⅠ式土器出土量は中峠式土器に及びません。北斜面貝層は第9段階(加曽利EⅡ式期)以降に形成されたものであり、加曽利EⅠ式土器は少なくなっています。要するに二つの斜面貝層からの加曽利EⅠ式土器出土量が異状に少ないことが判明します。

今後この理由について詳しく検討しますが、おそらく保存区域に存在する北東斜面貝層(ごく一部の区域外について発掘)が加曽利EⅠ式期のメインの貝層であった可能性があります。

それが蓋然性の高い考え方であるとすれば、竪穴住居数の多いメインと言える3つの土器型式(中峠式、加曽利EⅠ式、加曽利EⅡ式)毎に順次利用貝層を新たに設定していることになります。過去の貝層を捨て、新しい貝層を設定し使うという集落の文化社会的画期と土器型式変更という画期が対応することは、縄文社会消長分析学習における大変興味深い検討対象です。

4 参考 土器型式別竪穴住居の分布


阿玉台式期(第2~5群)の竪穴住居


中峠式期(第6群)の竪穴住居

南斜面貝層を利用


加曽利EⅠ式期(第7、8群)の竪穴住居


加曽利EⅡ~Ⅲ式期(第9~12群)の竪穴住居

北斜面貝層を利用

 

0 件のコメント:

コメントを投稿