花見川流域の小崖地形 その24
1 花島断層の水平移動成分
花島小崖という地形名称はその小崖をつくった断層運動の垂直成分に着目した地物の捉え方です。
花島小崖をつくった断層運動(花島断層)は垂直成分だけであるという保証は最初からありませんから、水平移動成分がどの程度あるのか検討してみました。
次の図は花島小崖、下総上位面を削る印旛沼水系谷津(いづれも浅い谷)、東京湾水系谷津(深い侵蝕谷)を示したものです。
花島小崖及び谷津の分布
基図は旧版1万分の1地形図(大正6年測量)
この分布図を仔細に観察し、また米軍空中写真(昭和24年撮影)を実体視して確認して、次のような谷筋のズレが小崖地形(断層線)に沿って存在していることに気がつきました。
花島断層の水平移動成分の検討
基図は旧版1万分の1地形図(大正6年測量)
この図のうち、5と6は東京湾水系谷津が印旛沼水系谷津を河道逆行争奪しているという前提で検討しています。
1~8の谷津地形のズレのうち、その形状が明瞭であると考える3、4、7、8についてその移動距離の平均を求めると約130mとなりました。
印旛沼水系谷津は何れも浅い谷であり、一般人がこれを谷地形として認識することはまずないので、誰からも見過ごされてきましたが、花島断層の水平移動成分は約130mあるのです。
この図の基図を現在の標準地図に置き換えて、谷津筋のズレ情報と現在の場所との対比ができるようにすると、次の図になります。
花島断層の水平移動成分の検討
基図は現代標準地図(電子国土ポータルによる)
約130mの水平移動が一瞬で行われたということは考えられないので、この断層は長期間にわたって活動してきたことは確実です。
2 参考 柏井断層の水平移動成分
次の図は芦太川筋が柏井断層(柏井小崖をつくった断層)によってズレた(水平移動した)ことを示す地図です。
参考 柏井断層の水平移動成分の検討
基図は旧版1万分の1地形図(大正6年測量)
芦太川筋は約150mのズレが見られます。
この柏井断層による水平移動と花島断層による水平移動を一緒に考えると、その二つの断層にはさまれた地殻ブロックが(相対的に)東方向に130m~150m移動したと考えることが出来ます。
花島断層と柏井断層に挟まれた地殻ブロックの水平運動イメージ
つづく
海老川(Ebigawa) 乱歩(Ranpo) です。
返信削除いやーこの発見は素晴らしいです。
小生もこの領域の、Google map や、国土地理院の空中写真を見ても発見できなかったので、
クーラーさんの地道な調査の成果だと思います。
しかし、このまま素通りはできません。
「2012年7月14日土曜日」の記事で芦太川のずれの距離は、約50m前後のはずです。
この記事では、柏井断層の水平移動成分は、芦太川筋では約150mのズレと記述しています。
この違いの検証は省略すべきではないと思います。
ずれが、約50mから約150mになった原因を説明して頂けないでしょうか。
お願い致します。
海老川乱歩さん
返信削除コメントありがとうございます。
海老川乱歩さんが発見した芦太川のズレを、その時は50mと測りました。水路のズレを測ったのです。
しかし、水路は谷津内で時代時代によってその位置が変わるものであり、地殻のズレを知ろうとする時、正確な指標になりません。
正確に測ろうとすれば、谷地形でなければならないということに気がつきました。
2012年7月14日記事「海老川乱歩さんの大発見(!)」は訂正します。
それにしても、海老川乱歩さんの大発見が起爆剤となり、次々に地形発見として波及しています。
海老川乱歩さんが最初に指摘した芦太川谷津のズレの計測方法について、記事にする予定です。
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