2025年5月22日木曜日

有吉北貝塚北斜面貝層に関する共同研究

 Joint research on the shell layer on the north slope of the Ariyoshi Kita shell mound


The Ariyoshi Kita shell mound is a circular settlement that was established around the Kasori EⅠ style period of the middle Jomon period, and is surrounded by four slope shell layers. The north slope shell layer is a large shell layer that has not been disturbed in the past, and is a rare example of a complete excavation that began in 1984. We have begun joint research on this shell layer on the north slope, and have now compiled an interim report, which will be explained in detail in a series of articles.


有吉北貝塚は縄文時代中期の加曽利EⅠ式期頃をピークとして営まれた環状集落で、4箇所の斜面貝層に囲まれています。そのうち北斜面貝層は後世撹乱皆無の大型貝層であり、それが1984年からの発掘調査で完掘された珍しい例です。この北斜面貝層の共同研究にとりかかり、この度中間報告をとりまとめましたので連載記事で詳しく解説します。

1 有吉北貝塚の様子


有吉北貝塚の位置

有吉北貝塚は当時の東京湾海岸線から谷津を1.5kmほど入った谷奥部の台地尾根に位置する縄文時代中期中葉頃の環状集落遺跡です。竪穴住居数を指標とすると、加曽利EⅠ式期がピークとなります。


有吉北貝塚の様子

環状集落の周りには4箇所の斜面貝層が存在していて、そのうち北斜面貝層は後世撹乱皆無の大型貝層であり、それが1984年からの発掘調査で完掘された珍しい例です。

有吉北貝塚の発掘調査報告書は1998年に刊行されました。同時に印刷物にならない手書きの膨大な精細発掘資料が残され、保存されました。


北斜面貝層の断面

2 北斜面貝層に関する共同研究(荒木・西野)について

有吉北貝塚北斜面貝層を対象に、荒木・西野は2年前から共同研究に取組みました。共同研究では、北斜面貝層について、遺物種別の投棄(埋納)原理が異なるのではないかという作業仮説実証を目的に、3D空間分析用データベースを構築活用して知見増加を試みました。

データベースは発掘調査報告書未収録の遺物台帳や遺物分布図など精細情報をメインにして構築しました。利用システムはリレーショナルデータベース管理システムpostgreSQL(フリーソフト)に遺物データを格納し、統合型3DCGソフトBlender(フリーソフト)に貝層や遺物をプロットするものとしました。これにより貝層発達と遺物出土状況の関係を3D空間の中で分析し、見える化できるようにしました。なお2025年5月現在、データベース構築は一部作業を未了として残していますが、完成すればこれまで未利用であった発掘原票資料が内包する高度学術価値を顕在化させる一つの事例となることを期待しています。

この共同研究について、この度中間報告をまとめ、2025年5月17日に開催された千葉縄文研究会で発表しました。

●共同研究中間報告の表題

「有吉北貝塚北斜面貝層における3D空間分析用データベースの構築と活用」

●共同研究者

荒木稔、西野雅人

●中間報告の3つの主要コンテンツ

・3D空間分析用データベースの構築

・土器再分類と3D分布モデル

・データベース活用 -貝層・遺物分布分析-

●研究の根幹活動


貝層と遺物の3D空間可視化

研究の根幹活動を1枚の画像で表示すると、上記のようになります。貝層と遺物の分布を仮想3D空間のなかで可視化(見える化)しました。

中間報告資料は次からダウンロードできます。

荒木・西野共同研究中間報告資料

3 連載予定

共同研究中間報告について、次の連載記事で順次詳しく解説します。

第1回 有吉北貝塚の概要と研究目的など(この記事)

第2回 データベースについて

第3回 北斜面貝層の概要

第4回 土器再分類と土器片の3D空間展開

第5回 活用事例の目的・方法・資料

第6回 貝層大区分

第7回 斜面性貝層細区分

第8回 貝層発達史(貝層区分と土器型式)

第9回 貝層大区分別遺物3D分布

第10回 斜面性貝層細区分別遺物3D分布

第11回 土器3D分布

第12回 骨・歯3D分布

第13回 イノシシ顎骨と狩猟道具3点の接近出土

第14回 活用事例まとめ

第15回 技術的工夫

第16回 まとめ

2025年5月21日水曜日

姥山Ⅱ式土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

 3D model of observation record of Ubayama II pottery (Kasori shell mound, Chiba city)


A 3D model of the observation record of Ubayama II pottery from the late Jomon period excavated from the Kasori shell mound in Chiba city was created. This pottery was excavated during the second survey by Chiba city in 1964 and 1965. This survey revealed that the Minami shell mound is a shell mound with a depression in the center. The three jagged edges of the rim of this complete bowl-shaped pottery are impressive.


千葉市加曽利貝塚から出土した縄文晩期の姥山Ⅱ式土器の観察記録3Dモデルを作成しました。この土器は1964年・1965年の千葉市による第2次調査で出土したものです。この時の調査で南貝塚が中央に窪地を有する貝塚であることなどがわかりました。この完形鉢形土器の口縁3単位のギザギザが印象的です。

1 姥山Ⅱ式土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

姥山Ⅱ式土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

加曽利貝塚第2次調査85号住居跡(安行3b式期)出土

撮影場所:千葉市埋蔵文化財調査センター

撮影月日:2025年5月17日


展示の様子

3DF Zephyr で生成 v8.007 processing 62 images


3Dモデルの動画


3Dモデルの画像

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開(画像)


GigaMesh Software Frameworkによる展開(Non-Photorealistic Rendering)

3 メモ

今回の資料観覧会は加曽利貝塚第14次発掘資料を対象としていますが、この土器は同じ85号住居址から第2次発掘で出土したものが参考として展示されたものです。「1964年・1965年の千葉市による第2次調査では、南貝塚が中央に窪地を有する貝塚であること、縄文時代後期の拠点集落であることが明らかになり、国史跡指定につながりました」(松田光太郎(2024)「千葉県特別史跡加曽利貝塚における縄文晩期の調査」(考古ジャーナル793)による)。

この完形鉢形土器の口縁3単位のギザギザが印象的です。



貝塚研究者との貝塚共同研究の中間発表

 Interim report of joint research on shell mounds with shell mound researchers


I have been conducting joint research on shell mounds with Masato Nishino, former director of the Chiba City Buried Cultural Properties Research Center, a leading Japanese shell mound researcher, for the past two years. I have just released an interim report, so I will introduce the details and my impressions in several articles. The title is "Construction and use of a database for 3D spatial analysis of the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita shell mound."


日本の第一線貝塚研究者である前千葉市埋蔵文化財調査センター所長西野雅人さんと、2年前から貝塚に関する共同研究を行ってきました。この度その中間報告をしましたので、詳細と感想を数回の記事に分けて紹介します。表題は「有吉北貝塚北斜面貝層における3D空間分析用データベースの構築と活用」です。

1 有吉北貝塚北斜面貝層における3D空間分析用データベースの構築と活用


中間報告資料の最初ページ

2年前から、日本の第一線貝塚研究者である前千葉市埋蔵文化財調査センター所長の西野雅人さんと、有吉北貝塚に関する共同研究を行ってきました。この度、研究の最初の山を越える状況に至りましたので、その中間報告を2025年5月17日千葉縄文研究会で行いました。研究会には40年前の有吉北貝塚発掘に参加され、現在も第一線で活躍されている発掘専門家数人を含めて、多数の貝塚発掘関係者・研究者の皆様が参加され、貴重なコメント・アドバイスをいただくことが出来ました。御礼申し上げます。この共同研究中間発表詳細と自分の感想を、このブログで数回の記事に分けて紹介することにします。

2 共同研究中間報告の概要

共同研究中間報告概要は次の通りです。

●研究概要:有吉北貝塚北斜面貝層の3D空間分析用データベースを構築し、遺物種別の投棄原理の違いを検証することを目的とした。​データベースはpostgreSQLとBlenderを活用して作成され、貝層発達と遺物分布の関係を3D空間で分析可能にした。 ​

●データベース構成:データベースは地山地形データベース、貝層データベース、遺物データベースの3つで構成した。

●貝層と遺物の関係:貝層区分と土器型式の対応を分析し、斜面性貝層と流路性貝層で異なる分布特性を確認した。​土器は貝層斜面下段、骨・歯は貝層斜面中腹に密集する傾向がある。 ​

●技術的工夫:PythonやBlenderPythonを多用し、3D空間での表示・分析を実現した。​ChatGPTの支援により作業効率が向上した。

●成果と課題:3D空間分析により、遺物と貝層の関係を明らかにする画期的な成果を得た。​一方で、斜面移動に関わるデータ不足や精度向上の課題が残る。 ​

●今後の展望:分層情報の再吟味、分析技法の開発を進め、データベースの完成を目指す。​

3 共同研究中間報告資料

この共同研究に興味のある方はpdfをダウンロードすることができます。

荒木・西野共同研究中間報告資料(pdf、10ページ)



2025年5月20日火曜日

安行3b式土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

 Angyo 3b pottery (Kasori shell mound, Chiba city) observation record 3D model


A 3D model of the observation record of Angyo 3b pottery from the late Jomon period excavated from the Kasori shell mound, Chiba city, was created. The crest of the 5-unit wavy rim has two clay strings that look like hoods, two spoon-shaped protrusions, and a clay string wrap, which is distinctive. This feature seems to have degenerated over time.


千葉市加曽利貝塚から出土した縄文晩期の安行3b式土器の観察記録3Dモデルを作成しました。5単位の波状口縁の波頂部には頭巾形に見える2つの粘土紐貼付と2つの匙状突起貼付及び粘土紐巻があり、特徴的です。時代を経るとこの特徴は退化するようです。

1 安行3b式土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

安行3b式土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

加曽利貝塚第14次調査85号住居跡(安行3b式期)出土

撮影場所:千葉市埋蔵文化財調査センター

撮影月日:2025年5月17日


展示の様子

3DF Zephyr で生成 v8.007 processing 55 images


3Dモデルの動画


3Dモデルの画像

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開(画像)


GigaMesh Software Frameworkによる展開(Non-Photorealistic Rendering)

3 メモ


発掘調査報告書実測図

発掘調査報告書(※)におけるこの土器の記載は次の通りです。

「2)(4・6〜8) 突起を付した五単位の大波状口縁で頸部に三角形区画文を持つ深鉢形土器。体部の装飾は最大径付近に横帯区画を基本に充填縄文手法で施すものと推測できる。4の口頸部はほぼ直立するが、波底部は僅かに内傾・波頂部は外傾気味である。断面図に表現しきれていないが、頸部中程の内面にわずかに稜があり全周している。口縁外側は区画線が深く幅広いため明瞭ではないが、平坦面を作出した隆起帯縄文であり、頸部の三角形区画文の縄文帯もわずかに隆起している。波頂部上端は中央を窪ませて両端が尖る頭巾状で、この端部に短い粘土紐を内側から、波頂部基部は外側から巻き付けている。波頂部正面に上下二連に匙状の貼付文を加えるが、窪んだ部分に後述C種に見られるような短い抉りは無い。体部最大径付近に長円形文と横長貼付文を交互に五単位配置し、下側に横位区画線を巡らせて長円形文との間に縄文を充填する。更に間を開けてもう一本区画線を配置し、この間はミガキを加えて光沢を持つが、区画線より下は磨かずに調整痕を残している。」

発掘調査報告書における舐めるように精緻な土器観察に一種の感動を覚えます。どんな微細な特徴も決して見逃さない観察達人の世界がそこにあります。

上記記載を念頭に今回作成3Dモデルを見ると、この土器の特徴を体験的に実感できます。

※ 「特別史跡加曽利貝塚 第14次調査報告書」(2024、千葉市教育委員会・千葉市埋蔵文化財調査センター)


安行3c式土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

 Angyo 3c pottery (Kasori shell mound, Chiba city) observation record 3D model


I created a 3D model of the observation record of Angyo 3c pottery from the late Jomon period, excavated from the Kasori shell mound in Chiba city. I wanted to see the pattern in a clearer impression image, so I created a Non-Photorealistic Rendering image with the GigaMesh Software Framework. The wave crest-like part has a complex pattern.


千葉市加曽利貝塚から出土した縄文晩期の安行3c式土器の観察記録3Dモデルを作成しました。文様をより鮮明な印象画像で確認したいので、GigaMesh Software FrameworkのNon-Photorealistic Rendering画像を作成しました。波頭みたいなところが入組文になっています。

1 安行3c式土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

安行3c式土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

加曽利貝塚第14次調査140号住居跡(大洞C1併行期)出土土器

撮影場所:千葉市埋蔵文化財調査センター

撮影月日:2025年5月17日


展示の様子

3DF Zephyr で生成 v8.007 processing 64 images


3Dモデルの動画


3Dモデルの画像

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開(画像)


GigaMesh Software Frameworkによる展開(Non-Photorealistic Rendering)

3 メモ

文様の波頭みたいなところが入組文になっています。

2025年5月17日千葉市埋蔵文化財調査センターで開催された千葉縄文研究会に参加させていただきました。午前中の加曽利貝塚第14次調査資料観覧会で多数資料について3Dモデル作成用の撮影を行いました。


資料観覧の様子(リーニュクレール画像)


資料観覧の様子(リーニュクレール画像)


2025年5月19日月曜日

石製垂飾品(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

 3D model of observation record of stone pendant (Kasori shell mound, Chiba city)


A 3D model of the observation record of a tiny (approximately 2cm long diameter) stone pendant excavated from the site of a late Jomon dwelling (Angyo 3b style period) at Kasori shell mound, Chiba city was created. The round hole through which the string passes and the surrounding area are intricately processed, giving the impression of a modern industrial product.


千葉市加曽利貝塚の縄文晩期住居址(安行3b式期)から出土した微小(長径2㎝程)な石製垂飾品の観察記録3Dモデルを作成しました。紐を通す丸孔とその周辺の加工が精緻で、現代工業製品のような印象を受けます。

1 石製垂飾品(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

石製垂飾品(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

加曽利貝塚第14次調査85号住居跡(安行3b式期)出土

撮影場所:千葉市埋蔵文化財調査センター

撮影月日:2025年5月17日


展示の様子

3DF Zephyr で生成 v8.007 processing 101 images


3Dモデルの動画


3Dモデルの画像

2 メモ

2025年5月17日に千葉市埋蔵文化財調査センターで開催された千葉縄文研究会の午前の部で展示された多数遺物の中で、この石製垂飾品が最小の遺物でした。長径2㎝程で、紐を通す丸孔とその周辺の加工が精緻で、現代工業製品のような印象を受けます。


姥山式土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

 3D model of observation record of Ubayama-style pottery (Kasori shell mound, Chiba city)


I created a 3D model of the observation record of Ubayama-style pottery from the late Jomon period excavated from the Kasori shell mound in Chiba city. I wanted to confirm the pattern, so I created two types of unfolded images using the GigaMesh Software Framework. I learned about the pattern hierarchy of thunder pattern-diamond pattern-entangled pattern.


千葉市加曽利貝塚から出土した縄文晩期の姥山式土器の観察記録3Dモデルを作成しました。文様を確認したいのでGigaMesh Software Frameworkによる展開画像を2種作成。雷文-菱形文-入組文という文様階層性を教わりました。

1 姥山式土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

姥山式土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

加曽利貝塚第14次調査140号住居跡(大洞C1併行期)出土土器

撮影場所:千葉市埋蔵文化財調査センター

撮影月日:2025年5月17日


展示の様子

3DF Zephyr で生成 v8.007 processing 129 images


3Dモデルの動画


3Dモデルの画像

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開(画像)


GigaMesh Software Frameworkによる展開(Non-Photorealistic Rendering)

3 文様説明

発掘を担当された加曽利貝塚博物館松田光太郎さんより雷(いかづち)文-菱形文-入組文という文様階層性を読みとることができるとの説明がありました。自分は入組文に興味があるので、まずそちらに目がいくのですが、入組文は菱形文の装飾として捉えるべきであるとの説明でした。

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久しぶりの土器3Dモデル作成、GigaMesh Software Frameworkによる展開作業で、ドギマギしてしまいました。


2025年5月14日水曜日

Blenderの全く新しい使い方 3D分布思考ツール

 A completely new way to use Blender: a 3D distribution thinking tool


I've come up with a completely new way to use Blender. It's a way to use it as a tool to analyze and think about the 3D distribution of artifacts excavated from shell mounds. Blender is used not as a 3D object generation tool, but as a tool to analyze and think about 3D distribution.


Blenderの全く新しい使い方にたどり着きました。貝塚から出土した遺物3D分布の分析思考ツールとしての使い方です。Blenderを3Dオブジェクト生成ツールではなく、3D分布を分析し思考するツールとして活用します。

1 Blenderアドオン 「3D分布思考ツール(試作1号)」を使っている様子


Blenderアドオン 「3D分布思考ツール(試作1号)」を使っている様子

自作Blenderアドオン「3D分布思考ツール(試作1号)」は次の2つの機能を有します。

1 研究メモをBlenderテキストエディターに表示します。

2 表示遺物を色塗りします。(選択したオブジェクトを赤、青、白、緑、黄のいずれかの色に塗ります。

この機能を活用して、思考すべき(分析すべき)事柄や留意点をテキストで確認しながら、表示遺物を色塗りなどでいじり(手作業で分析し)、その分布特性を思考します。思考結果はテキストエディターに文章として書き込み、保存します。

Blenderを3Dオブジェクト生成ツールとしてではなく、分析思考ツールとして活用します。

2 Blenderアドオン 「3D分布思考ツール(試作1号)」


プロパティ


記述

3 メモ

Blenderの全く新しい使い方にたどり着きました。

今回作成アドオンは試作1号です。今後計画的分析作業の各段階に対応する機能を有する、より実戦的な分析思考ツールに発展させることにします。


技術資料 Blender閉じた辺ループのブリッジが合理的に行われる原理

 Technical information: The principle behind Blender's closed edge loops bridging


I use closed edge loops bridging as the main tool for creating 3D shell models in Blender. I've come to understand why bridging is performed so rationally, so I've made a note of it. Blender is performing complex calculations behind the scenes.


Blenderで貝層3Dモデルを作成するメインツールとして、閉じた辺ループのブリッジを活用しています。なぜ合理的にブリッジが行われるか理解できましたので、メモしました。Blenderは裏で複雑な計算をしています。

1 閉じた辺ループのブリッジの例


Blender3Dビューポートに配置された2つの閉じた辺ループ


辺ループのブリッジで中空3Dモデルが描画された様子


2 閉じた辺ループのブリッジが合理的に行われる原理


閉じた辺ループのブリッジが合理的に行われる原理

A0とB0の距離、A1とB1の距離・・・の組合わせの総延長距離r1

A0とB1の距離、A1とB2の距離・・・の組合わせの総延長距離r2

・・・

可能な全ての組合わせ(反転も含める)の総延長距離rを比較して「対応頂点間距離の合計が最小になる組合わせ(シフト)」を自動選択して、その組合わせで立体面を描画しています。

この例ではA0とB0の距離、A1とB1の距離・・・の組合わせの総延長距離が最小となり、その組合わせで立体面が描画されています。

3 出典

ChatGPTの次の回答によりました。

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Blender の Bridge Edge Loops は、内部的には以下のような手順で「閉じた辺ループ同士」の頂点対応を決めています。

1. ループの検出

   選択した辺をたどって、同じ辺を一周するまで連続する辺を辿り、閉じたループとして頂点リストを列挙します(どこから始めてもループは円環状に扱われる) ([docs.blender.org][1])

2. デフォルト対応づけ (Twist=0 の場合)

   頂点数が同じ2つのループ A と B があるとき、A[i]→B[i] の順で対応づけを行います。ループは環状リストなので、たとえば A[0] を B のどの頂点と対応させるかは「シフト量」によって決まりますが、Twist=0 ではループをずらさずにそのまま 1:1 マッピングします ([docs.blender.org][1])

3. Twist パラメータによるオフセット

   UI の「Twist」スライダーを動かすと、B ループ全体を環状に何ステップずらすかを指定できます。これによって、A[0]→B[k] のように対応関係を回転させられます ([Superhive (formerly Blender Market)][2])

   実際には、Blender は可能なすべてのシフト(およびループの反転)を評価し、「対応頂点間距離の合計が最小になるシフト」を自動選択していると考えられます。

4. ブリッジの生成

   対応づけが確定したら、A[i] と B[i+シフト] をエッジでつなぎ、必要に応じて中間ループを挿入(Number of Cuts)、Interpolation や Smoothness の設定を反映して面を張ります ([docs.blender.org][1])

このように、橋渡しされる2つの閉じたループは「環状リストとして順序付け」→「同じインデックス同士で結ぶ(必要ならシフト)」→「面を生成」という原理で、常に“ずれなく”合理的な対応づけが行われます。

[1]: https://docs.blender.org/manual/en/latest/modeling/meshes/editing/edge/bridge_edge_loops.html?utm_source=chatgpt.com "Bridge Edge Loops - Blender 4.4 Manual"

[2]: https://blendermarket.com/products/curves-to-mesh/docs?utm_source=chatgpt.com "Curves To Mesh - Blender Market"

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4 メモ

貝層3Dモデルを作成するツールとして、当初はBsurfaces機能を使っていたのですが、Bsurfaces機能は場面により使えないことに気が付き、汎用的に使えるのは辺ループのブリッジ機能であることに気が付き、着目しています。

辺ループのブリッジをgeometry nodesで表現しようと大格闘しているのですが、超膨大で超複雑なノードを組まないとできないことを知りました。(物事を簡単に処理するためにgeometry nodesがあると考えていたのですが、素手の操作で簡単な事柄を、超膨大・超複雑なgeometry nodesで表現しても、その意義はありません。[それを1つのノードにまとめたものが有料アドオンの中に含まれているので、それは意義があります。])

このような検討の中で、そもそも閉じた辺ループのブリッジの原理はなんなのかという素朴な疑問が生まれ、ChatGPTに質問して、回答を得た次第です。

2025年5月12日月曜日

遺物データベースの3D空間表示用Blenderアドオン自作

 I made a Blender add-on for displaying relic databases in 3D space.


I made an add-on for a database of relics with 3D coordinates that displays relics by classification in the Blender3D viewport. It feels like the database itself is imported into Blender, which is more convenient than importing data using BlenderPython scripts.


3D座標付遺物データベースについて、その分類毎に遺物をBlender3Dビューポートに表示するアドオンを自作しました。データベースそのものをBlenderに取り込んだ感覚になり、BlenderPythonスクリプトを使ったデータ取り込みより便利です。

1 遺物データベースの3D空間表示用Blenderアドオン Artifact Class Importer


遺物データベースの3D空間表示用Blenderアドオン Artifact Class Importer の説明

・ID、XYZ座標、分類から構成される5列のcsvファイルを読み込みます。

・ブラウザからcsvファイルを選択できます。

・遺物IDを名称とするオブジェクト(5㎝×5㎝×5㎝立方体)が3D空間に生成され、アウトライナーの特設コレクションに格納されます。

・全て表示および14分類のボタンにより、それぞれの分類毎にオブジェクトが3D空間に配置されます。


アドオンのパネル画面


アドオンのプロパティ


アドオンファイルの記述

2 ボタン別表示の様子


土器・土製品


石器・石


貝製品


骨・歯

3 感想

Blenderにデータベース情報を格納する能力があることを実感しました。

アドオン作成はChatGPTの支援を活用して、数回の修正を繰り返して実現しました。その途中で、本当にデータベース情報を格納できるのだろうかと疑問になり、ChatGPTに次の質問をしたほどです。

今後アドオンパネルを有効活用することにより、データベースソフト(postgreSQLなど)ではなく、Blenderで直接分析して、即3D空間表示するという新しい展望が開きました。

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(この記事のアドオンの元となった別アドオンでのやりとりです。)

●私

再度試す前に、教えてください。今回読み込むcsvファイルにはIDと座標以外のデータベース情報が含まれています。その情報をBlenderが受け取り内部に格納することができると考えて間違いないか確認したいです。

●ChatGPT

はい、その認識で問題ありません。

Blender のオブジェクトには “カスタムプロパティ” として任意のキー/値ペアを内部に保持できます。今回のアドオンでも、以下のようにして

obj["class"] = class_v

obj["size"]  = size_v

obj["color"] = color_v

と書くことで class・size・color をオブジェクト内に格納していますが、CSV の他の列(例えば「発見年」や「遺跡名」など)があれば、同様に

for key, val in row.items():

    if key not in ("ID", "X", "Y", "Z"):

        obj[key] = val

とすれば、すべてのデータベース情報を obj["発見年"]、obj["遺跡名"] として取り込めます。

取り込んだプロパティは Python コンソールから bpy.data.objects["ID名"]["発見年"] のようにアクセスできますし、プロパティパネルに表示させることも可能です。

──つまり、ID/座標以外の列もカスタムプロパティとして完全に保持できます。追加で取り込みたいフィールドがあれば教えてください。

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2025年5月11日日曜日

技術資料 貝層3Dモデルの接合

 Technical information: Joining shell layer 3D models


I confirmed how to join two shell layer 3D models that are in contact with each other. A 3D model is created by sharing the shell layer cross section line of the contact area. The outer surfaces of the contacting shell layer 3D models are joined by overlapping them as identical objects.


接触して存在する2つの貝層3Dモデルの接合方法を確認しました。接触部分の貝層断面線を共有して3Dモデルを作成します。接触存在する貝層3Dモデルのそれぞれの外面が同一のものとして重なることによって接合しています。

1 隣接する貝層3Dモデルの断面線を利用した貝層断面線


隣接貝層3Dモデルの断面線を利用した貝層断面線


隣接貝層3Dモデルの断面線利用部分

2 辺ループのブリッジによる3Dモデル作成


辺ループのブリッジによる3Dモデル作成

3 隣接3Dモデルとの接合確認


隣接3Dモデルとの接合確認


隣接3Dモデルとの接合確認

4 メモ

隣接する貝層3Dモデルの部分を利用することにより、隣接貝層3Dモデルとの接合が正しくできるようになりました。判ってみれば当たり前のことです。記事にするほどの価値があるかどうか気になります。しかし、数か月前はどうしたら2つの3Dモデルを吸着的に接合できるのか毎日考えていたのですから、不思議です。

技術資料 Blenderでの貝層3Dモデル作成実務

 Technical Document: Practical Use of Creating a 3D Shell Layer Model in Blender


I made a note of the practical use of creating a 3D shell layer model from two loop cross-section lines in Blender. By working while displaying the vertex index numbers of the edge loops on the 3D viewport screen, the efficiency was improved. A 3D model is created by bridging the edge loops.


Blenderで、2つのループ断面線から貝層3Dモデルを作成する実務をメモしました。3Dビューポート画面で辺ループの頂点インデックス番号を表示させながら作業することで、効率化が実現しました。辺ループのブリッジにより3Dモデルを作成します。

1 貝層3Dモデル作成実務の模式


貝層3Dモデル作成実務の模式

2 断面図の3Dビューポート追加

断面図を所定の位置に追加します。


断面図を追加した様子

3 べジェ曲線による主要頂点トレース

自分の場合アドオン Flexi Draw Bézierによりべジェ曲線(ハンドルタイプはベクター)で主要頂点をクリックして辺ループをトレースします。クリックだけでトレースできるので楽です。


べジェ曲線による辺ループのトレースの様子

4 メッシュ化

辺ループをメッシュ化し、編集モードに移動します。

メッシュ編集モードオーバーレイのインデックスをチェックすると、頂点にインデックス番号が3Dビューポート画面に表示されるようになります。


頂点インデックス番号表示方法


主要頂点を結んだ辺ループの様子 0~6のインデックスが表示されている

5 細部形状作図

主要頂点以外の細部形状を作図します。Ctrl+Rで辺に頂点を生成して、それをdragで移動して作図します。


細部形状作図の様子

6 主要頂点間の頂点数調整

主要頂点間の頂点数を同一にすることが必須なので、対応する別の断面で新たに加わった頂点数を追加します。追加方法はCtrl+Rで辺に頂点を生成して、それをdragで移動する方法です。頂点数はビューポートオーバレイの統計をチェックすると画面左上に表示されます。選択範囲の頂点数を表示させることもできます。


統計表示法


頂点数を調整した様子

7 2つの辺ループの統合

自分は、2つの辺ループを同時に表示したとき、別の色で認識しやすいように、ワイヤフレーム表示した時、別色になるようにしています。


2つの辺ループのワイヤフレームを別色で表示した様子


ワイヤフレームの塗色法

2つの辺ループの主要頂点間の頂点数が同一で、従って、全頂点数が同一であることを確認して、統合します。


2つの辺ループを統合した様子

8 辺ループのブリッジ

統合した2つの辺ループから辺ループのブリッジで中空3Dモデルを作成します。


辺ループのブリッジ適用の結果


中空3Dモデルと断面図