2019年12月31日火曜日

2019年の趣味活動をふりかえる

2019年の大晦日となりました。
多くの皆様のおかでげこの1年間も趣味活動を大いに発展させ楽しむことができました。
心からお礼申し上げます。
この記事では2019年の趣味活動で印象に残った多くの事柄の中から、特別に大切な事柄に的を絞ってふりかえってみます。

1 縄文土器学習の開始
2018年までの活動で縄文土器学習の必要性について痛感していました。そうした中で、自分から見ると偶然ですが、加曽利貝塚博物館の企画展(「あれもE これもE -加曽利E式土器(千葉市内編)-」)と関連連続講演会に遭遇して効率的でかつ勢いのある学習をスタートできました。

平成30年度企画展
企画展には何度も足を運び加曽利E式土器の学習に熱中しました。
令和元年度の企画展「あれもEこれもE-加曽利E式土器(印旛地域編)」(2019.11.16~2020.3.1)も同じ加曽利E式土器をテーマとしていて、現在その学習を深めつつあります。

令和元年度企画展
加曽利貝塚博物館には特別な土器閲覧など様々なことでお世話になりました。感謝申し上げます。

2 縄文土器の3Dモデル作成
3DF Zephyr Liteというソフトを入手して、展示縄文土器を多視点周回撮影して3Dモデルを作成しだしました。
展示会場で土器の様々な要素をじっくり観察することは事実上不可能です。しかし、3Dモデルにすれば2時間でも3時間でも自分が満足できるまで土器をいじくりまわして観察することができます。

最初に作成した3Dモデル

3Dモデルから作成した展開写真
3Dモデル作成活動は縄文土器学習の強力な推進力となりました。
さらに作成した3Dモデルを次のように整理するイメージが生まれ、学習の目標が明確になりました。

縄文土器の私設3D展示場イメージ
このように土器を整理する活動プロセスの中で、自分の縄文土器に対する興味を深めてゆきます。

3 近隣及び遠方の縄文土器展示館の訪問
千葉市、八千代市、船橋市、市川市などの近隣博物館等だけでなく、下総地域の多くの展示館を訪れ、多くの3Dモデルを作成しました。
8月だけでも次の展示館等を訪問して3Dモデル撮影をしました。
20190804 松戸市立博物館
20190805 四街道市第二庁舎ロビー
20190807 柏市郷土資料展示室
20190809 印西市立印旛歴史民俗資料館
20190809 印西市立木下交流の杜歴史資料センター
20190814 我孫子市湖北郷土資料室
20190814 流山市立博物館企画展「流山のお宝発見」
20190820 白井市郷土資料館
20190820 習志野市教育委員会
20190820 我孫子市教育委員会1階ロビー
20190823 鎌ヶ谷市郷土資料館
20190826 千葉市あすみが丘プラザ展示室
また、千葉県出土土器との比較などの向学のために、長野県(茅野市、諏訪市、伊那市、飯田市)の展示館の縄文土器等を観覧し多数の3Dモデルを作成しました。
茅野市尖石縄文考古館では土偶の観察も行い、自分なりの解釈を行いました。

土偶仮面の女神の自分なりの解釈
縄文土器や土偶等の3Dモデル作成は300点を超えました。

作成公開した全3Dモデル(303点)のサムネール

4 趣味活動の加速要素
今年は趣味活動を加速することができましたが、その要因をいくつか列挙します。
4-1 Twitter、Facebook等による交流
Twitter及びFacebookを通じて趣味活動(ブログ活動)を情報発信し、多くの方々と交流しました。この交流のなかでいろいろな刺激を受け、自分の学習を加速することができました。Twitter及びFacebookでお会いした皆様に感謝申し上げます。
なお、自分が好きだったGoogle+が廃止となり、残念でした。
同時に3Dモデルの国際交流サイトであるSketchfabでの交流が始まりました。偶然のいたずらとは思いますが、有名な海外考古博物館からlikeをもらったことがあり、その時は子供のように喜びました。

4-2 基本図書の入手
日本先史土器図譜、日本土器事典、縄文土器大観、総覧縄文土器などの基本図書を入手していつでもページをめくれるようにしたことにより、学習の効率化を図ることができました。縄文土器大観(全4冊)はweb古書店では見つけることができないため、ヤフオクにまで手を染めてやっと入手しました。

4-3 デスクトップパソコンの更新
デスクトップパソコンを更新して高速作業が可能となり、3Dモデル作成等にかかる時間が大幅に減少しました。
・raytrekZQ4-i9
・Core i9-9900k
・NVIDIA Quadro P4000 8GB(DisplayPort×4)
・32GB DDR4 SDRAM
・Crucial 1TB SSD
・3TB HDD
縦長モニターも導入して多数ファイルを飛び飛び指定するときなど、縦方向にカーソルを移動して操作し、超効率環境をつくりました。

新パソコンとモニターの様子

5 参考 学習しかかり項目
2019年の大晦日を迎え、次の学習項目がしかかって継続していますので、記録してきます。
・「史跡加曽利貝塚総括報告書」の本格学習
千葉市教育委員会から報告書電子ファイルを提供していただきましたので、報告書を自分好みに再編集して学習を進めることにします。
・加曽利貝塚博物館E式土器企画展展示土器の3Dモデル作成
E式土器企画展展示土器は全て3Dモデルを作成することにします。すでに写真撮影は7割方済んでいます。
・加曽利貝塚博物館の撮影許可による土器の3Dモデル作成と分析
称名寺式土器と異形台付土器(2点)の特別撮影許可をいただき撮影が済みました。この3点の土器の3Dモデルを分析して、自分なりの新たな知見を得ることにします。
・3Dモデルを使った展開写真の作成
3Dモデルを使って効率的に展開写真を作る技術的方法を獲得することにします。

6 2019年のブログ記事
2019年のブログ花見川流域を歩くの総記事数はこの記事を除いて346記事となりました。
2019年の全ブログ記事(本編)のサムネール この記事を除いて346編

7 感想
2019年は縄文時代学習の手始めとしての縄文土器学習を思いのほか加速・充実させることができました。
2020年は2019年より一層その希少さが増す人生残時間を有効活用して楽しむべく、趣味活動を発展させたいと思います。

皆様、よいお年をお迎えください。

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2018.12.31記事「2018年の趣味活動をふりかえる
2017.12.31記事「2017年の趣味活動をふりかえる
2016.12.31記事「2016年の趣味活動をふりかえる
2015.12.31記事「2015年をふりかえる
2014.12.31記事「1年をふりかえる
2013.12.31記事「大晦日の夜に1年をふりかえる

2019年12月27日金曜日

縄文中期顔面付釣手土器(飯田市北田遺跡) 観察記録3Dモデル

縄文土器学習 301

飯田市美術博物館に展示されている顔面付釣手土器の観察記録3Dモデルを作成しました。

縄文中期顔面付釣手土器(飯田市北田遺跡) 観察記録3Dモデル
撮影場所:飯田市美術博物館
撮影月日:2019.09.25
ガラス面越しに撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 39 images

撮影写真の一例

観察と感想

観察と感想
眉・目・鼻が表現されています。目は微笑んでいて、出産直後の使命達成感を表現していると考えます。よくみると鼻が立体的に表現されています。
3つの渦状縄目隆線は臍の緒であり無事出産した様子を暗示していると考えます。
顔の上の直線縄目隆線は座産で使った天井から下がる踏ん張り用縄であると想像します。
両脇の2本の縄目隆線も足に巻いて中腰姿勢をとった座産のための縄(天井からつるす)であると想像します。

関連記事 2019.03.20記事「顔面付釣手形土器の発掘調査報告書を読む
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参考 カメラ配置

2019年12月25日水曜日

下伊那唐草文土器の観察記録3Dモデル

縄文土器学習 300

飯田市美術博物館に展示されているいわゆる下伊那唐草文土器の観察記録3Dモデルを作成しました。

縄文中期深鉢形土器(飯田市天伯遺跡) 観察記録3Dモデル
いわゆる「下伊那唐草文土器」
撮影場所:飯田市美術博物館
撮影月日:2019.09.25
ガラス面越しに撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 42 images

撮影写真の一例

3Dモデル オルソ投影

下伊那唐草文土器について
飯田市上郷考古博物館発行資料によれば下伊那唐草文土器とは唐草文土器のうち松本平や諏訪盆地、伊那谷北部のものと区別するために独立させた分類のようです。

「平成17年度秋季展示 下伊那唐草文どき ~縄文中期後葉伊那谷南部の地域性~」(飯田市上郷考古博物館発行資料)
この資料による代表的模様とその分布を次にしめします。

下伊那唐草文土器

下伊那唐草文土器の分布




縄文中期前半抽象文深鉢形土器(茅野市辻屋遺跡) 観察記録3Dモデル

縄文土器学習 299

尖石縄文考古館に展示されている縄文中期前半抽象文深鉢形土器(茅野市辻屋遺跡)3器の観察記録3Dモデルを作成しました。

縄文中期前半抽象文深鉢形土器(茅野市辻屋遺跡)A 観察記録3Dモデル
撮影場所:尖石縄文考古館
撮影月日:2019.09.13
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 44 images

Bはhttps://skfb.ly/6PCu6
Cはhttps://skfb.ly/6PCuo

撮影写真の一例

感想と観察
抽象文といっても同じ対象を描いていると考えられます。また具体的印象を受ける文様です。

抽象文と表現されている文様 3Dモデル オルソグラフィック投影
頭は星、三本線、鉤で描かれています。細長い胴と長い尾は共通しています。1本の脚が描かれているものが2つあります。
この文様に類似する文様はすでに多数出土していて、「文様解読から見える縄文人の心」(尖石縄文考古館縄文ゼミナール武居幸重)でオオサンショウウオであることがすでに解明されています。

「文様解読から見える縄文人の心」(尖石縄文考古館縄文ゼミナール武居幸重)
この図書は尖石縄文考古館でしか入手できないようです。


2019年12月24日火曜日

茅野市棚畑遺跡「吹上パターン」出土土器群1 観察記録3Dモデル

縄文土器学習 298

尖石縄文考古館に展示されている茅野市棚畑遺跡「吹上パターン」出土土器群の一部について観察記録3Dモデルを作成しました。

茅野市棚畑遺跡「吹上パターン」出土土器群1 観察記録3Dモデル
棚畑遺跡第119号住居址「吹上パターン」出土土器群
縄文中期前半
撮影場所:尖石縄文考古館
撮影月日:2019.09.13
ガラス張りショーケース越しに撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 34 images

撮影写真の一例

吹上パターンの説明1

吹上パターンの説明2

大型土器模様の様子 3Dモデル オルソグラフィック投影

感想
・「吹上パターン」といわゆる「土器塚」と有吉北貝塚(千葉県千葉市)ガリー浸食地形投入土器集積や西根遺跡(千葉県印西市)低地土器集積は、規模や環境こそ違いますが、実は同じ基本原理による活動結果であると素人考えします。定期的に利用土器のうちくたびれたものを廃用土器に位置付けて、それを破壊する祭祀があり、それは秋の収穫祭に挙行されたと考えます。
・写真の大型土器の模様は「抽象文」といわれるもののようですが、家紋のような菱形、リボンのように優美にカールして垂れ下がる隆線などは装いを少し変えれば立派な現代芸術であり、だれも縄文土器模様とは気が付かないと思います。

尖石縄文考古館展示縄文土器11点 観察記録3Dモデル

縄文土器学習 297

尖石縄文考古館C室の台上に「露天」展示されている縄文土器11点の観察記録3Dモデルを作成しました。説明がありませんので、その造形だけを楽しみ、目に焼き付けました。

尖石縄文考古館展示縄文土器11点 観察記録3Dモデル
撮影場所:尖石縄文考古館
撮影月日:2019.09.13
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 108 images

撮影写真の一例

感想
正面中央の把手が特徴的な土器をエジプトの博物館におけば、納得してしまうような造形です。原始・古代人のデザイン感覚と現代人のそれが違うかもしれないということと、原始・古代人のデザイン感覚は世界共通の側面が強かったかもしれないということを想像しました。
説明なしで縄文土器をじっくりみることも学習を進める上で大切なことであると感じました。

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参考 カメラ配置

縄文中期有孔鍔付土器(茅野市長峰遺跡) 観察記録3Dモデル

縄文土器学習 296

尖石縄文考古館に展示されている縄文中期有孔鍔付土器(茅野市長峰遺跡)の観察記録3Dモデルを作成しました。背面が壁のショーケースに展示されているためカメラの視線が届く半分ほどしか3Dモデル化できません。

縄文中期有孔鍔付土器(茅野市長峰遺跡) 観察記録3Dモデル
撮影場所:尖石縄文考古館
撮影月日:2019.09.13
ガラス張りショーケース越しに撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 29 images

撮影写真の一例

3Dモデルの正面画像 オルソグラフィック投影

3Dモデルの上から画像 オルソグラフィック投影

感想と観察
・胴部は3段のだるま落としのような形をしています。下段は模様や装飾はなし、中段は水平方向に孔が貫通する大きな双眼と隆線による上部逆三角の十字架様模様、上段は垂直方向に孔が貫通する小ぶりの双眼とアーチ門様の隆線による模様が見られます。
・下段がスタートで、中段が大きな展開があり、上段が別の趣旨の展開があるというある物事の3段階展開を表現しているような感想を持ちました。
・さらに強引に空想すれば、中段の十字架のような模様はものがはじける様子を、上段の模様は気泡が浮かび上がってくる様子を連想します。もしかしたら醸造プロセスの段階をイメージしているのかもしれません。

参考 「縄文土器大観 2中期Ⅰ」(小林達雄編集)掲載画像

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参考 カメラ配置

参考 カメラ配置(当初3Dモデル)

2019年12月23日月曜日

縄文中期後半双口土器(茅野市一ノ瀬遺跡) 観察記録3Dモデル

縄文土器学習 295

尖石縄文考古館に展示されている縄文中期後半双口土器(茅野市一ノ瀬遺跡)の観察記録3Dモデルを作成しました。

縄文中期後半双口土器(茅野市一ノ瀬遺跡) 観察記録3Dモデル
撮影場所:尖石縄文考古館
撮影月日:2019.09.13
4面ガラス張りショーケース越しに撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 78 images

撮影写真の一例

上から見た様子 3Dモデル

感想
双口土器がどのように使われたかという説明・解説を図書やwebで見つけることはできませんでした。用途不明とか祭祀に使われたという程度の情報しかありませんでした。
縄文土器学習を進める上で、「そうですか」と納得して、写真や3Dモデルをwebに掲載しておしまいではつまらない活動になってしまいます。
後で間違っていたという結論になろうとも双口土器の用途や意義についての思考を少しだけでもメモすることにします。
・この双口土器は上から見てわかる通り、内部がつながっていません。二つの土器を1つに合体した形状をしています。
・二つの土器が一緒に出土する例は2019.12.20記事「2点並んで出土した縄文中期深鉢形土器(茅野市下ノ原遺跡) 観察記録3Dモデル」で検討したように茅野市にかぎらず列島に一般的にあるようです。その場合2つの土器は大小が明白で、夫婦を連想させます。
・大小二つの土器が並んで(そして完形で)出土する必然をつくった祭祀が想定され、それは男女が会い子孫を残す活動に関連する祭祀であると想像しました。
・双口土器は一瞥では2つの土器の大小を認識できません。また模様も同じです。結合部ではないところについている把手の形状が一方は「まあるく」、一方は「かくかく」していますが、これは意図したものかどうか微妙です。たとえ意図したものであっても大小とか優劣とかを示すものではないと考えられます。つまり、この双口土器は二つの同じ土器をくっつけたものです。二つの土器はいわば「平等」の精神で結ばれています。
・以上の観察と感想から、この双口土器の用途をいささか強引ですが次のように仮説しました。
・二つの集団が何かの都合で密接に協力する関係を結ぶ必要が生まれた、あるいは統合することになった、その時の団結式祭祀で統合の象徴を演出するためにこの土器がつくられ使われた。契りをむすぶ杯ならぬ、契りを結ぶ土器であったと想像します。

17匹のヘビが出てくる縄文土器

縄文土器学習 294

尖石縄文考古館に展示されている縄文中期深鉢形土器(茅野市中ッ原遺跡)の観察記録3Dモデルを作成しました。

縄文中期深鉢形土器(茅野市中ッ原遺跡) 観察記録3Dモデル
撮影場所:尖石縄文考古館
撮影月日:2019.09.13
4面ガラス張りショーケース越しに撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 73 images

撮影写真の一枚

感想と観察
まるで二つの土器を重ねたような鋭いくびれと嘴・三角・丸穴等による立体装飾が異様な雰囲気を醸し出している土器です。
この土器についてサイト「縄文記号の世界」(武居竜生先生)では嘴状の部分について
「蛇の口部分の特徴」であると指摘しています。
この指摘を念頭に3Dモデルをじっくり観察したところ、ヘビの口が17あることが分かりました。また三角形の意味がヘビの大きく開いた口の上あご(牙があるところ)であると直感することができました。

三角形は牙のある開いた上あごであると想定する
頭が三角形ですから毒蛇のマムシが描かれていると考えます。
さらに頸部下端がギザギザしていてヘビが這っている様子を表現していて、それが小さなヘビの口につながってていることもわかります。描かれている隆起線はすべてヘビの胴体であり、その端の渦はとぐろを表現しているようです。
つまり、この土器は全部で17匹のヘビ(の口)と胴、とぐろが装飾のほとんどである特殊な土器であると考えました。

4つの立体装飾
Aに大きな把手(欠損)があることなどから、Aが土器正面として作られたと想定します。

A付近の立体装飾

B付近の立体装飾

C付近の立体装飾
CとDの間の胴部には意図的に開けられた孔が開いています。土器内の液体を外に注ぐための孔かもしれません。

D付近の立体装飾

孔の様子、上からの画像

毒蛇17匹が登場し、そのうち7匹は牙をむき出しにして口を大きく開けて威嚇しています。
マムシが表現されている土器はほかにもありそうですから、それらと比較しながら祭祀のなかでマムシがどのような役割をもっていたのか、学習を深めたいと思います。

2019年12月22日日曜日

花瓶のような縄文土器 3Dモデル

縄文土器学習 293

尖石縄文考古館に展示されている「花瓶のような土器」と形容される優美な姿の土器の3Dモデルを作成しました。

縄文前期深鉢形土器(茅野市下ノ原遺跡) 観察記録3Dモデル
撮影場所:尖石縄文考古館
撮影月日:2019.09.13
4面ガラス張りショーケース越しに撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 65 images(Masquerade機能利用)

撮影写真の一例

マスカレード機能設定状況
マスカレード機能により、対象物以外はマスクにより隠し対象物だけの計算をするため、より統合的でゴミの少ない3Dモデルを作ることができます。同時に大幅な時短が実現します。

土器の説明パネル

3Dモデル 立面のオルソグラフィック投影

感想
その優美さは館に展示されている他の縄文中期土器と比べて異次元ともいえるものです。
この土器(縄文前期)作者の土器制作に対する価値観と縄文中期土器作者の価値観は全く異なると想像します。
類似の器形土器として(時代は全く異なりますが)堀之内1式土器があります。それと比べるとこの土器の優美な曲線の特徴がよくわかります。

参考 堀之内式土器 山内清男編「日本先史土器図譜」

土器模様について
この土器の模様は頸部が波状に対応して4つの区画に区分されますが、模様は2つが同じで、他の2つはそれぞれ異なり、結局3つに分類できます。また胴部は7つの区画に区分され、胴部と頸部の模様は直接対応しません。
頸部、胴部区画区分と頸部と胴部の関係は作者の計画的意図が込められてデザインされていると直感できます。適当に模様を描いたとは到底考えられません。
この土器の模様の意味を今後検討して深めることにしますが、類似土器の模様との比較が大切であると考えます。

2019年12月21日土曜日

把手状装飾付波状口縁深鉢(茅野市棚畑遺跡) 観察記録3Dモデル

縄文土器学習 292

尖石縄文考古館に展示されている把手状装飾付波状口縁深鉢(茅野市棚畑遺跡)の観察記録3Dモデルを作成しました。

把手状装飾付波状口縁深鉢(茅野市棚畑遺跡) 観察記録3Dモデル
縄文中期
撮影場所:尖石縄文考古館
撮影月日:2019.09.13
4面ガラス張りショーケース越しに撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 70 images

撮影写真の一例

3Dモデル正面 オルソ画像

作業仮説的解釈
この土器の模様解釈を展示館で購入した多数図書やwebで探したのですが見つかりませんでした。そこで3Dモデルを観察しながら思い浮かんだ自分勝手な解釈を作業仮説としてメモします。

把手状装飾付波状口縁深鉢(茅野市棚畑遺跡)の作業仮説的解釈
土器が3つのくびれで上下方向に4段に区分できます。そのうち最下段は男女交合場面と解釈しました。女性の後背から男性が向かっている場面です。最上段の渦巻は臍の緒を表現していて、出産が済んで臍の緒が次から次に出てくる場面と推定しました。
この土器は最下段から最上段にむけて交合→妊娠→出産を表現しているようです。
土器にJ字(逆J字)や横棒が表現されていますが、これを葉っぱと枯れ枝であると想像すると、交合の季節は春、その後夏、秋を経て出産は冬であることが分かります。
出産場面でなぜ睾丸がでてくるのか、そこらへんはよくわかりません。
なお、女性臀部と見立てた模様と同じものが加曽利貝塚博物館の昨年企画展で展示された「加曽利EⅢ~Ⅳ式両耳壺(りょうじこ)愛生遺跡出土」に見られます。

加曽利EⅢ~Ⅳ式両耳壺(りょうじこ)愛生遺跡出土
2019.03.04記事「加曽利EⅢ~Ⅳ式両耳壺の観察

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冬(ふゆ)の語源は「増(ふ)ゆ」であり、増殖の意味であるという折口信夫の論考を読んだことがあります。もし上記土器模様解釈が正しく、縄文時代の出産が冬であったのならば、その伝統習俗が延々と列島に伝わり、日本語「冬」の語源になっているのかもしれません。
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参考 カメラ配置