2022年12月31日土曜日

2022年の趣味活動をふりかえる

 Looking back on 2022 hobby activities


Despite the pandemic, I was able to maintain and develop my hobby activities in 2022 and enjoyed it a lot.

I would like to express my sincere gratitude to all the people inside and outside of Japan who I met face-to-face and on Blog, Twitter, Facebook, YouTube, Sketchfab, etc. I have summarized the activities in 2022.


2022年の大晦日となりました。

コロナウィルスパンデミックも3年目を過ぎ、ようやく出口が見えてきました。コロナワクチン接種が5回におよぶとは考えてもみなかったことです。コロナ感染もなく、いわんや重症化、死亡という最悪事態もなくこの1年を過ごせたことは自分の人生の中でラッキーだったと考えたいと思います。

こうした状況の中で、趣味活動はこの1年間皆様のおかげで大いに楽しみ、発展させることができました。

対面でお会いし、ご指導やご厚情をいただいた皆さま、Blog、Twitter、Facebook、YouTube、Sketchfabなどwebでお会いし、いいね・コメント・情報・アドバイス・ご指摘などをいただいた内外皆様に心から感謝申し上げます。2022年の1年間まことにありがとうございました。

この記事では2022年趣味活動で特段に印象に残った活動を反芻して楽しむことにします。

同時に年初に作成した「2022年のささやかな夢リスト」の実現状況をチェックしたいと思います。

1 2022年趣味活動で楽しかった出来事

1-1 やまだこーじさん提供干渉色変換ツールで遊ぶ

年初からやまだこーじさん提供の干渉色変換ツールを風景写真、考古遺物3Dモデルなどに適用して楽しむとともに、その分析有用性について検討しました。干渉色変換ツールは色塗りツールとして判りずらい画像を明瞭な色で可視化できるとても有用なツールです。


干渉色変換の例

1-2 千葉達朗先生から赤色立体画像作成方法を直接ご指導していただく

千葉達朗先生が発明された赤色立体画像の作成方法を先生からzoomで直接ご指導していただきました。幸運です。千葉達朗先生に感謝します。おかげで考古遺物3Dモデルの表現方法のレパートリーが増えました。同時にPhotoshop機能についての理解を深めることができました。


赤色立体画像の例

1-3 「優品展」展示遺物の3Dモデル作成を楽しむ

千葉市立郷土博物館と千葉市埋蔵文化財調査センターで開催された「千葉市出土考古資料優品展」の展示遺物多数について3Dモデルを作成して学習し、楽しみました。

人面付土版(千葉市内野第1遺跡)

1-4 「あれもE…」企画展展示土器の3Dモデル作成を楽しむ

加曽利貝塚博物館令和3年度企画展「あれもE これもE 加曽利E式土器 千葉市編2 -加曽利EⅣ式土器とその末裔たち-」で展示された土器多数について3Dモデルを作成して分析・学習を深め、楽しみました。

加曽利EⅤ式深鉢(No.39)(千葉市六通貝塚) 観察記録3Dモデル

1-5 「人面・土偶装飾付土器」企画展展示土器の3Dモデル作成を楽しむ

山梨県立考古博物館令和4年度春季企画展「心を描く縄文人 -人面・土偶装飾付土器の世界-」で展示された土器多数について3Dモデルを作成し、学習を深め、楽しみました。いつも見慣れた加曽利E式土器とうってかわり、自分にとっては異形・異様な土器群であり、強い刺激を満喫しました。

出産文土器複製(北杜市津金御所前遺跡) 観察記録3Dモデル

1-6 土器や遺構の実測図から3Dモデル作成を楽しむ(Blender習熟に熱中)

実測図から3Dモデルをつくりたいという欲がつのり、無謀にもその活動に3ヵ月ほど熱中しました。活動実態はBlender操作技術の習熟活動そのものです。計画してそうなったのではありませんが、このBlender操作習熟があったため、結果として次の有吉北貝塚北斜面貝層のBlender3D空間分析が可能となりました。

屋外漆喰炉基底微地形・出土遺物(千葉市大膳野南貝塚)3Dモデル

1-7 有吉北貝塚北斜面貝層の3D空間における土器分布分析を楽しむ(Blender熱中)

最初は無謀であり、途中挫折が予感された膨大な作業、つまり700点以上の土器破片オブジェクト作成・3D空間プロット作業が根気よく取組む中で完遂できました。これをキッカケにして次々と膨大作業を実施しました。遺物の3Dモデルではなく、土器分布の3Dモデル作成という分析作業にBlenderを使ったことは自分にとって画期的な出来事です。

有吉北貝塚北斜面貝層 加曽利EⅡ式土器(第10・11群土器)の3D分布モデル

1-8 おゆみ野歴史愛好会における話題提供交流を楽しむ

おゆみ野歴史愛好会で自分の趣味活動について話し会員皆様と交流しました。お互いに大いに学習刺激を受けました。

1-9 千葉市埋蔵文化財調査センター所長西野雅人さんから直接ご指導を賜る

千葉市埋蔵文化財調査センター所長西野雅人さんから有吉北貝塚北斜面貝層学習について直接ご指導を賜りました。今後の学習活動を進める上で貴重なアドバイスをいただくとともに、発掘調査報告書の土器編年分類が全く新たに更改されているなど最新情報をいただき、共同して今後の作業を進めることになりました。西野雅人さんに感謝します。この取組で考古学習におけいるBlender3D技術活用が一段と進めることができそうです。

2 「2022年のささやかな夢リスト」の実現状況をチェック

2022.01.15記事「ブログ開設11周年通過にあたって」でメモした「2022年のささやかな夢リスト」の実現状況をチェックしたいと思います。

◎ 夢を大いに実現した

〇 夢の部分を実現した

△ 夢が実現する方向に向かった

× 夢の実現は持ち越された

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2-1 縄文社会消長分析学習の継続深化

2-1-1 有吉北貝塚学習の継続発展→◎

2-1-2 祭祀に関わる遺物の観察→×

2-2 展示施設の展示物3Dモデル観察の継続→◎

2-3 観察分析技術の向上

・3Dモデル作成・操作・表現技術の向上→〇

・GIS技術、DB技術の向上→△

・著作物表現技術の向上→〇

・webメディアの操作技術→△

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夢の実現という観点でふりかえると有吉北貝塚の継続発展が◎となり、今後さらに発展できる可能性が生まれてきたので、うれしい1年であったことになります。

3 趣味活動の味の付け方

2022年活動における成果の一つに、自分の趣味活動におけるコアコンピタンスは考古学習における3D技術の積極活用であることに気が付いたことです。趣味活動における味付けは3D技術で行い、その技術レベルはすぐには真似できない程度のハイレベルにもっていきたいと意識しだしました。

4 花見川に関する取組み

2022年12月に花見川に関するある取組の機会に直面しました。私の活動は元来花見川がフィールドですから、この新たな機会を利用して花見川回帰のキッカケにしようと思います。

5 2023年の活動

上記1~4の2022年ふりかえりを踏まえて、2023年の活動を年始にじっくり考え、2023年1月15日記事「ブログ12周年通過記念記事」(予定)でまとめることにします。


皆様、良いお年をお迎えください。


2022年全237記事(この記事を除く)のサムネイル

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2021.12.31記事「2021年の趣味活動をふりかえる

2020.12.31記事「2020年の趣味活動をふりかえる

2019.12.31記事「2019年の趣味活動をふりかえる

2018.12.31記事「2018年の趣味活動をふりかえる

2017.12.31記事「2017年の趣味活動をふりかえる

2016.12.31記事「2016年の趣味活動をふりかえる

2015.12.31記事「2015年をふりかえる

2014.12.31記事「1年をふりかえる

2013.12.31記事「大晦日の夜に1年をふりかえる



2022年12月30日金曜日

古地図に表現された東京湾水系花見川

 The Hanami River in the Tokyo Bay system depicted on old map


I reconfirmed that Hanami River (then called Kemi River) in the Tokyo Bay water system was depicted as an independent water system in the picture (old map) drawn during the Tenmei era Inbanuma moat construction period.


天明期印旛沼堀割普請時代に描かれた絵図(古地図)に東京湾水系花見川(当時の呼称は検見川)が独立水系として描かれていることを再認識しました。

1 下総国印旛沼御普請堀割絵図

この絵図は八千代市文化財として指定されています。この絵図の画像ファイルは八千代市立郷土博物館より提供を受け、このブログで公表する許可をいただいています。八千代市立郷土博物館に感謝します。


下総国印旛沼御普請堀割絵図(八千代市立郷土博物館提供)

この絵図は天明期印旛沼堀割普請に係り作成されたもので、当時の堀割筋(印旛沼及び現在の新川、花見川)の村々と工事に関して必要な記述がみられます。また東京湾水系花見川(当時の呼称は検見川)が独立水系として描かれている貴重な歴史資料です。

利根川が東遷したことにより、利根川が増水すると印旛沼周辺が洪水にみまわれるようになってしまいました。そこで洪水を防ぎ、干拓により新田開発をするために開削工事が行われました。この絵図は現在の新川と花見川をつなげる構想のために描かれたものです。

この絵図の印旛沼水系新川(勝田川)と東京湾水系花見川の間に「コノ間 拾四丁芝地 高七丈壱尺」という注記文字が書かれています。


下総国印旛沼御普請堀割絵図部分(八千代市立郷土博物館提供)

この絵図は、天明期印旛沼堀割普請の前には、横戸村と柏井村の間の台地に分水界があったことを示す貴重な地形歴史資料の一つです。

2 下総国印旛沼御普請堀割絵図の分析


下総国印旛沼御普請堀割絵図の分析

絵図の水部を水色で塗色し、読み取れる土地(地整)概念を書き込んでみました。この絵図作成者(普請事業構想者)は香取の海と江戸湾、それを結ぶ谷津・川とその分水界を詳しく理解しています。

この絵図が描かれた頃の実際の湖沼分布は明治中期迅速図集成図で表現される湖沼分布と大差はなかったと考えます。


参考 明治中期迅速図集成図(湖沼等塗色)


参考 地形段彩図(現在)




2022年12月27日火曜日

河川名「花見川」(はなみがわ)が明治以前資料で確認できないことに気が付く

 Noticed that the river name "Hanamigawa" cannot be confirmed in pre-Meiji documents.


I noticed that the river name "Hanamigawa", which is a familiar river to me, could not be confirmed in materials before the Meiji era. "Hanamigawa" seems to have been changed from "Kemigawa" as a lucky river name around the early Meiji era.


自分にとって身近な河川である花見川(はなみがわ)という名称が明治以前資料では確認出来ないことに気が付きました。「花見川」(はなみがわ)は明治初期前後頃に吉祥河川名としてケミガワ(華見川とか花見川)から変化して生まれたようです。

1 河川名「花見川」が確認できる最古地図は「明治前期測量2万分の1フランス式彩色地図」

私は10年以上にわたって、趣味レベルですが、花見川について興味を持ち、調べてきています。そうした中で、河川名「花見川」が記載された最古地図は「明治前期測量2万分の1フランス式彩色地図 千葉県下総国千葉郡馬加村」が最初のものであると気が付きました。


「明治前期測量2万分の1フランス式彩色地図 千葉県下総国千葉郡馬加村」に登場する花見川

河川名「花見川」が地図に登場するのは、私が確認した範囲では最古です。ただし、読みが「はなみがわ」であるかどうかの確認はとれません。地図作成兵士が「花見川」と書いて「けみがわ」と読んでいた可能性は残されていると考えます。

千葉市発行歴史資料に掲載されている明治以前の古文書・古地図では「花見川」という語句が記載されているものは確認できません。

資料

・絵にみる図でよむ千葉市図誌(千葉市発行)

・千葉市史

・千葉市史資料編1、2、8、9 など

明治40年発行吉田東伍著「大日本地名辞書 坂東」では花見川は次のように説明されています。

「花見(ハナミ)川

元は犢橋村柏井の邊に発する野水の末なるが、近世印旛沼堀割の土功を起こしし時、印旛郡平戸川の低谷より、此川筋へ達する水路を疎開したり。故に其水路は成就せざりしも、横戸に於て一堰を造りて、之に水を貯へ、夏時には之を花見川へも灌くこととなりぬ、横戸堰より検見川村の海濱まで凡二里。」

「角川日本地名大辞典 12千葉県」(昭和59年発行)では花見川(はなみがわ)の記述は「正式名称は印旛沼放水路という。印旛沼周辺の洪水防止を目的として整備された人工河川。」で始まり、工事の歴史が書いてあります。

「明治前期測量2万分の1フランス式彩色地図」に花見川が使われ、明治40年発行吉田東伍著「大日本地名辞書 坂東」で花見川の説明があるので、明治時代から花見川(はなみがわ)が使われていたことは確認できます。江戸時代までの資料では花見川(はなみがわ)使用例は確認できません。

2 河川名「花見川」(はなみがわ)の語源・由来説明記述は見つからない

「花見川」(はなみがわ)の語源・由来を説明した記述を既存図書で見つけることはできませんでした。

3 印旛沼堀割普請関連古文書では河川名として「検見川」(けみがわ)が使われている

天保期の印旛沼堀割普請関連の古文書・古地図では工事対象名として「利根川分水路印旛沼堀割筋」「利根川分水路」「印旛沼堀割」「印旛沼古堀筋」「堀割筋」などが使われています。河川を意識した古文書では「検見川古川筋」「検見川堀割」「検見川筋」などが使われ、現在の花見川を特定しています。つまり、河川名としては「検見川」が使われています。印旛沼堀割普請関連古文書・古地図では花見川という言葉は一切使われていません。


河川名「検見川」が使われている古文書の例

出典 天保期の印旛沼堀割普請(千葉市発行)

資料

・天保期の印旛沼堀割普請(千葉市発行)

4 地名「検見川」(けみがわ)について

「角川日本地名大辞典 12千葉県」(昭和59年発行)では検見川について次のように記述しています。

「けみがわ 検見川 <千葉市>

花見川河口南岸の袖ヶ浦沿いの海岸低地。地名の由来は源頼朝が兵を検せしことが起源という説もある(検見川小学校百年誌)。「千葉実録」に治承4年頼朝通過の折り、東六郎大夫が在名にちなんだ「花見川」の和歌をよみ、川上の桜は吉野の勝るとし、「花見川村」とも書いている。また、「千葉郡誌」には「花見川に因て華見川なりといふこともあり」と見える。

[中世]けみ川

戦国期に見える地名。下総国のうち。宗長の「東路の津登」によれば、宗長は永正6年10月、小弓城主原胤隆の許に滞在したが、その帰途のこととして「はまの村をたちて、けみ川といふ所の浦風あまり烈しかりしかば、一宿して、いまだ日もたかかりしに、人々物語の序に一折などのことにて、玉がしは藻にうづもれぬあられ哉」と記している(群書18)。また、「国府台戦記」には、天文7年の第1次国府台合戦の後、小弓御所足利義明の息男の乳母れんせいが若君の墓参に赴く途次を「心ぼそくもけみ河の、川瀬の千鳥友よぶも、君に逢ふかとおどろきて……」と描写している(続群21)。

[近世]検見川村

江戸期~明治22年の村名。……略

[近代]検見川村

明治22~24の千葉郡の自治体名。……略

[近代]検見川町

明治24年~昭和12年の千葉郡の自治体名。……略

[近代]検見川

明治22年~昭和13年の大字名。……略

[近代]検見川町

昭和13年~現在の千葉市の町名。……略

「角川日本地名大辞典 12千葉県」(昭和59年発行)の検見川説明記述に登場する「花見川」は「はなみがわ」ではなく、「けみがわ」と読むと当時の実在地名と符号して理解することができます。漢字「花」は「け」とも読みます。次のように読むことが適切です。

「千葉実録」に治承4年頼朝通過の折り、東六郎大夫が在名にちなんだ「花見川」(けみがわ)の和歌をよみ、川上の桜は吉野の勝るとし、「花見川村」(けみがわむら)とも書いている。また、「千葉郡誌」には「花見川(けみがわ)に因て華見川(けみがわ)なりといふこともあり」と見える。

5 河川名「花見川」(はなみがわ)の語源について

河川名「花見川」(はなみがわ)は天保期印旛沼堀割普請では使われておらず、工事名として「印旛沼堀割」が使われ、河川名としては検見川が使われていました。河川名「花見川」(はなみがわ)が登場するのは明治に入ってからです。

つまり河川名「花見川」(はなみがわ)は明治に入ってから河川名「検見川」(けみがわ)にとってかわるように生まれた新名称であることが資料から確認できます。

新河川名「花見川」(はなみがわ)が明治初期前後頃生まれた理由は今後検討することにしますが、「千葉郡誌」(大正15年発行)の記述「花見川(けみがわ)に因て華見川(けみがわ)なりといふこともあり」をヒントにすれば、次のような想像も意義があるような気がします。

●新名称「花見川」(はなみがわ)が生まれた経緯に関する想像

検見川の検見は行政が上から監視するようなイメージの言葉であり、地元からすると地域発展をイメージするにはあまり好ましい名称では無かった。天保期印旛沼堀割普請が失敗すると、河川名「検見川」(けみがわ)は一段とイメージが悪い名称となった。地元では検見川(けみがわ)の当て字として故事になぞらえた吉祥語として「花見川」(けみがわ)や「華見川」(けみがわ)を使うものも現れた。「花見川」や「華見川」がいったん文字になるとそのよみをわざと「はなみがわ」と読む人が増えた。徐々に河川名が「けみがわ」から「はなみがわ」に変化し始めた。

こうした中で「明治前期測量2万分の1フランス式彩色地図」の測量が行われ、測量兵士は地元から「花見川」名称をききとり地図に記載した。公的な資料に掲載されたので、河川名称は社会一般では「検見川」(けみがわ)から「花見川」(はなみがわ)により一層変化した。

6 明治時代の印旛沼開発計画で使われた河川名

明治時代に印旛沼開発計画が取組まれ、渋沢栄一やお雇い外人技術者デレーケなどが登場しますが、この土木地域開発分野では花見川の言葉は一切見られず、河川名としては検見川が使われています。

資料

織田寛之著「印旛沼経緯記」(明治26年)

7 現在の河川法上の名称

現在、花見川は社会一般における通称であり、河川法上の名称は印旛放水路(下流部)となっています。


2022年12月24日土曜日

装飾品(貝製品)とイノシシ顎骨の相互噛み合い的分布

 有吉北貝塚北斜面貝層の装飾品(貝製品)とイノシシ顎骨のグリッド分布が相互噛み合い的に観察できますので、メモしました。

Interlocking distribution of ornaments (shellfish products) and wild boar jawbones

The grid distribution of ornaments (shellfish products) and wild boar jawbones in the north slope shell layer of Ariyoshi Kita Shell Mound can be observed interlockingly, so I will make a note of it.

1 装飾品(貝製品)とイノシシ顎骨の分布


有吉北貝塚北斜面貝層装飾品(貝製品)分布


参考 イモガイ製腰飾


有吉北貝塚北斜面貝層イノシシ顎骨分布

2 装飾品(貝製品)とイノシシ顎骨の相互噛み合い的分布


装飾品(貝製品)とイノシシ顎骨のグリッド分布が相互噛み合い的に見える様子

装飾品(貝製品)の出土数が多いグリッドはイノシシ顎骨が少なく、反対にイノシシ顎骨が多いグリッドは装飾品(貝製品)が少なく観察できます。相互噛み合い的に観察できます。

この様子が単なる偶然であるのか、それともイノシシ顎骨や装飾品(貝製品)が投棄された(持ち込まれた)頃の活動状況の反映であるのか、今後詳しく検討することにします。

イノシシ顎骨はイナウに飾られたイノシシ頭骨であると推察していますので、装飾品(貝製品)とイノシシ顎骨の相互噛み合い的分布は祭壇付近で行われる祭祀的活動の反映かもしれません。

3 参考 アイヌ熊祭りのイナウ


アイヌ熊祭における熊頭の飾り

「アイヌ芸術 第二巻木工編」(金田一京助、杉山寿栄男 昭和17年)から引用


アイヌ熊祭のイナウ祭壇(部分)

「アイヌ芸術 第二巻木工編」(金田一京助、杉山寿栄男 昭和17年)から引用


2022年12月18日日曜日

有吉北貝塚北斜面貝層の新分類土器の3D空間プロット

 3D Spatial Plot of Newly Classified Pottery in the North Slope Shell Layer of Ariyoshi Kita Shell Mound


A new classification of pottery excavated from the northern slope shell layer of the Ariyoshi Kita Shell Mound has been carried out. So let's plot it in Blender3D space. It takes time and effort, but by plotting it in a file for each pottery and assembling it at the end, the information can be used for multiple purposes.


有吉北貝塚北斜面貝層出土土器の新分類が行われましたので早速Blender3D空間にプロットすることにします。手間はかかりますが、土器別ファイルにプロットして、最後に集成することにより、情報を多用途に使えるようにします。

1 加曽利EⅡ式土器 3D空間プロットのための便宜的新分類

千葉市埋蔵文化財調査センター所長西野雅人さんから提供していただいた第9~12群土器新分類情報を次のように便宜的新分類に集約して3D空間にプロットすることにします。


有吉北貝塚北斜面貝層 加曽利EⅡ式土器 3D空間プロットのための便宜的新分類

2 土器別ファイルの作成

これまでの作業は例えば加曽利EⅡ式(第10・11群)土器のBlender3D空間プロット作業は一括して作業しましたから、3D分布図から個別土器破片の分布を抽出することは出来ませんでした。これでは土器投棄様相を詳しく検討出来ません。そこで、今回は手間はかかりますが、土器別ファイルに個別土器破片を3Dプロットして、最後に全土器を集成することにします。これにより、土器投棄の様相分析の進展が期待できます。同時に新たな視点から土器を分類した場合や、新分類の修正があった場合に情報を柔軟に活用できるようになります。

3 実際のBlender3D空間プロット作業


土器破片のBlender3D空間プロット方法 186番土器の例


186番土器(EⅡ古)破片4点の3D空間分布


2022年12月15日木曜日

有吉北貝塚北斜面貝層の土器資料新分類

 A new classification of pottery from the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound


While exchanging information with Mr. Masato Nishino, Director of the Chiba Buried Cultural Property Research Center, he provided me with the latest classification information on pottery from the northern slope shell layer of the Ariyoshi Kita Shell Mound. I am looking forward to recreating the 3D distribution data, as there is a possibility that the contradictions that could not be interpreted can be resolved.


千葉市埋蔵文化財調査センター所長西野雅人さんからご指導していただく機会を得ました。そのなかで、有吉北貝塚北斜面貝層土器資料について、その最新分類情報を提供していただきました。解釈出来なかった矛盾が解消出来る見込みも生まれ、3D分布資料作成し直しが楽しみです。

1 有吉北貝塚北斜面貝層 加曽利EⅡ式~EⅢ式土器 発掘調査報告書掲載資料の新分類


有吉北貝塚北斜面貝層 加曽利EⅡ式~EⅢ式土器 発掘調査報告書掲載資料の新分類(千葉市埋蔵文化財調査センター所長西野雅人さん作成)

2 メモ

・西野雅人さんから、発掘調査報告書作成当時と比べて、千葉県域加曽利E式土器分類は格段に精緻になり、また土器分類と社会消長との関連付も進み、発掘調査報告書掲載土器分類は役割を終えたことを教えていただきました。

・新分類情報は西野雅人さんが作成したものです。貴重な情報を提供していただき、西野雅人さんに感謝します。この資料の3D分布情報を貝層断面図等と突き合わせる分析作業を西野雅人さんと一緒に行う予定です。

・新分類情報の最大の特徴は、加曽利EⅢ式土器が完全に消えたということです。台地には加曽利EⅢ式土器が出土する竪穴住居が3軒ありますが、北斜面貝層から加曽利EⅢ式土器出土は皆無になりました。

・これで、解釈に苦しんだ「加曽利EⅢ式土器出土が異様に多い」という矛盾が解消する見込みとなりました。

・新分類により土器を3D空間にプロットして、貝層断面との関係を分析することによって、貝層形成時期や土器投棄の様相に関して新たな観察を行うことになります。その観察からどのようなことがわかるか、楽しみです。


2022年12月11日日曜日

中峠式土器と加曽利EⅡ式(第10・11群)土器の分布オーバーレイ図の作成

 Creating an overlay map of the distribution of Nakabyo-style pottery and Kasori EII-style pottery (groups 10 and 11)


I made an overlay map of the distribution of Nakabyo-style pottery and Kasori EII-style pottery (groups 10 and 11) from the north slope shell layer of Ariyoshi Kita Mound and observed them. The central distribution area has moved from the lower reaches of the low-lying landforms to the upper reaches of the steep narrow landforms. The reason seems to be that prayer activities have changed from individuals to groups.


有吉北貝塚北斜面貝層の中峠式土器と加曽利EⅡ式(第10・11群)土器の分布オーバーレイ図を作成して観察しました。分布中心域が低平地形の下流から急斜面狭窄地形の上流に移動しています。その理由は祈願活動が個人から集団に変化したためであるようです。

1 中峠式土器と加曽利EⅡ式(第10・11群)土器の分布オーバーレイ図の作成


中峠式土器-加曽利EⅡ式(第10・11群)土器オーバーレイ図


オーバーレイ図の貝層形成直前地形投影図

2 観察


観察図

中峠式土器の分布中心域は下流の低平地形域です。この付近には黄色が目立ちます。加曽利EⅡ式(第10・11群)土器の分布中心域は上流の谷頭急斜面・狭窄地形域です。この付近には緑色が目立ちます。

分布中心域が下流から上流に移動した理由をこの地図から読み取ることはできませんが、これまでに得られた情報から、次のような想像をしています。

中峠式期には土器口縁部突起などを貝層に投棄して願掛け活動が行われた。その活動は平場(広場)がある下流域がメインであった。下流域には水場(湿地)があり霊場的環境が存在していた可能性がある。願掛け活動は投棄土器の様子から個人レベルの活動であったと考えられる。

加曽利EⅡ式(第10・11群)期には大きな集団が使う巨大土器をそのまま貝層に持ち込み、その場で破壊して各所にばら撒くという願掛け活動が行われた。谷頭部上から谷底に土器を投棄して破壊するというダイナミックな活動も行われた。集団で行う「祭り」であり、興奮やスリルを伴う土器破壊が行われた。谷頭急斜面・狭窄地形域が活動にふさわしい舞台として多用された。


2022年12月10日土曜日

土器破片分布密度

 Distribution density of pottery fragments


The distribution density of Kasori EII-style (groups 10 and 11) pottery is higher than that of Nakabyo-style pottery in the northern slope shell layer of Ariyoshi Kita Shell Mound. It seems that the reason for this is that the whole pottery came to be brought into the shell layer and that the pottery became larger.


有吉北貝塚北斜面貝層では、中峠式土器と比べ加曽利EⅡ式(第10・11群)土器の分布密度が高くなっています。その理由として、土器全体を貝層に持ち込むようになったことと、土器の大型化をあげることが出来そうです。

1 土器破片分布密度

有吉北貝塚北斜面貝層の時期別土器破片数はつぎのようになります。


土器破片数

加曽利EⅡ式(第10・11群)土器の破片数がダントツに多くなっています。

土器破片が分布するグリッド数を時期別にみると次のようになります。


分布グリッド数。

分布グリッド数でみると各期の数値の差は縮まります。中峠式土器と加曽利EⅢ式土器の順位が土器破片数と比べて逆転します。これは、中峠式期の方が加曽利EⅢ式期より、より広い空間を土器投棄活動(土器投棄による願掛け活動)に利用していたことを示しています。

土器破片数/分布グリッド数を求めるとその数値は土器破片分布密度を指標しています。


土器破片数/分布グリッド数

分布密度からみても加曽利EⅡ式(第10・11群)土器がダントツの数値となります。加曽利EⅢ式土器は中峠式土器とくらべて分布域が狭いにもかかわらず、分布密度が大きくなります。

2 加曽利EⅡ式(第10・11群)土器と加曽利EⅢ式土器の破片数と分布密度の数値が大きい理由

加曽利EⅡ式(第10・11群)と加曽利EⅢ式土器の破片数と分布密度の数値が大きい理由として、次の2つの要因も大きく関係しているように感じますので、メモしておきます。

ア 投棄部位の違い

中峠式土器と加曽利EⅡ式(第10・11群)土器を比べると、中峠式土器は口縁部の突起が主な投棄部位であるように観察できます。一方、加曽利EⅡ式(第10・11群)土器は土器全体が投棄部位であるように観察できます。

イ 土器の大きさの違い

中峠式土器の大きさと比べ加曽利EⅡ式(第10・11群)土器には巨大なモノが目立ちます。通常調理用ではなく、大量堅果類のアク抜きなどに使われたモノので、集団組織作業で使われる専門的土器のようです。この手の土器は中峠式土器にはありません。


北斜面貝層から出土した中峠式土器 例


北斜面貝層から出土した加曽利EⅡ式(第10・11群)土器 例

3 感想

中峠式期には自分の土器の把手をちぎり取り、それを投棄して願掛けしたという個人レベルの活動がメインであったようです。一方、加曽利EⅡ式(第10・11群)期には集団が所持する巨大土器を集団が貝層に持ち込み破壊し、その大量破片を各所にばら撒き、集団的な願掛け活動をおこなったようです。

4 参考 有吉北貝塚北斜面貝層 時期別土器破片分布


有吉北貝塚北斜面貝層 時期別土器破片分布



有吉北貝塚北斜面貝層の時期別土器破片分布

 Distribution of pottery fragments by period in the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound


I made a number of grid maps of the distribution of pottery fragments by time on the northern slope shell layer of the Ariyoshi Kita Shell Mound and arranged them. The Kasori EII period, where a large amount of pottery fragments were unearthed, is of particular interest in the excavation report. However, initial pottery and early pottery have also been excavated, and it can be confirmed that this space is a special space that was continuously used from the initial to the early and middle Jomon periods.


有吉北貝塚北斜面貝層の時期別土器破片分布図をグリッド図で作成して、並べてみました。土器破片が集中大量出土する加曽利EⅡ式期が発掘調査報告書では特に注目されています。しかし早期土器や前期土器の出土も確認されていて、この空間が縄文早期から前期・中期と継続して利用されていた特別な空間であることが確認できます。

1 有吉北貝塚期時期別土器破片分布


有吉北貝塚期時期別土器破片分布


有吉北貝塚期時期別土器破片分布 グリッド分布図の貝層形成直前地形投影図

青線:ガリー侵食地形外縁線、赤線:貝層分布域

2 メモ

・北斜面貝層空間が縄文早期、前期、中期と継続的に利用された場所であることが確認できます。

・早期土器から加曽利EⅢ式土器までの8時期の土器破片分布図を順番に眺めると、土器投棄分布の様相が無茶苦茶なものではなく、投棄場所に一貫した志向性があることを想起させるものとなっています。その志向性は貝層形成直前地形と関連していることは確実です。

・すべての期(8期)について、上流側(ガリー侵食谷頭部とその直下狭窄部流路)と下流側に土器破片分布が存在しています。土器破片投棄数が多い加曽利EⅡ式(第10・11群)土器と加曽利EⅢ式土器は上流側分布と下流側分布が連続しています。その分布連続性は土器破片投棄活動が連続した結果を表現していて、流水による土器破片移動の影響は微弱であると考えられます。

・土器破片投棄は単純な土器廃棄活動の結果ではなく、祈願活動(願掛け)の結果を表現していると考えます。従って、土器破片分布図は祈願活動分布図(願掛け活動分布図)として読み替えすることが可能であると考えます。

・土器投棄と貝投棄は恐らく連動していると想像します。縄文前期には北斜面貝層に貝投棄が始まっていていたと想像します。


2022年12月8日木曜日

土器破片出土総数と出土時期数

 Total number of excavated pottery fragments and the number of excavation periods


The total number of excavated pottery fragments and the number of excavated periods of pottery from the north slope shell layer of the Ariyoshi Kita Shell Mound were expressed as a 2D grid map, and they were UV-projected onto the topography just before the formation of the shell layer and observed in 3D space. It is interesting that the major distribution areas of the total number of pottery fragments and the number of excavation periods are different.


有吉北貝塚北斜面貝層の土器破片出土総数と土器出土時期数を2Dグリッド図として表現し、それらを貝層形成直前地形にUV投影して、3D空間で観察しました。土器破片総数と出土時期数の主要分布域が異なることは興味深いことです。

1 土器破片出土総数と土器出土時期数(2Dグリッド図)


土器破片出土総数(2Dグリッド図)

QGISで作成。

早期、前期、阿玉台式、中峠式、加曽利EⅠ式、加曽利EⅡ式(第9群)、加曽利EⅡ式(第10・11群)、加曽利EⅢ式の土器破片出土総数。


土器出土時期数(2Dグリッド図)

QGISで作成。

早期、前期、阿玉台式、中峠式、加曽利EⅠ式、加曽利EⅡ式(第9群)、加曽利EⅡ式(第10・11群)、加曽利EⅢ式を全8時期としたときの土器出土時期数。

2 土器破片出土総数と土器出土時期数(2Dグリッド図の貝層形成直前地形への投影図)


土器破片出土総数(2Dグリッド図の貝層形成直前地形への投影図)

Blenderで作成。


土器出土時期数(2Dグリッド図の貝層形成直前地形への投影図)

Blenderで作成。

3 メモ

土器破片出土総数の主要分布域は谷頭部直下の流路狭窄部にありますが、土器出土時期数の主要分布域は下流部に有ります。この違いから、土器が特別に密集する空間と、縄文時代の長期にわたって土器が投棄されてきた空間が微妙に異なることがわかります。

土器が特別に密集する空間での土器はほとんどが加曽利EⅡ式(第10・11群)土器と加曽利EⅢ式土器です。長期にわたって土器が投棄されてきた空間には平場があります。


土器密集空間と長期土器投棄空間

今後、土器及び各種遺物の2Dグリッド分布情報を分析してその結果を地形投影して3D空間で観察し、北斜面貝層空間の特性の考察を深めることにします。


2022年12月3日土曜日

BlenderとQGISを連携して使う分析

 Analysis using Blender and QGIS together


I decided to collaborate Blender and QGIS for 3D spatial analysis of the north slope shell layer of Ariyoshi Kita Shell Mound. Map the grid information database and its analysis results with QGIS. Project the analysis map into Blender3D space to observe and consider in 3D space.


有吉北貝塚北斜面貝層の3D空間分析をBlenderとQGISをコラボレーションさせて行うことにしました。グリッド情報データベースとその分析結果をQGISで地図化します。分析地図をBlender3D空間に投影して、3D空間で観察・考察します。

1 グリッド情報データベース

有吉北貝塚北斜面貝層のグリッド単位情報をデータベース化します。


有吉北貝塚・北斜面貝層のグリッド体系

これまで次の項目についてグリッド単位情報(出土数など)をExcelで作成しています。

●これまでに3D情報あるいはグリッド単位情報を作成した項目

・土器破片出土数(早期、前期、阿玉台式(第2~5群)、中峠式(第6群)、加曽利EⅠ式(第7・8群)、加曽利EⅡ式(第9群)、加曽利EⅡ式(第10・11群)、加曽利EⅢ式(第12群)

・散乱人骨

・アリソガイ・ハマグリ磨貝

・土器片錘

・ハマグリ貝刃

・石鏃

・装飾品(貝製品)

・装飾品(骨角歯牙製品)

・イノシシ顎骨

・磨製石斧

・打製石斧 など

これらのExcelファイルをFileMakerのリレーション機能を利用して効率的にデータベース化します。

2 グリッド情報データベースを使った分析

グリッド情報データベースをQGISと連動して作成します。データベースを使って、項目別分布観察や項目間関連分析(オーバレイ分析)あるいは多項目を使う多変量解析を行い、北斜面貝層の空間特性を浮き彫りにします。分析・解析にはRあるいはPythonを使います。分布状況や分析結果地図はQGISで表示します。


装飾品(骨角歯牙製品)分布図(QGIS表示)

3 分布状況や分析結果のBlender3D空間表示

QGISで地図化した分布状況や分析結果は、Blender3D空間の地形モデルへUV投影して、3D空間で土器分布、貝層分布、地形分布などと一緒に観察・考察します。


装飾品(骨角歯牙製品)分布図(2D分布図)の地形モデルへのUV投影(Blender3D空間)

4 感想

項目別分布や分析結果を平面図環境で考察するのではなく、Blender3D空間で考察することによって、考察がより空間事実に即したものになり、かつ総合化したものになり、その質が高まることを期待します。


2022年11月28日月曜日

とうとう縄文人が土器をばら撒いた証拠を見つける

 Evidence found that Jomon people scattered pottery


In the 3D distribution of pottery in the north slope shell layer of Ariyoshi Kita Shell Midden, I finally found evidence that the Jomon people scattered pottery. This ended my confusion. I presume that it was scattered by "wishing".


有吉北貝塚北斜面貝層土器3D分布で、とうとう縄文人が土器をばら撒いた証拠を見つけました。自分自身の迷いはこれで終わりました。「願掛け」でばら撒いたと推測します。

1 395土器(加曽利EⅢ式有孔鍔付土器)破片分布3Dモデル

有吉北貝塚北斜面貝層 395土器(加曽利EⅢ式有孔鍔付土器)破片分布3Dモデル


接合復元された395土器(加曽利EⅢ式有孔鍔付土器)

紫色立方体…土器破片(全ての土器破片を一律30㎝×30㎝×30㎝で表現)

緑色曲面…貝層中の貝層-土層境界面

白色線…地形断面線(2m間隔)、地形境界

垂直:水平=1:1

395 pottery (Kasori EIII type pottery with perforated collar) Fragment distribution 3D model

North Slope Shell Layer of Ariyoshi Kita Shell Mound

395 pottery (Kasori EIII type pottery with perforated collar) Fragment distribution 3D model

395 restored pottery jointed (Kasori EIII type pottery with perforated collar)

Purple cube: pottery fragment (all pottery fragments are uniformly expressed in 30 cm x 30 cm x 30 cm)

Green curved surface: Shell layer-soil layer interface in the shell layer

White line: terrain cross-section line (2m interval), terrain boundary

vertical:horizontal=1:1


395土器(加曽利EⅢ式有孔鍔付土器)破片分布3Dモデル画像


395土器(加曽利EⅢ式有孔鍔付土器)破片分布3Dモデル動画

2 395土器3D分布の解釈


395土器3D分布の解釈

ア 1は土層に、2は貝層に存在するので、流水の営力で上流から1→2のように分布したことは否定される。

イ 9・10・11は貝層に、12は土層に存在するので、流水営力で9・10・11→12のように分布したことは否定される。なお、12は9・10・11より高度が高い。

ウ 7で土器が破壊され、その破片が重力や流水営力で落下移動したと考えると1・2・3・12などは場所が離れているので、その分布を説明できない。

エ ア・イ・ウから395土器破片分布は、縄文人が土器破片をバラバラの場所に投棄して歩いたと考えざるを得ない。

395土器3D分布は縄文人が廃用土器を破壊してばら撒いて歩いた確実な証拠であると考え、別の考え(※)に迷うことから解放されることになりました。

※「土器がある場所で破壊され、その破片が重力や流水営力で自然拡散して分布した」など。

3 廃用土器の破壊ばら撒き活動の意味

廃用土器の破壊ばら撒き活動の意味は「願掛け」(祈願活動)であったと推測します。奈良平安時代の墨書土器破壊投棄活動や現代に伝わる各地「かわらけ投げ」は縄文人の廃用土器破壊ばら撒き活動にそのルーツを有すると考えます。

不用になった土器はそのまま放置遺棄するのではなく、破壊して投棄することが早期以来縄文人の一般活動様式であるように想像します。いわゆる土器塚はその活動跡と考えます。

一般に破壊ばら撒き活動は土器だけでなく、土偶でも顕著だと言えます。

4 参考 395土器オリジナル分布情報(追記20221129)


395土器の分布(平面図)


2022年11月26日土曜日

有吉北貝塚北斜面貝層の土器投棄パターン検討

Examination of the pottery dumping pattern of the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound

The topography and stratigraphy of the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound was estimated from the shell layer cross-section. Then, the patterns of earthenware fragment dumping were classified into the slope dumping type and the valley bottom sedimentation type. Finally, I deduced the reality of the dumping pattern.

有吉北貝塚北斜面貝層における土器破片出土位置の地形・貝層層位を貝層断面図から推定して、土器破片投棄パターンを斜面投棄型と谷底堆積型に分類して把握し、投棄パターンの実態を推察しました。
1 投棄パターンの分類

投棄パターン分類
斜面地形、斜面貝層から出土する土器破片は斜面上から投棄された土器の一部であると考え、斜面投棄型として分類しました。
低平地形、谷底堆積貝層から出土する土器破片は次の2つの要因によりその場に堆積したものと考え、合わせて谷底堆積型として分類しました。
1 斜面投棄型の土器破片が重力と水流により低平地形、谷底堆積貝層まで落ちてきた(流れてきた)
2 低平地形、谷底堆積貝層の空間で土器が破壊されその場、あるいは水流の影響を受けて下流に堆積した
2 阿玉台式(第2~5群)土器の投棄パターン

阿玉台式(第2~5群)土器の投棄パターン
土器破片数は12点だけですが、谷頭部における斜面投棄型5点が特徴的です。
3 中峠式(第6群)土器の投棄パターン

中峠式(第6群)土器の投棄パターン
土器破片数は88点でそのうち斜面投棄型が79点を占めます。斜面上部から下方に土器を投げ、その破片が散らばった様子が観察できます。中峠式(第6群)土器投棄パターンから、斜面から投棄された土器破片が谷底低平地に到達するものはわずかであることが推察できます。
4 加曽利EⅠ式(第7・8群)土器の投棄パターン

加曽利EⅠ式(第7・8群)土器の投棄パターン
土器破片数は20点で11点が斜面投棄型、9点が谷底堆積型となります。
5 加曽利EⅡ式(第9群)土器の投棄パターン

加曽利EⅡ式(第9群)土器の投棄パターン
土器破片総数は31点で斜面投棄型18点、谷底堆積型13点です。斜面投棄型は谷頭部と下流左岸(西岸)斜面に集中しています。
6 加曽利EⅡ式(第10・11群)土器の投棄パターン

加曽利EⅡ式(第10・11群)土器の投棄パターン
土器破片総数は445点です。この数値は実際に出土した土器破片数の一部のようです。斜面投棄型120点、谷底堆積型319点となり、谷底堆積型が斜面投棄型の2.7倍になります。中峠式土器の投棄パターンから、斜面に投棄された土器破片のうち谷底低平地にまで到達するものはごく少数であると考えられるので、加曽利EⅡ式(第10・11群)土器は縄文人が谷底部までやってきて、そこで土器を破壊したり、投棄したりすることが多かったと推察できます。
斜面投棄型は主に谷頭部と下流左岸斜面に集中します。谷底堆積型は谷頭部と下流左岸斜面を結ぶ谷底部です。ほとんどの貝層断面図では谷底部で貝層-土層境界面がみられ、それは水流が流れる時の流心線に対応すると考えますが、谷底堆積型はその貝層-土層境界面をまたいで分布することから、水流に起因する分布ではなく、人為的分布(場所を特定した投棄)であるこを推察できます。
土器破片全体の分布パターンはS字状のカーブを成していますが、それは縄文人の動線を示していて、その背後にはS字状動線が生じるような野外祭壇や祭場の分布が存在していたと推測します。
7 加曽利EⅢ式(第12群)土器の投棄パターン

加曽利EⅢ式(第12群)土器の投棄パターン
土器破片数は106で谷底堆積型が64点で斜面投棄型41点を上廻ります。谷底堆積型の分布重心は加曽利EⅡ式(第10・11群)土器より下流に移動します。
8 阿玉台式~加曽利EⅢ式(第2~12群)土器の投棄パターン

阿玉台式~加曽利EⅢ式(第2~12群)土器の投棄パターン
2~7の情報集成図です。この図から「土器投棄パターンからみたゾーン区分」を試みてみました。

有吉北貝塚北斜面貝層 土器投棄パターンからみたゾーン区分
斜面投棄ゾーンは4ゾーンから構成していると考えます。土器投棄量からみて谷頭投棄ゾーンと斜面投棄ゾーン3の2つがメインです。谷底投棄ゾーンは谷頭投棄ゾーンと斜面投棄ゾーン3を連結するように分布します。各ゾーンにはそれぞれ異なった機能が存在していたと推測します。その機能の姿には他の出土遺物情報と土器情報を総合的に分析することで迫りたいと思います。
9 中峠式(第6群)土器投棄パターン 3Dモデル
中峠式(第6群)土器投棄パターン 3Dモデル
有吉北貝塚北斜面貝層
黄色…斜面投棄型 79
赤色…谷底堆積型 8
3D model of Nakabyo style (Group 6) pottery dumping pattern
North Slope Shell Layer of Ariyoshi Kita Shell Mound
Yellow... Slope dump type 49
Red... Valley bottom deposition type 8
10 参考 加曽利EⅡ式(第10・11群)土器投棄パターン 3Dモデル
加曽利EⅡ式(第10・11群)土器投棄パターン 3Dモデル
有吉北貝塚北斜面貝層
黄色…斜面投棄型 120
赤色…谷底堆積型 319
黒色…不明 6
3D model of Kasori EII style (10th and 11th groups) pottery dumping pattern
North Slope Shell Layer of Ariyoshi Kita Shell Mound
Yellow... Slope dump type 120
Red... Valley bottom deposition type 319
Black...Unknown 6
11 参考 加曽利EⅡ式(第10・11群)土器投棄パターン3Dモデルの動画

加曽利EⅡ式(第10・11群)土器投棄パターン3Dモデルの動画