2013年9月1日日曜日

参考 「戸」地名GISプロットの実際

花見川地峡の自然史と交通の記憶 70

2013.08.27記事「「戸(と、ど)」地名検討の中間報告」で紹介した千葉市と八千代市分の戸地名プロット図の実際の作成方法を参考までに記録しておきます。

なお、千葉市分については、次に述べるように、地べたを這いずり回るような、苦役を甘受せざるを得ない方法です。しかし、一旦GISプロットが終わると、その情報の活用可能性は大きく広がり、プロットの苦労はむくわれてあまりあるとも思います。
もっと合理的・効率的方法がないものか、是非とも見つけたいと思案中です。

八千代市と千葉市分の戸地名分布図
赤丸は大字、青三角は小字

1 千葉市分の「戸」地名のGISプロット方法
1-1 「戸」地名リストの作成
千葉市の全ての小字の一覧表示リストは千葉県地名大辞典(角川書店)に附録として掲載されています。
また、町丁目別の小字リストは千葉市小字図(和田茂右衛門)に掲載されています。
私は千葉県地名大辞典のリストから「戸」地名をピックアップし、パソコン上に町丁目別「戸」地名小字リストを作成しました。

千葉県地名大辞典の小字リスト(一部)
ルビがついているので貴重な情報である。

この町丁目別小字リストを電子化するだけでも、そこから有用な情報を沢山得ることが出来ると思います。
しかし残念ながら、電子化された千葉市町丁目別小字リストは千葉市役所にはありません。またDVD化された角川日本地名大辞典にも小字リストは掲載されていません。

作成した町丁目別「戸」地名小字リスト(部分)
市町
大字
小字
千葉市
中央区
(末広町一丁目)
下出戸
(末広町二丁目)
西井戸、下出戸
(寒川町一丁目)
下出戸内谷(シモデドウチヤツ)
(寒川町二丁目)
下出戸
(新町)
東出戸
登戸町(ノブトチョウ)一丁目
東出戸
登戸町(ノブトチョウ)二丁目
東出戸
登戸町(ノブトチョウ)三丁目

登戸町(ノブトチョウ)五丁目

稲毛区
(黒砂町)
渡戸(ワタド)
(稲毛町一丁目)
井戸川
(稲毛町二丁目)
井戸川
(作草部町)
木戸作
(宮野木町)
渡戸(ワツド)、江戸向

1-2 町丁目別小字分布図の机上用意
町丁目毎にプロット作業を行うので、作業する町丁目の小字分布図を「絵にみる図でよむ千葉市図誌」の上巻あるいは下巻から探します。

私の場合、花見川区付近以外の千葉市町丁目の概略位置や所属区を、最初は良く知りませんでした。そのため、分厚い大冊である「絵にみる図でよむ千葉市図誌」の2巻のなかから当該町丁目の情報を探し出すだけでも、最初は心理的抵抗大でした。(作業を進めるに従って土地勘が醸成し、心理的抵抗感は薄らぎつつあります。)

「絵にみる図でよむ千葉市図誌」に掲載されている町丁目別小字分布図の例(部分拡大)

1-3 GIS画面における町丁目範囲表示
作業する町丁目付近をGIS画面上で開きます。
私の使っているGISは地図太郎PLUSです。

町丁目の概略位置を知らないことが多いので、その場合は3つ使っている画面の1つでグーグルマップを開いておき、検索機能を使ってグーグルマップで当該町丁目を表示します。その情報を参考にして、GIS上で作業する町丁目付近を表示します。

GIS画面に町丁目範囲を表示する時の画面構成

この画面構成をつくってから次のGISプロットを行います。

1-4 「戸」地名のGISプロット
机上の町丁目別小字分布図とGIS上の情報(標準地図等)を目で見て対照して、当該小字(「戸」地名)をGIS上にプロットします。

今回の作業では小字界線をなぞることはしないで、小字の中央部にこの小字の印と名称をプロットするにとどめました。

この際、次のような困難があり乗り越える必要があります。

ア 町丁目別小字分布図の方位が上が北になっていない場合があり、目で見て位置を対照することが直感的にできない場合があります。
その場合、大冊である「絵にみる図でよむ千葉市図誌」を机上で回転させて図の上が北になるようにすることもあります。

イ 宅地開発により谷津地形などが完全に失われている場所があり、小字の位置を対照できない場合があります。
その場合、GISで旧版地形図(大正6年測量)を表示して、旧地形との対照でプロットしました。

ウ リストにある「戸」地名が「絵にみる図でよむ千葉市図誌」の小字分布図に表示されていない場合があります。
その場合は、「千葉市小字図」(和田茂右衛門)等の別の情報を見て、リストあるいは「絵にみる図でよむ千葉市図誌」の双方の不備や誤り、あるいは別の事情等を検討します。問題を解決できる場合もありますが、解決できない場合もあります。(飛び地が多い場所でこのような問題が起きる場合が多いです。)

2 八千代市分の「戸」地名のGISプロット方法
八千代市は「八千代市小字図」(「八千代市の歴史 資料編 近代・現代Ⅲ石造文化財」附録)があります。八千代市都市計画図をベースマップとして作成した小字界線を描きこんだ小字図です。

八千代市小字図(部分)

この地図があるので、「戸」地名のGISプロットは楽です。
具体的には次のような方法を執りました。

2-1 「戸」地名リストの作成
千葉市と同じで、千葉県地名大辞典(角川書店)附録の市町村別小字一覧から「戸」地名リストを作成しました。

2-2 「戸」地名の「八千代市小字図」へのプロット
「八千代市小字図」をスキャナーで電子化し、その画像(JPEG)を繋ぎ合わせて1枚の地図にし、その地図をイラストレーターで立ち上げ、その地図上で「戸」地名をチェック(塗色)します。
パソコン作業ですから時間は殆どかかりません。

2-3 「戸」地名のGISプロット
1つの画面に「戸」地名をプロットした「八千代市小字図」を表示し、隣の画面にGISを表示して、両方の画面をみながらGIS上に「戸」地名をプロットします。
作業時間は数分で終わります。千葉市とは雲泥の差です。

戸地名をチェックした「八千代市小字図」とGIS画面


3 感想
ア 八千代市のように一枚の地図に小字の界線を描きこんだ小字図があるのとないのでは地名の検討に雲泥の差がでることを実感しました。
現在千葉市では、町丁目を跨いで小字地名の体系的検討をすることが事実上はできないという状況下にあることがわかりました。

イ 八千代市のような小字図(小字界線図)をGISでつくろうと模索しています。今回の作業はその予行演習みたいになりました。
その際、本(紙上)の位置情報を、目検討でパソコンに入力する作業が一番つらいこと(非効率であること)がわかりました。
今後このような作業をする場合は、本(紙上)の町丁目小字分布図をスキャンしてパソコンに取り込み、パソコン上で本の位置情報をGISに対照してみれば、作業が効率化して楽になるのではないかと思っています。

ウ 町丁目別小字リストを電子化するだけでも、現在はそのような情報がないので、有用な情報を得られると確信しました。

つづく


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