2021年4月30日金曜日

埼玉編年加曽利EⅡ式分のカード化

 縄文土器学習 589

有吉北貝塚の加曽利EⅡ式土器学習の一環として、有吉北貝塚における土器分類が準拠した埼玉編年(1982)の加曽利EⅡ式分詳細土器群分類をFileMakerによりカード化しました。これにより有吉北貝塚加曽利EⅡ式土器学習がいよいよ本格化できます。

1 埼玉編年(1982)のカード化


カードのリスト表示(一部)


カード例 Ⅺ期1群土器 楕円区画・渦巻文


カード例 Ⅻa期1群土器 楕円区画・渦巻文


カード例 Ⅻb期1群土器 楕円区画・渦巻文

2 埼玉編年加曽利EⅡ式分の概要


埼玉編年土器群分類と有吉北貝塚土器群分類の対応(加曽利EⅡ式期)

3 1群土器分類の理解

埼玉編年1群土器詳細分類を理解して整理すると次のようになります。


埼玉編年(1982) Ⅺ期・Ⅻ期(加曽利EⅡ式) 1群土器(キャリパー形土器)分類の理解

今後同様の理解を2群~7群まで行うことにします。

4 感想

埼玉編年情報をカードにすることにより、土器分類の内容が一目で理解できるようになりました。資料(研究紀要1982)を読むだけでは記述と図の対照を次々に憶える能力が自分にはないので、理解がきわめて不十分になり、結局学習充実感をいつまでも持てません。


2021年4月28日水曜日

有吉北貝塚土坑分布図作成作業 3

 縄文社会消長分析学習 89

有吉北貝塚学習の重要インフラの1つであるGIS連動土坑データベースの最初バージョンと管理システムが完成しました。使い勝手を試す意味で時期別土坑分布図を作成してみました。

1 時期別土坑分布図


有吉北貝塚 阿玉台式土器が出土した土坑


有吉北貝塚 中峠式土器が出土した土坑


有吉北貝塚 加曽利EⅠ式土器が出土した土坑


有吉北貝塚 加曽利EⅡ式土器が出土した土坑


有吉北貝塚 加曽利EⅢ・Ⅳ式土器が出土した土坑

5枚の分布図を眺めてみると次の感想が浮かびます。詳しい分布検討はあらためて行うことにします。

・阿玉台式期に既に環状分布(あるいは中央を空けた南北分布)が見られる。環状分布の様子は加曽利EⅢ・Ⅳ式期まで残る。

・阿玉台式→中峠式→加曽利EⅠ式→加曽利EⅡ式と時間経過とともに「環」が内外に拡大し、密度が増す。

・加曽利EⅡ式→加曽利EⅢ・Ⅳ式で破局的に土坑が急減する。

・環中央の空地に見事に中期土坑がゼロであることは特筆すべき事象で、その理由検討を今後大いに楽しむことにします。

2 参考 時期別土坑分布図の立体表示

垂直倍率:×3.0

DEMは1960年代千葉市都市図等高線からGRASS・QGISで生成


有吉北貝塚 阿玉台式土器が出土した土坑


有吉北貝塚 中峠式土器が出土した土坑


有吉北貝塚 加曽利EⅠ式土器が出土した土坑


有吉北貝塚 加曽利EⅡ式土器が出土した土坑


有吉北貝塚 加曽利EⅢ・Ⅳ式土器が出土した土坑

3 GIS連動土坑データベースの様子


FileMakerリレーションの様子

ア 発掘調査報告書掲載遺構分布図から土坑をQGISにプロットする。

イ 発掘調査報告書土坑一覧表を電子化する。

ウ アとイを土坑No.(SK023などの記号)で連動させる

FileMakerで土坑情報を管理することにより作業が効率的に行えます。また作業の発展に対応できます。

QGISでもテーブル結合により同じ機能を実現できます。(使い勝手がFileMakerに劣ります。)


2つのファイルを結合したFileMaker画面(表形式表示)

4 感想

有吉北貝塚学習の大きな関門であった土坑データベース作成の最初段階をなんとか突破できました。今後さらに土坑一覧表掲載情報の追加入力作業を行います。

竪穴住居データベースや土坑データベースを活用しながら、学習を内容面で深め、発掘調査報告書解読作業を楽しみ倒したいと思います。



2021年4月27日火曜日

有吉北貝塚土坑分布図作成作業 2

 縄文社会消長分析学習 88

有吉北貝塚学習の基礎データ作成作業の一環として土坑一覧表のデータベース化(電子化)とその分布図作成(QGISプロット)を目指した作業を進めてきています。2021.04.22記事で土坑データベースのExcelファイルができたのですが、そのQGISプロットが終わりましたので全体の様子をみてみました。

1 有吉北貝塚中期土坑分布図


有吉北貝塚中期土坑分布図


有吉北貝塚中期土坑分布ヒートマップ

地形の制約を受けて長円形の環状分布を観察できます。


部分拡大図

2 土坑分布図の立体表示


有吉北貝塚中期土坑分布図立体表示

垂直倍率:×3.0


有吉北貝塚中期土坑分布ヒートマップ立体表示

垂直倍率:×3.0

3 メモ

・土坑の分布図が出来ましたので、土坑出土土器学習の際に、その場所を確認できますから学習が深まります。

・土坑データベースとQGISデータベースをFileMakerリレーションシップ機能で連結することにより、土坑時期別分布図や土坑出土遺物分布図が即座に作成できるようになりました。大いに分析に活用することにします。

・竪穴住居と土坑を合わせて時期別に出土遺物分布を分析観察することにします。

・北斜面貝層出土物分布図の分析方法は追って検討することにします。


2021年4月26日月曜日

加曽利EⅡ式深鉢(No.34)(松戸市子和清水貝塚) 観察記録3Dモデル

 縄文土器学習 588

この記事では加曽利貝塚博物館R2企画展「あれもE…」で展示された加曽利EⅡ式土器(No.34)を3Dモデルで観察します。この土器はメインの文様帯であるべき口縁部が無文(磨消)になっています。

1 加曽利EⅡ式深鉢(No.34)(松戸市子和清水貝塚) 観察記録3Dモデル

加曽利EⅡ式深鉢(No.34)(松戸市子和清水貝塚) 観察記録3Dモデル

撮影場所:加曽利貝塚博物館令和2年度企画展「あれもEこれもE -加曽利E式土器 北西部地域編-」

撮影月日:2021.02.09

ガラス面越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.019 processing 59 images


展示の様子


3Dモデルの動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開

3 メモ

・土器器形はキャリパー形を呈しますが、口縁部が無文帯になっていて加曽利EⅡ式土器の本流土器(埼玉編年でいう1群土器)ではありません。

・口縁部の無文帯と垂下文が磨消になっていますが、雑な磨消になっています。


縄文の跡が残る雑な磨消

・口縁部無文帯が縄文を磨り消してつくられています。口縁部無文帯に積極的意味があるように感じます。口縁部文様帯がある土器とは用途などが違っていたのかもしれません。口縁部文様帯のある加曽利EⅡ式土器と較べると1ランク低い土器として作られ、1ランク低い用途に使われたと空想します。


2021年4月25日日曜日

Sketchfab掲載「土偶」3Dモデル検索

 縄文土器学習 587

ブログ「芋づる式読書のメモ」記事を書くためにSketchfab掲載土偶3Dモデルを検索調査してみました。

1 Sketchfab掲載「土偶」3Dモデル検索結果


Sketchfab掲載「土偶」3Dモデル検索結果

「土偶」検索でヒットしたモデルは87あります。

この中に自分が掲載したものがありますから、自分の分を検索してみました。


「土偶 arakiminoru」検索結果

自分の分は50あります。

自分の掲載した分が全体の中で多いことに驚きました。土偶だけに注力したわけでもないのに…。

次に土偶関連分布図など土偶そのものでない関連モデルを除いてあらためて集計すると次のようになります。


Sketchfab掲載土偶3Dモデル(araki以外)

27モデルあります。


Sketchfab掲載土偶3Dモデル(araki分)

45モデルあります。

2021.04.25現在日本語「土偶」で検索できる3Dモデルは全部で72あることになります。早期土偶から晩期土偶まで各時期の土偶を観察することができます。土偶学習に役立つ一つの仮想展示空間が、誰でもいつでも利用できるシステムとして、存在していることになります。

私自身も土偶について考える時には、この72の3Dモデルを大いに利用することにします。また積極的に土偶3DモデルをSketchfabに掲載していくことにします。

2 参考 私のSketchfab画面


私のSketchfab SUMMARY画面

最初の画面はSUMMARYとなっています。閲覧の多いモデルが並んでいるようです。


私のSketchfab MODELS画面

2021.04.25現在685モデルが掲載されています。

3 参考 土偶(国宝縄文のビーナス)(茅野市棚畑遺跡) 観察記録3Dモデル 

縄文中期前半土偶(国宝縄文のビーナス)(茅野市棚畑遺跡) 観察記録3Dモデル 

撮影場所:茅野市尖石縄文考古館 

撮影月日:2019.09.13 

4面ガラス張りショーケース越しに撮影 

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 59 images(Masquerade機能利用)


撮影写真の一部


3Dモデルの動画

超劣悪な撮影環境にもかかわらずまがりなりも3Dモデルが出来たことは、3DF Zephyr Lite搭載Masquerade機能のおかげです。


2021年4月23日金曜日

加曽利EⅡ式深鉢(No.66)(我孫子市西大久保遺跡) 観察記録3Dモデル

 縄文土器学習 586

この記事では加曽利貝塚博物館R2企画展「あれもE…」で展示された加曽利EⅡ式土器(No.66)を3Dモデルで観察します。この土器は連弧文土器です。

1 加曽利EⅡ式深鉢(No.66)(我孫子市西大久保遺跡) 観察記録3Dモデル

加曽利EⅡ式深鉢(No.66)(我孫子市西大久保遺跡) 観察記録3Dモデル

撮影場所:加曽利貝塚博物館令和2年度企画展「あれもEこれもE -加曽利E式土器 北西部地域編-」

撮影月日:2021.02.09

ガラス面越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.019 processing 37 images


展示の様子


3Dモデルの動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開

3 メモ

・2本一組の沈線で胴部が上下段に区分され、上段には2本一組沈線による1つの連弧文が、下段には2本一組の沈線による垂下文が描かれています。

・口唇部には2列の刺突文が巡ります。

・器形はよくみると口唇部付近でわずかな丸みをもちます。

・埼玉編年(1982)におけるⅫb期3群土器B類に該当すると考えられます。


2021年4月22日木曜日

有吉北貝塚土坑分布図作成作業

 縄文社会消長分析学習 87

有吉北貝塚学習の基礎データ作成作業の一環として土坑一覧表のデータベース化(電子化)とその分布図作成(QGISプロット)を目指した作業を進めています。ようやく土坑データベースの祖型みたいなExcelファイルができましたのでその概要を集計しました。

1 有吉北貝塚土坑一覧表


有吉北貝塚土坑一覧表(部分)

有吉北貝塚発掘調査報告書から引用

2 有吉北貝塚土坑データの概要

有吉北貝塚土坑データは770あり、そのうち時期データがあるものは644(83.6%)あります。


有吉北貝塚土坑 出土土器による区分

時期データのあるもの、つまり土器群判定ができる土器が出土した土坑を土器群別に集計すると次のようになります。


有吉北貝塚土坑の土器群別集計

この集計は一つの土坑が複数土器群に対応する場合、各土器群に1を按分比例した値を与えて集計しています。

例えば、ある土坑の土器群欄に7~9群と記載されている場合、7群、8群、9群にそれぞれ0.33333の土坑が存在していると仮想します。

7群(加曽利EⅠ式頸部無文帯成立以前)と9群(加曽利EⅡ式胴部磨消懸垂文成立以前)にピークが見られます。

このグラフをより要約して土器型式別に整理すると次のようになります。


有吉北貝塚 土器型式別にみた土坑数

有吉北貝塚の土坑は加曽利EⅠ式で急増し、加曽利EⅡ式でピークを迎え、その後壊滅的に急減したと表現することができます。

3 土坑データベースの作成とQGISプロット

今後、土坑一覧表の他のデータを電子化してデータベースとして利用できるようにします。

同時に770土坑をQGISにプロットして土坑データベースの空間分析ができるようにします。


有吉北貝塚 縄文時代遺構配置図

まず縄文時代遺構配置図をQGISにプロットし、それを手がかりに各土坑の位置をQGISにプロットする予定です。

4 感想

・竪穴住居については既にデータベースの祖型とQGISプロットが出来ています。今後土坑について同じことができると、竪穴住居と土坑を合わせて有吉北貝塚集落の空間分析が可能になります。

・土坑の土器群別集計では7群と9群でピークとなり、8群が谷になります。このグラフ形状が社会趨勢(例えば人口増→減→増)を表現しているものであるとはいえないと考えています。極端な思考として、土坑数が変化しない状況を仮想し、7群と9群の期間が長く、8群の期間が短ければ上記のようなグラフになります。

・8群の指標が総合的に組み合わされたものではなく、「頸部無文帯のあるもの」という文字通り単独のものであることから、7群と8群の区分に円満性が少ないかもしれないという疑問を持っています。

・有吉北貝塚が準拠している埼玉編年(1982)では「頸部無文帯のあるもの」という指標を確率的指標として扱っていて、絶対的な有無指標としては扱っていません。


2021年4月21日水曜日

加曽利貝塚博物館ミニ企画展示「青森県三内丸山遺跡の縄文土器」観覧

 縄文土器学習 585

加曽利貝塚博物館で令和3年5月9日までの限定で「ミニ企画展示 千葉市教育委員会収蔵品展 青森県三内丸山遺跡の縄文土器」と「特別史跡加曽利貝塚 令和2年度発掘調査速報展」が同時開催されています。遅ればせながら本日(2021.04.21)最初の観覧をしました。本日は三内丸山遺跡土器をメインに観覧しました。なお、常設展にあらたに「加曽利貝塚から出土した様々な土器」コーナーが2ケース分展示されていました。


速報展&ミニ企画展の案内看板

1 「ミニ企画展示 千葉市教育委員会収蔵品展 青森県三内丸山遺跡の縄文土器」


「ミニ企画展示 千葉市教育委員会収蔵品展 青森県三内丸山遺跡の縄文土器」の全景

三内丸山遺跡出土円筒土器16点と図解説明パネルが展示されています。三内丸山遺跡出土土器の実見は初めてなので学習参考になります。


円筒下層b式深鉢

観察記録3Dモデル作成用の撮影を行いました。

2 「特別史跡加曽利貝塚 令和2年度発掘調査速報展」


「特別史跡加曽利貝塚 令和2年度発掘調査速報展」の様子(一部)

近々再度訪問して詳しく観覧することにします。

3 「加曽利貝塚から出土した様々な土器」コーナ


「加曽利貝塚から出土した様々な土器」コーナ全景


曽利Ⅱ式深鉢


入り口展示全景

学習参考資料とするために観察記録3Dモデル作成用撮影をしました。

4 感想

・千葉市教育委員会がなぜ青森県三内丸山遺跡出土土器を収蔵しているのか、その理由をいつか誰かに聞いてみたいと思います。

・三内丸山遺跡出土土器について、図解説明パネルと現品を対照すると土器文様施文の特徴がよく理解できました。その特徴の規模は縄文圧痕などは1~2㎜程度のものが多く、肉眼では十分に判別理解できます。しかし撮影写真でそれがどこまで再現できるのか、あるいは今日の記憶が薄れた時、写真から施文特徴を読み取ることが出来るのか、少し気にかかりました。観察記録3Dモデルの出来が楽しみです。

・通常の観察記録3Dモデル作成だけでなく、顕微鏡観察のような意味での(土器一部についての)高精細で超拡大した3Dモデル作成も有りうると考えました。



2021年4月20日火曜日

加曽利EⅡ式深鉢(No.33)(松戸市子和清水貝塚) 観察記録3Dモデル

 縄文土器学習 584

この記事では加曽利貝塚博物館R2企画展「あれもE…」で展示された加曽利EⅡ式土器(No.33)を3Dモデルで観察します。この土器は曽利式土器の系統です。

1 加曽利EⅡ式深鉢(No.33)(松戸市子和清水貝塚) 観察記録3Dモデル

加曽利EⅡ式深鉢(No.33)(松戸市子和清水貝塚) 観察記録3Dモデル

撮影場所:加曽利貝塚博物館令和2年度企画展「あれもEこれもE -加曽利E式土器 北西部地域編-」

撮影月日:2021.02.09

ガラス面越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.019 processing 63 images


展示の様子

3Dモデルの動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開

GigaMesh Software Frameworkによる展開


3 メモ

・展示では「曽利式の影響を受けた土器」という説明が加えられています。

・2021.03.31記事「曽利式土器情報伝達と変形の学習」で学習した論文「谷口康浩(2002):縄文土器型式情報の伝達と変形-関東地方に分布する曽利式土器を例に-、土器から探る縄文社会 2002年度研究集会資料集(山梨県考古学協会)」では曽利式土器型式情報の伝達と変形という観点から、曽利式土器を次のA群、B群、C群に区分しています。

A群:オリジナルな曽利式に忠実な一群

B群:文様の細部の特徴や型式情報の編集に変形が生じている一群

C群:変形が著しくオリジナル標本の中にすでに類例を見出せない一群

この論文の中で、本土器はC群のサンプルとして使われています。


C群の曽利式土器

・本土器は曽利式土器のパーツを使って組み立てられていますが、曽利式土器本場では存在しない土器であるということです。