2022年9月29日木曜日

土器破片出土場所推測結果の検証と推測方法の改良

 Verification of estimation results of pottery fragment excavation locations and improvement of estimation methods


I verified the result of guessing the excavation site of the fragments of pottery No. 294 and improved the guessing method. As a result, it was found that the distribution of the fragments of pottery No. 294 was under the mixed shell soil layer, and that it was near the bottom of the pure shell layer and the mixed shell layer. It seems that the fragment distribution of the pottery No. 294 and the epoch of development of the shell layer are related.


294土器の破片出土場所推測結果を検証し、推測方法を改良しました。その結果、294土器破片分布はその下が混貝土層で、純貝層や混土貝層の真下付近にあたることが判りました。294土器破片分布と貝層発達画期が関連するようです。

1 出土場所推測結果の検証

3D空間において、土器破片出土場所と貝層断面図が厳密な意味で重なることはほとんどありません。そこで貝層の3D空間における傾斜を考慮して、土器破片を近くの断面図に投影して、その場所を貝層断面図上(貝層層位との関係における)出土場所としました。この土器破片3Dモデル分布と貝層断面図の関係把握方法を「貝層の趨勢的縦断勾配を考慮した方法」としました。

2022.09.26記事「「294土器破片と貝層断面図の関係」3Dモデルの作成と観察方法の初歩的検討

この方法により把握した294土器の横断図における破片出土場所推測結果を縦断図に投影することにより、その確からしさを検証しました。検証は貝層が分布して縦断図と関連する断面図2、4、5、11、12について行いました。


294土器破片と関連する貝層横断面図と縦断図

1-1 294土器の破片出土場所に関わる層位線(仮想)

2022.09.27記事「有吉北貝塚北斜面貝層から出土した294土器破片20個の出土貝層層位」で掲載した横断面図別の294土器破片出土場所推測結果から、横断面図別に破片出土場所に関わる層位線を仮想的に抽出しました。


294土器 破片2~10の出土場所に関わる層位線(仮想) 横断面図2


294土器 破片11・12の出土場所に関わる層位線(仮想) 横断面図4


294土器 破片13の出土場所に関わる層位線(仮想) 横断面図5


294土器 破片14の出土場所に関わる層位線(仮想) 横断面図11


294土器 破片15~17の出土場所に関わる層位線(仮想) 横断面図12

1-2 294土器関連層位線の縦断面図延伸

1-1で抽出した横断面図における「破片出土場所に関わる層位線」を横断面図と縦断面図の交差を利用して縦断面図に延伸しました。


294土器関連層位線の縦断面図延伸 横断面図2の上流側(仮想)


294土器関連層位線の縦断面図延伸 横断面図2の下流側(仮想)


294土器関連層位線の縦断面図延伸 横断面図4の上流側(仮想)


294土器関連層位線の縦断面図延伸 横断面図4の下流側(仮想)


294土器関連層位線の縦断面図延伸 横断面図5の上流側(仮想)


294土器関連層位線の縦断面図延伸 横断面図5の下流側(仮想)


294土器関連層位線の縦断面図延伸 横断面図11の上流側(仮想)


294土器関連層位線の縦断面図延伸 横断面図11の下流側(仮想)


294土器関連層位線の縦断面図延伸 横断面図12の上流側(仮想)


294土器関連層位線の縦断面図延伸 横断面図12の下流側(仮想)

1-3 検証

1-2の延伸結果を縦断面図に整理すると次のような結果となり、検証結果は「矛盾あり」となりました。


検証結果 「矛盾あり」

294土器関連層位線を縦断面図に延伸して描いた層位線(仮想)

破片2~14(横断面図2、4、5、11)の層位線と破片15~17(横断面図12)が指し示す層位線が異なります。294土器破片は同一時点でばら撒かれたものですから、この矛盾した結果を受け入れることは出来ません。

1-4 矛盾が生じた理由と対処の方向

Blender3D空間に身を置いて、この矛盾が生まれた理由を検討しました。その結果次の理由が判明しました。

・横断面図12付近は貝層が分布する凹地地形(ガリー侵食地形)の下流側端にあたり、貝層分布が基盤成田層の小崖付近で激しく変化する場所です。そして、横断面図の配置がその急変する貝層分布を表現出来るようになっていません。この事情から、断面図間で貝層が趨勢的に変化するという前提が成り立ちません。このいわば特殊状況を考慮しないため、(激しい貝層変化に無頓着であったため)、矛盾が生じました。

・同時に、激しい貝層変化そのものを知ることは(断面図間の貝層変化を趨勢的な方法以外で推測することは)、それができないことは最初から自明です。

・できることは、大勢的に整合し、正しいと推測できる破片2~14(横断面図2、4、5、11)の結果を矛盾した破片15~17(横断面図12)に適応して、破片位置から逆に貝層層位を推測することです。

2 土器破片出土場所推測方法の改良

「貝層の趨勢的縦断勾配を考慮した方法」(2022.09.26記事)で設定した方法に次の項目を追加して、この方法の改良版とします。

・同一土器の破片を対象にして、貝層の趨勢的勾配を考慮して土器破片と貝層層位を対応させて得た情報で矛盾が生まれた場合、大勢的に正しいと考えられる土器破片と貝層層位との関係を適用して、土器破片から逆に貝層層位を推測する。

・貝層変化が趨勢的に変化していないことが自明の場合にもこの逆思考(土器破片が貝層層位を推測する)を適用することにします。

より具体的には次のようなステップを踏むことにします。

・矛盾解消の方法として、別の場所で判明しているその土器破片の層位を、解決すべき場所に適用して、そこで観念される貝層層位の変化(非趨勢的な急激変化)が堆積学合理的に推測できるならば、それを使うことにします。

3 改良方法による土器破片出土場所推測と関連層位線の仮想

逆思考を内包した改良方法により作成した、横断面図12、13、15の土器破片出土場所に関わる層位線(仮想)を次に示します。


294土器 破片15~17の出土場所に関わる層位線(仮想) 更改版 横断面図12


294土器 破片18・19の出土場所に関わる層位線(仮想) 更改版 横断面図13


294土器 破片20の出土場所に関わる層位線(仮想) 更改版 横断面図15

4 294土器破片層位の縦断図投影


294土器関連層位線を縦断面図に延伸して描いた層位線(仮想) 更改版

考察 

混貝土層(黄色)の堆積が谷頭から下流部まであり、その堆積途中で294土器破片が広域にばらまかれました。294土器破片がばら撒かれた直後に純貝層(桃色)と混貝土層(緑色)投棄が行われました。この現象から、貝層投棄の画期と294土器破片ばら撒きが対応すると考えます。

5 感想

・土器破片を貝層層位との関係で分析するインフラ(Blenderシステム)と方法(投影方法と矛盾解消方法)の基礎が出来てきました。

・今後294土器以外の多数土器について貝層との関係を分析して情報を得ることにします。

・多数土器について、土器破片と貝層層位との関係が明らかになれば、その情報を利用して、断面図間で貝層が趨勢的に変化するという思考を捨て、同一土器破片分布から断面図間の貝層3D分布を推測することが可能になるかもしれません。


2022年9月27日火曜日

有吉北貝塚北斜面貝層から出土した294土器破片20個の出土貝層層位

 The shell stratigraphy of 20 pottery fragments No. 294 unearthed from the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound


The stratigraphy of 20 pieces of No. 294 pottery fragments unearthed from the northern slope shell layer of Ariyoshi Kita Shell Mound was confirmed by correlating the 3D distribution data of the pottery fragments with the cross section of the shell layer. This is a basic work to know the stratigraphic continuity of shell strata using the same pottery fragment as a simultaneity index.

More about this source textSource text required for additional translation information

Send feedback

Side panels


有吉北貝塚北斜面貝層から出土した294土器破片20個の出土貝層層位を土器破片3D分布データと貝層断面図を対応させて確認しました。同一土器破片を同時性指標として活用して、貝層層位連続性を知るための基礎作業です。

1 294土器破片番号

294土器破片20個に次のように番号を与え識別できるようにします。


294土器破片番号

2 294土器の破片別出土場所推測

2-1 294土器 破片1の出土場所推測


294土器 破片1の出土場所推測

ガリー侵食地形を埋める混貝土層から出土していると推測できます。

2-2 294土器 破片2~10の出土場所推測


294土器 破片2~10の出土場所推測 横断面図2

破片2~10の出土場所は純貝層最下部または混貝土層・混土貝層最上部のどちらかであると推測できます。

2-3 294土器 破片11・12の出土場所推測


294土器 破片11・12の出土場所推測 横断面図4

破片11・12の出土場所は混土貝層であると推測できます。

2-4 294土器 破片13の出土場所推測


294土器 破片13の出土場所推測 横断面図5

破片13の出土場所は混貝土層であると推測できます。

破片13の出土状況は平面図と発掘写真が発掘調査報告書に掲載されています。発掘写真をみると、294土器破片は他の多数土器破片と一緒に出土しています。


294土器 破片13の出土資料

2-5 294土器 破片14の出土場所推測


294土器 破片14の出土場所推測 横断面図11

破片14の出土場所は混貝土層であると推測できます。

2-6 294土器 破片15~17の出土場所推測


294土器 破片15~17の出土場所推測 横断面図12

破片15の出土場所は混土貝層か混貝土層、破片16・17の出土場所は混貝土層であると推測できます。

なお、破片16・17はそれだけを「貝層の趨勢的縦断勾配を考慮した方法」で推測すると純貝層か混貝土層のどちらかになりますが、破片15との同時性がありますから、純貝層という推測は否定されます。


破片16・17の推測根拠

2-7 294土器 破片18・19の出土場所推測 


294土器 破片18・19の出土場所推測 横断面図13

破片18・19の出土場所は土層であると推測できます。出土場所土層は294土器の他の破片が出土する混貝土層と同時異相の関係にあると想定します。

2-8 294土器 破片20の出土場所推測 


294土器 破片20の出土場所推測 横断面図15

破片20の出土場所は土層であると推測できます。出土場所土層は294土器の他の破片が出土する混貝土層と同時異相の関係にあると想定します。

3 メモ

294土器の破片20個全部についてそれが貝層断面図のどの場所から出土しているか詳しく観察することができました。次の記事で、この結果に基づいて横断面図間の貝層連続性を検討します。


2022年9月26日月曜日

「294土器破片と貝層断面図の関係」3Dモデルの作成と観察方法の初歩的検討

 The 3D model of "Relationship between 294 pottery fragments and cross-section of the shell layer" and observation method.


I created a 3D model of "Relationship between 294 pottery fragments and cross-section of the shell layer". At the same time, a basic study was conducted on how to grasp the relationship between the 3D distribution of pottery fragments and the stratigraphy of shell layers. In the future, I aim to acquire new knowledge on shell layer continuity through more detailed investigations.


「294土器破片と貝層断面図の関係」3Dモデルを作成しました。同時に、土器破片3D分布と貝層層位との関係把握方法について初歩的な検討しました。今後さらに詳しく検討して貝層連続性に関する新知見獲得を目指します。

1 「294土器破片と貝層断面図の関係」3Dモデルの作成

294土器破片の3D分布、貝層断面図15枚及び土器片分布平面図・立面図をBlender座標に同寸でプロットしました。

「294土器破片と貝層断面図の関係」3Dモデル

294土器破片:赤小立方体


貝層断面図凡例(貝層断面2の例)

赤小立方体の大きさは0.1m×0.1m×0.1mで、3Dモデル正面からみて左下奥の頂点が正確な出土ポイントを指す。土器片分布平面図の緑線メッシュは2m×2m、立面図は2m×1m。

土器片分布平面図、立面図、貝層断面図は有吉北貝塚発掘調査報告書から引用・塗色

"Relationship between 294 pottery fragments and cross-section of the shell layer" 3D model

"Relationship between 294 pottery fragments and cross-section of the shell layer" 3D model

294 Pottery Fragment: Red Small Cube

Shell layer cross section legend (example of shell layer cross section 2)

The size of the red small cube is 0.1m x 0.1m x 0.1m, and the vertex in the lower left corner when viewed from the front of the 3D model indicates the exact excavation point. The green line mesh of the earthenware fragment distribution plan is 2m x 2m, and the elevation is 2m x 1m.

The pottery fragments distribution plan, elevation, and cross-section of the shell layer are quoted from the Ariyoshi Kita Shell Mound Excavation Report and colored.

次に、このモデルの主要情報だけを抜き出して、シンプル版をつくりました。

「294土器破片と貝層断面図の関係」3Dモデル (シンプル版)

294土器破片:赤小立方体

貝層断面図凡例(貝層断面2の例)(上に同じ)

赤小立方体の大きさは0.1m×0.1m×0.1mで、3Dモデル正面からみて左下奥の頂点が正確な出土ポイントを指す。

貝層断面図は有吉北貝塚発掘調査報告書から引用・塗色

"Relationship between 294 pottery fragments and cross-section of the shell layer" 3D model (simple version)

294 Pottery Fragment: Red Small Cube

Shell layer cross section legend (example of shell layer cross section 2)

The size of the red small cube is 0.1m x 0.1m x 0.1m, and the vertex in the lower left corner when viewed from the front of the 3D model indicates the exact excavation point. 

The shell layer are quoted from the Ariyoshi Kita Shell Mound Excavation Report and colored.


3Dモデル(シンプル版)の動画

2 土器破片3D分布と貝層断面図の関係把握方法

2-1 単純投影方法について

貝層断面図は縦断図1枚、横断図14枚が描かれています。


貝層断面図配置の様子

当初は、貝層断面図横断図の内13枚は2mピッチと短い距離であることから、土器破片を最寄りの横断面図にY軸方向(縦断方向)に投影して、該当する貝層層位がその土器破片の出土層位であるとすればよいと考えました。(単純投影方法)

しかし、実際の3Dモデルをみると、貝層が縦断方向にきつい勾配を有しているところが広範囲にわたっています。このため、単純投影方法では土器破片と貝層層位の対応は大きな誤差が生まれることは明白です。従って、単純投影方法は採用できないことを悟りました。

2-2 貝層の趨勢的縦断勾配を考慮した方法

貝層の縦断方向勾配は上流で急であり、下流で緩やかです。その様子は全体として趨勢的に変化しているように見えます。そこで、断面図毎にその場所の貝層層位(貝層分類)が趨勢的な勾配を持って上下流方向に分布していると仮想します。その仮想貝層3D分布と土器片3D位置を対応させて、土器片が出土する貝層層位を把握することにします。趨勢的勾配で仮想する貝層が現実に存在した貝層とどれだけの精度で対応するのかは不明ですが、「単純投影方法」とくらべればはるかに高い精度になります。この方法を「貝層の趨勢的縦断勾配を考慮した方法」と呼ぶことにします。

294土器は横断面図2付近に9個の土器破片が分布します。この9個の土器破片について「貝層の趨勢的縦断勾配を考慮した方法」を適用すると次のようになります。


294土器の横断面図2付近における「貝層の趨勢的縦断勾配を考慮した方法」適用 上流側


294土器の横断面図2付近における「貝層の趨勢的縦断勾配を考慮した方法」適用 下流側

土器破片9個の出土貝層層位問題はそれが純貝層とどのような関係にあるかということに集約されます。

これまでの学習作業で、純貝層から出土する遺物はほとんどなく、遺物のほとんどは純貝層下の混貝土層や混土貝層から出土することが判っています。

そこで、純貝層の断面がそのままの形状で縦断方向にこの付近の趨勢的勾配で存在していたと模式的に仮想して、その模式仮想貝層に294土器破片9個が対応するかどうか調べてみました。

なお、この付近の趨勢的縦断勾配は貝層断面図1(縦断面図)を利用してもよいのですが、土器破片9個の縦断勾配の方がより正確なので、それを使います。なんとなれば、この9個がばら撒かれたときの地表面の位置がこの9個の出土位置と一致し、その縦断方向線が当時の地表面の勾配であると考えられるからです。

結果として、模式仮想純貝層に対応する土器破片は、横断面2の上流側で4個の内2個、下流側で5個の内で2個ということになります。ただし模式仮想純貝層に対応するといっても全てその最下層部分です。

この結果から294土器破片は純貝層が形成される直前頃から純貝層形成開始直後頃にばら撒かれたと時間幅を持って読み取ることができます。ただし、土器破片がばら撒かれたのはある一時点であり、時間幅はありません。したがって、解釈としては「294土器破片は純貝層が形成される直前頃に(あるいは純貝層形成開始直後頃に)ばら撒かれた」という2つの異なる可能性を指摘することになります。

この2つの異なる解釈は両立できないものですから、他の情報に基づいて、どちらか一つを選択する必要があります。

2-3 貝層3Dモデル作成による方法

貝層横断面の縦断的連続性の検討は発掘調査報告書では行われていません。しかし、2-2の方法を適用して、個別土器の破片と貝層断面図情報(貝層層位)の対応が判ってくると、貝層層位の区分とその連続性が判ってきます。その時点で、判明した貝層層位区分に基づく貝層3Dモデル(貝層層位毎の3Dモデル)をBlenderで作成し、それと土器破片の対応を検討することにより、より蓋然の高い土器破片3D分布と貝層断面図の関係把握を検討することができます。この方法を「貝層3Dモデル作成による方法」と呼ぶことにし、将来の取組課題とします。

3 メモ

次の記事で、2-2の方法により294土器の全土器破片と貝層との関係を把握し、その結果を考察することにします。

2022年9月24日土曜日

有吉北貝塚北斜面貝層から出土した294番土器の破片分布3Dモデル

 3D model of fragment distribution of No. 294 pottery unearthed from the shell layer on the northern slope of Ariyoshi Kita Shell Mound


A 3D model of the fragment distribution of the No. 294 pottery unearthed from the northern slope shell layer of Ariyoshi Kita Shell Mound was created using Blender from the plan and elevation of the pottery fragment distribution. I was able to acquire rudimentary skills to complete 3D model creation in 3D space (= within Blender). The pottery shards appear to have been intentionally scattered.


有吉北貝塚北斜面貝層から出土した294番土器の破片分布3Dモデルを、土器片分布平面図と同立面図からBlenderで作成しました。3D空間内(=Blender内)で3Dモデル作成を完結する初歩的スキルを獲得できました。土器破片は意図してばら撒かれたようです。

1 有吉北貝塚北斜面貝層から出土した294番土器の破片分布3Dモデル

有吉北貝塚北斜面貝層から出土した294番土器の破片分布3Dモデル

赤点:294番土器破片の平面分布

青点:294番土器破片の立面分布

緑点:294番土器破片の3D分布

赤点、青点、緑点は0.1m×0.1m×0.1mの立方体で、3Dモデル正面からみて左下奥の頂点が正確な出土ポイントを指す。

平面図のメッシュは2m×2m、立面図のメッシュは2m×1m

土器片分布平面図、立面図は有吉北貝塚発掘調査報告書から引用


294番土器(加曽利EⅡ式土器)

加曽利貝塚博物館2018年度企画展「あれもE これもE -加曽利E式土器(千葉市内編)-」で「巨大な加曽利E式土器」として展示された様子。

3DF Zephyrv6.512でアップロード

3D model of fragment distribution of No. 294 pottery unearthed from the shell layer on the northern slope of Ariyoshi Kita Shell Mound

Red dots: Planar distribution of 294 pottery fragments

Blue dots: Elevation distribution of 294 pottery fragments

Green dots: 3D distribution of 294 pottery fragments

The red, blue, and green points are 0.1m x 0.1m x 0.1m cubes, and the vertices in the lower left corner when viewed from the front of the 3D model indicate the exact excavation points.

Plan view mesh is 2m x 2m, Elevation view mesh is 2m x 1m

The pottery fragment distribution floor plan and elevation are quoted from the Ariyoshi Kita Shell Mound excavation report.


3Dモデルの動画

2 3Dモデル作成方法(概要)

ア 土器片分布平面図、立面図の3D空間プロット

イ 土器破片出土ポイントに赤小立方体(平面図)、青小立方体(立面図)の生成(Pythonスクリプトによる操作)。

ウ イから土器破片3D座標の取得。→座標テキストファイル作成。

エ ウから土器破片座標の3D分布図作成(Pythonスクリプトによる操作)→緑小立方体の生成(Pythonスクリプトによる操作)。


3Dモデル画像

3 土器破片分布3Dモデルの活用

次のステップとして、土器破片分布3Dモデルに貝層断面図をプロットして、土器破片分布とそれが出土した貝層分類との関係を把握し、貝層の連続性や貝層と土器破片投棄との関係を考察します。同じ土器の破片が広域に分布しているので、それが出土した層位は同時点のものとして対応していると考えることが可能です。同一土器の破片が、火山灰層の中の軽石層のような同時指標として活用することができると期待します。

4 294番土器破片分布3Dモデルから導かれる興味

4-1 土器破片接合に関する超人的活動に感動

広範囲に点在する数千に及ぶ多数土器破片の中から最遠距離36mに及ぶ294番土器破片20個を特定して接合したことは驚異的超人的活動です。そのような努力が発掘調査で行われていることに感動します。体育館のような広い場所で接合作業を行うにしても、気の遠くなるような神経衰弱作業です。

4-2 土器破片はばら撒かれた

土器破片分布を大局的にみると、普段は水のないガリー流路に沿って分布しています。しかし、下流域で標高の高いところ(支流に入り込んだところ)に分布したりすることなどから、上流部で土器が破壊されて、流水で下流方向に破片が分布したと捉えることができません。他の土器破片分布と一緒に考察する必要がありますが、意図的に土器破片が広域にばら撒かれたと考えることが妥当です。そのような活動(祭祀活動)があり、その活動が土器破片接合で現代において浮かび上がったと考えます。

294番土器破片がおそらく最も広域にばら撒かれたことと、この土器の大きさが有吉北貝塚最大級であることは、どこかで通底している意味があると想像します。


2022年9月22日木曜日

遺物出土座標計測システムの構築

 Construction of a coordinate measurement system for excavated relics


I built a system in Blender to measure the coordinates (X, Y, Z) of the excavated pottery from the excavated pottery distribution map (plan, elevation) of the north slope shell layer of Ariyoshi Kita Shell Mound. This system enables pottery 3D distribution analysis.

In addition, as the next step, it will be possible to identify the excavated shell layer of pottery by correlating the excavated coordinates with the shell layer cross-section.


有吉北貝塚北斜面貝層の土器片出土分布図(平面図、立面図)から個別土器片の出土座標(X、Y、Z)を計測するシステムをBlenderの中で構築しました。このシステムにより個別土器片の出土座標を計測すれば、次のステップとして、出土座標を貝層断面図と対応させることにより個別土器片の出土貝層を突きとめることが可能になります。

1 土器片出土分布図(平面図、立面図)のBlender3D空間配置

土器片出土分布図(発掘調査報告書では「北斜面貝層土器出土状況」)(平面図、立面図)をBlender縮尺実寸に合わせて3D空間配置しました。Blender原点に北斜面貝層2mメッシュⅡ00の左上隅を対応させました。


土器片出土分布図をBlender3D空間に配置した画面


平面図配置の様子 Blender画面


立面図配置の様子 Blender画面

2 座標計測指標(赤小立方体)の3Dカーソル位置生成

3D空間に配置した土器片出土分布図(平面図、立面図)から土器片出土座標を正確に計測するために、出土位置に座標計測指標(赤小立方体)を生成させます。具体的には出土位置で3Dカーソルをクリックして、その3Dカーソル位置に座標計測指標(赤小立方体)を生成させます。3Dカーソルの3D座標及び赤小立方体の3D座標はBlender機能で取得できますから、座標計測指標(赤小立方体)を残すことによりいつでも作業を検証することができます。


3Dカーソル位置に生成した座標計測指標(赤小立方体)

X座標を手前にした場合、3Dカーソル位置に赤小立方体左下奥の頂点が対応します。赤小立方体の大きさは10㎝×10㎝×10㎝です。ちなみに、このBlender画面のメッシュは1m×1mです。

3Dカーソル位置に座標計測指標(赤小立方体)を生成するPythonスクリプトは次の通りです。

……………………………………………………………………

#一辺0.1mの色付きキューブをカーソル位置に生成する

#このスクリプトは、https://qiita.com/masterkeaton12/items/3d8245d1f301baf4c126の「立方体を生成する」スクリプトを引用一部改変したものです。


import bpy


#立方体を形成する頂点と面を定義する

verts = [(0,0,0),(0,0.1,0),(0.1,0.1,0),(0.1,0,0),(0,0,0.1),(0,0.1,0.1),(0.1,0.1,0.1),(0.1,0,0.1)]

faces = [(0,1,2,3), (4,5,6,7), (0,4,5,1), (1,5,6,2), (2,6,7,3), (3,7,4,0)]


#メッシュを定義する

mesh = bpy.data.meshes.new("Cube_mesh")

#頂点と面のデータからメッシュを生成する

mesh.from_pydata(verts,[],faces)

mesh.update(calc_edges=True)


#マテリアル、色を設定する 赤=1001、青=0011、緑=0101、黒=0001、薄緑=0111、灰=1110、黄=1101

ma = []

ma.append(bpy.data.materials.new('color'))

ma[0].diffuse_color = (1, 0, 0, 1)

mesh.materials.append(ma[0])


#メッシュのデータからオブジェクトを定義する

obj = bpy.data.objects.new("Cube", mesh)   


#オブジェクトの生成場所をカーソルに指定する

obj.location = bpy.context.scene.cursor.location


#オブジェクトをシーンにリンク(表示)させる

bpy.context.scene.collection.objects.link(obj)

……………………………………………………………………

このスクリプトは、https://qiita.com/masterkeaton12/items/3d8245d1f301baf4c126の「立方体を生成する」スクリプトを引用一部改変したものです。原著作者に感謝します。

実際にBlender画面でこのPythonスクリプトを適用すると次のようになります。


218土器の1つの土器片の出土位置で3Dカーソルをクリックして座標計測指標(赤小立方体)を生成させた様子(立面図)


同上拡大

z座標の値が4.3831mとなっています。z座標=0を標高20mに対応させていますから、この土器片の標高は24.3831mになります。x座標値、y座標値は同じ方法で平面図から求めます。

3 メモ

・土器片出土分布図(平面図、立面図)のBlender3D空間貼り付けは、Blender3D空間の座標がしっかりしているので、個別図面の各種誤差累積がなく、想定以上に高精度で出来ました。

・Pythonスクリプトを見様見真似で活用しました。Pythonスクリプト活用はBlender活用に必須であることを思い知らされました。Pythonスクリプトに習熟すれば、今回作成したスクリプトをアドオン化して、より効率的に活用できるようになると考えます。

・3D分析前半のための分析インフラ構築ができましたので、早速データ計測してみることにします。


2022年9月19日月曜日

3次元点群データのBlenderプロット

 Blender plot of 3D point cloud data


I learned how to create 3D position information data of excavated artifacts and plot the 3D point cloud data in Blender. Spatial analysis of excavated relics from the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound is likely to progress.


出土遺物の3次元位置情報データを作成し、その3次元点群データをBlenderにプロットする方法を知りました。有吉北貝塚北斜面貝層の出土遺物空間分析が捗りそうです。

有吉北貝塚北斜面貝層の3D空間分析の基礎技術となる、3次元点群データのBlenderプロット方法をメモします。

1 3次元点群データのBlenderプロット方法

次のwebページ掲載方法をそのまま使わさせていただくことにします。


点群データをBlenderにインポートするスクリプト

このwebページでは次のような点群データ(テキストファイル)をBlenderにプロットするPythonスクリプトを掲載しています。


点群データ(テキストファイル)

次のPythonスクリプトを、テキストファイルパスを調整してから、Blenderのテキストエディターにコピペして「スクリプト実行」すると点群データがBlenderにプロットされます。

……………………………………………………………………

#Blender 2.80 beta

#点群データをBlenderにインポート

#実行時は必ずオブジェクトモードにしておく


import bpy


#テキストファイルを指定

TextFilePath = 'C:/data/sagyo/xyzdata.txt'


#頂点数取得

print('Loading Text File')

fp = open(TextFilePath)

Count = 1

line = fp.readline()

while line:

    line = fp.readline().replace('\n', '')

    Count += 1

fp.close()


#オブジェクト作成

print('Creating Object')

bpy.data.meshes.new(name='ImportMesh')

bpy.data.objects.new(name='ImportObj', object_data=bpy.data.meshes['ImportMesh'])

bpy.context.scene.collection.objects.link(bpy.data.objects['ImportObj'])

Obj = bpy.data.objects['ImportObj'].data

Obj.vertices.add(Count)


#頂点の移動

i = 0

fp = open(TextFilePath)

line = fp.readline()

while line:

    dat = line.split(',')

    X = float(dat[1])

    Y = float(dat[2])

    Z = float(dat[3])

    Obj.vertices[i].co.x = X

    Obj.vertices[i].co.y = Y

    Obj.vertices[i].co.z = Z

    line = fp.readline().replace('\n', '')

    if i % 10000 == 0:

        print(i)

    i += 1

fp.close()


print('Finished : ' + str(i-1) + 'verts')

……………………………………………………………………

http://kutodatabase.com/kuto1970.shop/Works_ImportVerts.htmlから引用


点群データプロットの様子(Blender画面)

この画面では点群データを分離して各個データとして扱えるようにした様子を示しています。

分離した各個データは移動ができます。

点群データはBlenderのデフォルト機能では大きさの拡大、色塗りは出来ないようです。


点群データプロットの様子 拡大

2 点群データの作成

これまで個別土器片出土位置の3D空間における把握はillustratorを使った図学的方法で行っていました。


illustratorをつかった図学的方法による個別土器片出土位置の3D認識

これからはBlenderの3Dカーソル位置から、X座標値、Y座標値、Z座標値で扱い、分析することにします。


個別土器片出土位置の3D空間座標値獲得方法

この方法で獲得したXYZ座標値を使い、土器片をBlenderの3D空間にプロットすることにより、貝層断面図との対応を3D空間で観察することができるようになります。

あるいは土器片と石器や骨角器の3D空間における分布関連性を観察できるようになります。

3 メモ

有吉北貝塚北斜面貝層から出土した遺物の3D空間分布を座標により扱うことが出来る基礎技術を獲得できました。この技術を十分に咀嚼できれば、次の技術課題は出土遺物と貝層分類(純貝層、混土貝層、混貝土層など)等との対応分析の自動化になります。