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2019年7月11日木曜日

日本石器時代人民遺物発見地名表

縄文土器学習 182

2019.07.01記事「縄文早期条痕文系土器形式「鵜カ島台式」の表記」の続編記事です。
縄文土器形式名称「鵜カ島台式」の表記をどのようにしたらよいかわからないので、思い切って千葉県にアドバイスをもとめたところその回答をえることができました。
御多忙中にもかかわらず当方の些細な質問に誠意ある回答をしていただき文化財課および公文書館に感謝申し上げます。

1 鵜カ島台式の表記に関するアドバイス
神奈川県の地名で使われている鵜ヶ島台式を使うのがよいのではないかというアドバイスをいただきました。「千葉県の歴史」であれだけ強固に統一して使った鵜カ島台式の表記はその大冊シリーズ図書専用の表記だったようです。
公文書館の方のお話では鵜カ島台式と書いて「カ」を「ga」と読ませる表記は国語的に存在しないとのことです。
鵜ヶ島台式の表記が世の中の縄文土器記述で一番多く使われているようなので、またそれを推奨していただいたので、今後このブログでは鵜ヶ島台式を使うことにします。
なお、鵜ヶ島台表記が地名として存在している様子はWEB検索の範囲内では確認できませんでした。(鵜ヶ島台遺跡という表現は沢山ヒットします。)

2 「千葉県の歴史」で鵜カ島台式が使われた理由
時間が経ったため図書編集時の関係者と連絡がとれなく、鵜カ島台式表記が使われた図書編集時の理由は不明であるとのことでした。
ただ、帝国大学編「日本石器時代人民遺物発見地名表」(明治31年)に鵜カ島台の地名表記があることを文化財課で調べていただきました。

帝国大学編「日本石器時代人民遺物発見地名表」(明治31年) 国会図書館デジタルコレクションのページ引用

帝国大学編「日本石器時代人民遺物発見地名表」(明治31年)に出てくる鵜カ島臺
この明治年間資料が鵜カ島台土器関連の初出名称という理由で「千葉県の歴史」で鵜カ島台式表記が使われた可能性はあります。

3 感想
帝国大学編「日本石器時代人民遺物発見地名表」(明治31年)が初出であることから(あるいはまったく別の理由から)、世の中一般で使われている鵜ヶ島台式等を退けて鵜カ島台式を採用した縄文土器担当図書編集委員は本来のあるべき縄文土器形式命名法を当てはめた可能性が濃厚です。それで各執筆者を指導したことになります。心意気は千葉県レベルではなく、全国レベルであったと考えます。全国レベルで考えるべき命名法を千葉県で独自に実践しているのです。それが良いか悪いか別にして、部外者から見ると考古世界というところでは交通整理する機能が弱いという印象を受けます。学術用語不統一でも我慢する忍耐強い学術世界であるということです。
駐車場の交通整理員がいなくては「俺が俺が」ということで駐車場が混乱して渋滞していしまいます。交通整理員がいれば交通混乱は最小限となります。そして交通整理員は社会的権力者ではありません。皆がマナーとして交通整理員の指示に従っているだけです。

2019年7月1日月曜日

縄文早期条痕文系土器形式「鵜カ島台式」の表記

縄文土器学習 170

縄文早期条痕文系土器形式の一つである「鵜カ島台式」の表記におけるカタカナの「カ」の部分(発音は「ga」)をどのようにしたらよいか困っていますのでその解決のために判らない点をメモしておきます。

1 「鵜カ島台式」表記の状況
1-1 「千葉県の歴史」における「鵜カ島台式」表記
私の学習基本図書である「千葉県の歴史 資料編考古1」「同 資料編考古4」では「鵜カ島台式」(ルビはウガシマダイシキ」に統一されています。自分はそれを使ってきました。(ただし、「カ」が小さい「ヵ」に見えたのでそれを使ってきました。)

「千葉県の歴史」における「鵜カ島台式」表記

1-2 遺跡データベースにおける「鵜カ島台式」表記
千葉県遺跡データベース(WEBサイト「ふさナビ」から以前ダウンロードした千葉県教育委員会の行政資料)では「鵜カ島台式」が52レコード(遺跡)がヒットし、次のような表記になっています。

千葉県遺跡データベースにおける「鵜カ島台式」表記
全角と半角の違いを無視すると「ヶ」「ケ」「ガ」になります。

1-3 日本土器事典における「鵜カ島台式」表記
「鵜ヶ島台式」で記述や索引が統一されています。

日本土器事典における「鵜カ島台式」表記

1-4 小林達雄編「総覧縄文土器」における「鵜カ島台式」表記
条痕文土器における記述は「鵜ガ島台式」で統一されていますが、他の項目で引用的に語られる部分はほとんど全て「鵜ヶ島台式」です。さらに索引【土器群】では「鵜ヶ島台式」であり、「鵜ガ島台式」は出てきません。

小林達雄編「総覧縄文土器」における「鵜カ島台式」表記の不統一

2 「鵜カ島台式」の用語不統一の理由
自分は考古関係社会の状況を100%知らないので「鵜カ島台式」の用語不統一の理由が皆目見当がつきません。
学習基本図書「千葉県の歴史」で「鵜カ島台式」と統一されているのでそれに従っているのですが、同じ千葉県の行政資料では「鵜カ島台式」は全く使われていません。
さらに納得できないことは権威ある専門書として入手した小林達雄編「総覧縄文土器」で本文専門記述は「鵜ガ島台式」なのに、そのページを指し示す索引が「鵜ヶ島台式」と異なる不思議です。
・「鵜カ島台式」が一般化した学術的専門用語であることは間違いないと思いますが、その表記がこのようにバラバラでも考古社会は不便を感じないのでしょうか?
・「千葉県の歴史」において「鵜カ島台式」に統一されていることは、同じ県の行政資料でそれが全く使われていないことを踏まえると、「千葉県の歴史」執筆編集において強い規制力が存在したことに間違いありません。「鵜カ島台式」をどのような表記するか、その独自性を発揮することが専門性とか学術性とかの権威の象徴なのでしょうか?
・小林達雄編「総覧縄文土器」で本文と索引及び引用的記述で表記が異なるのは専門性とか学術性の権威の激突(つまり専門的意地のはりあい)なのでしょうか?
・それとも「鵜カ島台式」、「鵜ガ島台式」、「鵜ヶ島台式」などの表記の違いに対応して対象となる土器が異なる、土器区分や細分の考え方が異なるといった意味のある違いなのでしようか?
・土器形式に関して学術用語統一委員会みたいな交通整理的機能を果たす機関はないのでしょうか?

3 データベースをどのように作ったらよいか
土器学習を含めて縄文時代学習では学習ツールとして私家版遺跡データベースを充実させています。File Makerというソフトを使っていますが、千葉県だけで2万ある遺跡の検索を繰り返して行っています。その際「鵜カ島台式」「鵜ガ島台式」「鵜ヶ島台式」・・・があると検索効率が著しく落ちます。効率の問題だけでなく、そこにある重要な情報を見落とす可能性も強まります。
意味のある用語の違い(加曽利EⅡ式と加曽利E2式など)ならそれを受容すべきだと思いますが、意味が同じで表記だけ異なる土器形式用語は、データベース内部では是非とも統一したいです。
自分が作る遺跡データベースでは「鵜カ島台式」の表記をどのようにすべきか、専門家のご指導を是非とも受けたいと希望しています。
この記事を読んでいただいた方でこの問題に興味がある方がいらっしゃれば、是非ともアドバイスいただきたくお願い申し上げます。

参考 八千代市立郷土博物館における鵜カ島台式土器の展示(千葉県教育委員会所蔵)
八千代市間見穴遺跡出土

参考 鵜カ島台式土器出土遺跡