2013年8月2日金曜日

地名情報活用の成功事例

花見川地峡の自然史と交通の記憶 47

この度の高津土塁(砦跡)の発見は、地名情報を有効活用したモデル的な事例です。
高津土塁そのものの本格検討に突入する前に、忘れないうちに、発見の経緯を記録しておきます。

1 地名情報の的確な活用法について意識する(72日)
2013.07.02記事「「戸と津」に関する国立国語研究所のアドバイス」で述べたように、それまで地名情報を物事判断の決定打にしようとしていた考えを改めました。
そして、地名情報は、物事の検討を推進させる触媒(仮説)みたいなものとして捉えるようになりました。

2 小字「上高津」から高津(古代港湾)の位置を仮説する(712日)
2013.07.12記事「八千代市高津は古代港湾(仮説)」で小字「上高津」から古代港湾高津のあった場所に関する仮説を設定しました。

小字「上高津」から古代港湾の場所を仮説設定した検討図

3 古代港湾を仮説した場所に土塁発見(726日)
2013.07.26記事「高津に土塁(砦跡)新発見」で記述したように、古代港湾存在を仮説した場所の米軍空中写真を判読したところ、そこに土塁を発見しました。

土塁発見を書き込んだ米軍空中写真

「上高津」があるなら、「下高津」があるはずだ、その場所は高津川がカーブしていて、高津川流域に入るためには軍事的に要衝の地となって場所だ。その地に高津(古代直轄港湾)があるはずだ。
このような仮説があったので、米軍空中写真を実体視して、瞬間的にそれが人工工作物(土塁)であることがわかりました。
地名情報の活用法として、まことにモデル的だと思います。

4 地名の活用法
●このように、地名(特に小字)を有効活用すると、これまで不明であった歴史上の施設の位置特定に使えることが判りました。

●地名から施設の機能について知ることもできる可能性があります。
例 「上高津」隣の「堰場」の堰は関所の関で、高津(古代直轄港湾)の機能を表していると仮説できる。

●地名から現存しない、昔の地形を知ることもできると思います。
例 「堰場」隣の「名木」は渚の意味で芦太川と高津川が合流する部分にできた洲を表している。一方、天戸に「なぎ」という小字があり、花見川と犢橋川の合流部に位置する。この付近は天保期印旛沼堀割普請で地形が改変されていて、洲のイメージなどだれも持っていない。しかし、「なぎ」という地名から、洲の存在を復元して考えることができるかもしれない。

●また、地名から当時の人々の地形観(土地の見方)もわかるのではないかと考えています。
例 大字地名「大和田」は「和田」地名が一般にそうであるように川がカーブしているところを表すと考える。高津川が大きくカーブしていることを示している。高津(古代直轄港湾のあった場所)のことを指している。
川が大きくカーブする所は、高津川が平戸川に合流するところにもある。そちらのカーブの方が大きい。しかし、そのカーブは大和田の発祥に係っていない。
つまり、大和田付近の人々は高津川に意識を向けていて、より大きな川である平戸川には意識を向けていないことがわかる。高津川流域の一体感みたいなものを感じさせる。


つづく


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