2018年3月20日火曜日

私家版土坑データベースの作成 大膳野南貝塚

大膳野南貝塚後期集落 土坑の再検討 11

1 土坑再検討と感想
大膳野南貝塚後期集落の土坑について指標別に時期別分布の検討してきました。これまでに指標「体積類型」、「平面形型」、「フラスコ状、円筒状」、「貝層、漆喰」、「小ピット」、「土坑墓」について検討しました。
これまでの検討ではいまのところ「体積類型」「平面形」は土坑機能に直接結びつかないようです。
「フラスコ状、円筒状」は貯蔵庫として利用された断面であり、有用な情報であると考えます。
「貝層、漆喰」はその土坑が廃絶した時の祭祀の在り方であると考えます。土坑本来の機能と「貝層、漆喰」がどのように絡むのか、まだイメージが出来ていません。
「小ピット」は特殊的な機能を表現していると考えます。
「土坑墓」(可能性のあるものを含む)から皿状断面形が特別な意味をもつ可能性が判明しました。

時期別指標別の検討によりいろいろな事象が判ってきているのですが、どうしてもバラバラの情報であり、全体像をまとめて把握するにいたっていません。
情報がバラバラになってしまっている主要因は土坑断面形について全体を分類していないこと(発掘調査報告書で全体の分類をしていないこと)が主要因のような気がしてきました。
断面形を類型化して「フラスコ状、円筒状」、「皿状」、〇〇状、△△状、…と区分して土坑機能と対応関係を見てみることが必須であると考えます。

また、これまでの検討は発掘調査報告書のまとめ表を利用していますが、一つ一つの土坑記述には石器・土器等をはじめ獣骨を含む出土物情報が書かれています。その情報も土坑機能を考える上で重要です。

このような感想に基づいて、土坑断面形データを作成するとともに土坑データを発掘調査報告書記述で補完して、その新たに作成する総合土坑データに基づいて土坑検討を深めることにします。

そこで、当座私家版土坑データベースを作成してデータを扱いやすくし、そのデータベースをつかって土坑断面形類型化や出土物データ補完等を行い、最後に総合検討(時期別土坑機能の把握)をすることにします。

2 私家版土坑データベースの作成
次のような土坑別データベースを作成することにします。土坑総数は264基です。

私家版土坑データベース
データベースとはいっても発掘調査報告書を切り張りしてA4判1枚にまとめたものです。

しかし次の図で色分けしたように382号土坑を例にとれば、記述、土層、平面・断面、出土物がそれぞれ別のセクションに掲載されていて、一つの土坑の情報を把握することだけでも多大な労力を要します。

382号土坑情報の発掘調査報告書掲載セクション(目次)の違いを色分けした図
5つのセクションのページを見ないと全ての情報を得られません。

私家版土坑データベースができれば土坑のイメージを即座に把握できて、他の土坑との比較がとてもしやすくなります。
このシートをつかってKJ法による土坑断面類型化の作業も行うことができるようになります。

地道な作業になりますが、これをしないといつまでたっても発掘調査報告書の土坑情報を生かしたことになりません。現状の指標別バラバラ情報から抜け出すために、私家版土坑データベースを作成します。

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