2012年6月4日月曜日

河道逆行争奪の証拠2 深い谷が浅い谷を切る

花見川の前谷津では、同一谷津内で印旛沼水系が形成した浅い谷を、東京湾水系の深い谷が切っていて、河道が丸ごと争奪された状況を地形的に表現しています。

次の図は花見川の前谷津A-Bと長作川(花見川支流)の滝の清水谷津(仮称)C-Dの縦断面図の位置を示しています。

前谷津と滝ノ清水谷津(仮称)付近の地形と縦断面図位置

この図でA-1の区間は下総上位面を削る浅い谷地形となっています。
花見川団地が建設され地形改変されていますが、浅い谷そのものは形状を残していることが、現地で確認できます。
この区間に浅い谷が存在していることは、戦前期の旧版1万分の1地形図に等高線表示で表現されています。

旧版1万分の1地形図(大正6年測量)

A-1区間の浅い谷は東京湾側水系である深い谷の浸食作用で形成されたものではありません。

この浅い谷は下総上位面が陸化した直後に形成された原始的な谷津であり、西隣の芦太川の浅い谷など、近隣の浅い谷と同じく印旛沼側水系の一部であることは論を待ちません。

次にA-Bの断面図を見てみます。

前谷津A-Bの縦断面図

1と2の場所に遷急点があり、谷津の谷底が3区分されます。
A-1区間は下総上位面を削る浅い谷で印旛沼水系に由来します。
1-2区間は東京湾水系によって形成された花見川河岸段丘(立川面相当)に対比される谷底であると考えられます。
2-B区間は花見川沖積面の谷底です。

この断面図から印旛沼水系の浅い谷が東京湾水系の谷底によって切られていて、しかも平面的には印旛沼水系由来で分布していると考えられる谷津内でその現象が生じています。

まさに河道逆行争奪の現場がここに残っていると考えることができます。

次に、長作川の滝ノ清水谷津(仮称)の断面を示します。

滝の清水谷津(仮称)C-Dの縦断面図

C-D断面をみると下総上位面を沖積面の谷が直接削っていることが判ります。
このような断面が東京湾水系の深い谷の谷頭部では一般的です。

前谷津A-B断面と滝の清水谷津(仮称)C-D断面の対比から、前谷津の形成は古く、滝ノ清水谷津(仮称)の形成は新しいことが推測できます。

次に3D画像を前谷津について2枚、滝ノ清水谷津(仮称)について1枚示します。

前谷津の3D画像 1

花見川団地が建設され、人工改変されていますが、A-1区間に浅い谷地形が残っていることがわかります。

前谷津の3D画像 2

前谷津の中を覗き込むと、2つの遷急点の存在が明瞭にわかります。

滝の清水谷津(仮称)の3D画像

東京湾水系の一般的な谷頭部を示しています。

なお、前谷津が突き進んでいるところは、実は芦太川の支谷津(浅い谷)の先端部であることがこの図から判ります。
旧版1万分の1地形図の等高線分布からもそのことは確認できます。
前谷津も河道逆行争奪の端緒についていると考えることができるかもしれません。今後検討を深めるつもりです。

つづく

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