大膳野南貝塚後期集落の出土物による竪穴住居検討 8
竪穴住居から出土した石器種類の割合を漆喰貝層有無別に観察します。
1 漆喰貝層有無竪穴住居別石器出土状況
漆喰貝層有無竪穴住居別 石器種類別出土割合(%)
比較を用意にするため、実数ではなく%で観察してみました。
狩猟系の石器(石鏃など)、植物採集や調理系の石器(石斧、敲石、磨石…)ともに漆喰貝層有無別に思っていたような大きな違いがありません。
自分の事前の想定(漆喰貝層有竪穴住居より無竪穴住居のほうが植物採集や調理系の石器の割合がはるかに大きい)がはずれたようです。
そこで石器種類を大ざっぱなものになりますが次の5グループに分別して出土割合(実数)を見てみました。
●石器種類の大ざっぱなグループ分け(利用系統)
・狩猟系…尖頭器、石鏃、石錐、石匙、クサビ、スクレイパー
・植物食系…磨製石斧、打製石斧、礫器、敲石、磨石、凹石、スタンプ、石皿、砥石
・漁労系…石錘、軽石製品
・祭祀・装身系…石棒、装身具
・素材系…剥片類、石核、黒曜石
漆喰貝層有無竪穴住居別利用系統別石器出土数
漆喰貝層有竪穴住居も無竪穴住居も狩猟系と植物食系のグラフパターンが同じで自分の事前の想定が外れたことが確定しました。
自分の事前の想定(漆喰貝層無竪穴住居グループが植物採集の点で漆喰貝層有竪穴住居グループをサポートするという集落内分業があり、それが石器組成に表現される)は覆りました。
2 考察
漆喰貝層有竪穴住居グループ(漁民)は石器組成から漆喰無竪穴住居グループ(非漁民)と同じように植物採集をしてその調理を行っていたことが判ります。
集落内分業は石器組成から否定されました。
漆喰貝層有無竪穴住居分布
漆喰貝層無竪穴住居の分布をみると有竪穴住居グループの円環の内側に円環をつくり、また外側に円環を描いて分布します。
この分布形状から漆喰貝層無竪穴住居グループが一つの集落内サブコミュニティであった可能性を感じます。
つまり、漆喰貝層有竪穴住居グループは東京湾に漁業権を有する裕福な家族グループであり、集落内独立メインサブコミュニティを構成していて、一方漆喰貝層無竪穴住居グループは漁業権を有せず貧しい家族グループであり、集落内サブコミュニティを構成していたと考えられます。
2つのサブコミュニティの間には生業面での分業はなかったようです。
豊かな漁民と貧しい非漁民が一つの集落に暮らしていたことになります。
恐らく豊かな漁民は狩猟権(狩場の入会権)も有していたと考えます。
貧しい非漁民は漁業権も狩猟権もなく、それらの権利を必要としない住居直近の身近な小川や林野で細々と小魚や小動物を採っていたと想像します。
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