2018年1月6日土曜日

遺物出土総量と漆喰貝層有無別竪穴住居との関係

大膳野南貝塚後期集落の出土物による竪穴住居検討 1

遺物出土総量の指標を出土物を収めた中テン箱数として、漆喰貝層有無別に竪穴住居との関係をみてみました。
注…ここで貝層とは竪穴住居覆土層に含まれる貝層を指しています。つまりその竪穴住居に由来する貝層のことです。

1 立体グラフによる関係把握

中テン箱数立体グラフによる漆喰貝層出土有無別竪穴住居との関係把握 1

中テン箱数立体グラフによる漆喰貝層出土有無別竪穴住居との関係把握 2

漆喰貝層出土竪穴住居は中テン箱数が多く、非出土竪穴住居は少ないことが一目瞭然です。

2 統計による関係把握
中テン箱で数える程の遺物が出土した竪穴住居の割合は漆喰貝層有が76.3%に対して漆喰貝層無が16.4%です。

中テン箱で数える程の遺物が出土した竪穴住居の割合(%)

平均中テン箱数をもとめると漆喰貝層有1.9に対して漆喰貝層無が0.2で10倍の開きがあります。

竪穴住居平均遺物出土量(平均中テン箱数)

中テン箱数を上位から並べて比較すると次のようになります。

中テン箱数を上位から並べて比較グラフ
このグラフから漆喰貝層非出土竪穴住居にも中テン箱数の多いものあることが判ります。

3 考察
中テン箱数のデータだけから漆喰貝層出土・非出土竪穴住居の違いを特定することはできませんが、このデータから受ける印象をメモしておきます。
今後順次、獣骨量、石器種類別量などのデータと漆喰貝層有無との関係を分析し、データが溜まったところで総合的な検討をすることにします。

●中テン箱数データから受ける印象
・竪穴住居の遺物出土総量(中テン箱数)はその竪穴住居が廃絶した後、集落の人々がその竪穴住居空間で行った祭祀の規模や回数の多さを表現していると考えます。
有力リーダーが死亡した時その竪穴住居を燃やして祭祀を行ったり、竪穴住居住人が死亡した時その場所を殯小屋や埋葬の場にして祭祀を行ったり、あるいは廃絶した家族を追悼する祭祀を行ったりしたのだと考えます。
・漆喰貝層出土竪穴住居は漁業に従事した住人の住居であり、そこでは廃絶祭祀がほとんど行われたと考えます。
・漆喰貝層非出土竪穴住居は漁業以外の生業に従事した住人の住居であり、そこでは廃絶祭祀が行われないか、行われても極めてお粗末であったと考えます。
・現時点の作業上の見立ては漁業従事家族と非漁業従事家族は別集団であり、非漁業従事集団は廃絶祭祀を満足に行えない境遇に置かれていたと考えます。
・この見立ては縄文時代に「身分階層はない」という考えに反しますが、集落内で分業する2つの集団に優劣があり、一方はかなり低い身分であったと考えます。
・漆喰貝層非出土竪穴住居の存在は漆喰や貝殻を「扱わなかった人々」というよりも、「扱わさせてもらえなかった人々」と感じてしまい、漁業従事者集団とそれ以外集団との間に支配-隷属に近い関係があったように推察しています。
・漆喰貝層出土竪穴住居が他の竪穴住居に切られる時、切った竪穴住居はほとんどが漆喰貝層出土竪穴住居です。一方漆喰貝層非出土竪穴住居はほとんどが漆喰貝層非出土竪穴住居によって切られます。2者の間に切った切られた関係は殆どありません。これは2者の間の関係が世代を超えて固定していた可能性を暗示します。世襲的な身分階層が存在していたととりあえず見立てておきます。



 

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