2018年4月27日金曜日

縄文大型貯蔵土坑の技術発展と背景 その1 大型貯蔵土坑の観察

大膳野南貝塚後期集落 土坑の再検討 31

1 貯蔵土坑の深さ-平面積グラフ
2018.04.25記事「貯蔵土坑規模限界要因の想定」で貯蔵土坑の深さ-平均直径グラフを作成して土坑規模の限界要因の検討を行いましたが、土坑容量(土坑体積)も同時に認識するために類似のグラフ深さ-平面積グラフを作成し、その中に概算容積(体積)もイメージできるようにしてみました。
ここで概算容積は土坑深さ×平面積で得られる数値でありあくまでも容積のイメージであり、断面図から計測した正確な数値ではありません。

貯蔵土坑(推定)の深さと平面積
63基の土坑の内訳は5㎥以上1基、4㎥以上5㎥未満1基、3㎥以上4㎥未満0基、2㎥以上3㎥未満4基、1㎥以上2㎥未満16基、1㎥未満41基となります。
このグラフで表現される貯蔵土坑のうち大型土坑と呼べる概算容積1㎥以上土坑の実際の平面断面図を観察してみました。

概算容量2㎥以上の土坑
概算容量2㎥以上土坑6基は全てタンブラー状の形状をしています。これらの土坑が大膳野南貝塚後期集落が建設した最大規模のものであり、集落が土坑に期待した機能が集約的に表現されていると考えられます。土坑建設に集落が一丸となって多大の労力を投入し、その維持管理も大変なことであったと考えます。

概算容量1㎥以上2㎥未満(タンブラー状)の土坑
概算容量1㎥以上2㎥未満の土坑は全部で16基あり、そのうちタンブラー状のもの5基、鍋状のもの11基となっています。上図はタンブラー状5基を表示しています。

概算容量1㎥以上2㎥未満(鍋状)の土坑
鍋状のもの11基を表示しています。

土坑容量が同じであるにも関わらずタンブラー状のものと鍋状のものがあることの意味の解釈が貯蔵土坑の技術発展とその背景を考える上で重要であると考えます。
土坑215号(タンブラー状)と土坑89号(鍋状)の概算容量はほとんど同じですが、その形状の違いには著しいものがあります。
なぜか?
次の記事で貯蔵土坑の技術発展とその背景について考察します。

なお、215号土坑(タンブラー状)スケッチは214号土坑(鍋状)と一緒に描かれています。2つの土坑が隣接していて無関係のものとは到底考えられないからです。
215号土坑(タンブラー状)が新しく、214号土坑(鍋状)が古いことが、切った切られた関係から判っています。このスケッチは技術発展の様子を象徴していると考えます。

215号、214号土坑スケッチ

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